◆過払い金返還請求の話◆
確かに、最高裁1958年6月6日第二小法廷判決は、消費貸借の利息は貸付初日から発生すると明言しています。そうすると、貸金業者から、利息制限法引き直し計算で貸付初日を算入しろと言われたら、応じなければならないような気がしてしまいます。そういうことを裁判上言ってきたのは、私の経験上は、ワールドファイナンスくらいですが。
貸金業法第14条(第17条第1項第4号等も)は、貸金業者に対して「貸付の利率」を明示することを義務づけていますが、貸金業法施行規則第11条は、その明示する利率の計算方法を同施行規則別表で規定していて、その別表では「金銭を交付した日から第一回の弁済日の前日までの期間」「直前の弁済日から第i回の弁済日の前日までの期間」で計算するよう定めています。つまり、初日は算入するが、弁済日当日は算入しない扱いです。これによって「貸付の利率」を計算して表示する以上、もし貸付初日と弁済日をともに算入して利息計算したら、表示した貸付の利率と実態が違うことになり、貸金業法違反となってしまいます。
その結果、すべての貸金業者は、貸付初日算入・弁済日当日不算入か、貸付初日不算入・弁済日当日算入のいずれかの処理をしています。
そして、この「貸付の利率」は貸金業法第17条第1項第4号等で契約書の記載事項と定められていますから、貸付初日算入・弁済日当日不算入か、貸付初日不算入・弁済日当日算入は契約の内容となっています。またほとんどの貸金業者は、利息計算の方法の記載で、そのことを明示しています。
ですから、最高裁の判決が一般論として貸付初日からの利息発生を判示していても、現在の貸金業の実務では、貸付初日不算入で計算してよいことになるのです。
貸付初日を算入して弁済日当日は算入しないのと、貸付初日を算入しないで弁済日当日を算入するのは、通常は、同じことです。
計算結果が変わってくる場面は、閏年と平年の境界をまたぐときだけです。平年から閏年に移るときは、初日算入(弁済日当日不算入)の方が利息が多くなり、閏年から平年に移るときは初日不算入(弁済日当日算入)の方が利息が多くなります。しかし、私は自分で12月31日での端数切り捨てをしないで計算できる初日算入弁済日当日不算入型と初日不算入弁済日当日算入型の計算シートを作って比べてみましたが、これによって変わってくる利息の額はせいぜい1円か2円までです。そして、平年から閏年に移行するときにできた差は多くの場合閏年から平年に移行するときに解消してしまい、結果としての違いは十数年分の取引履歴を入れてみてもせいぜい数円止まりでした。どちらが有利かというのも、ケースバイケースという感じです。
私は、通常は、式が簡単な、初日不算入(弁済日当日算入)の閏年前年と閏年の12月31日で切り捨て処理する計算シートを使用していますが、12月31日で端数処理しないで初日算入・不算入を厳密に扱える計算シートを作ってみて、改めて、そんなこと気にする価値ないなぁと実感しました。
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