消費者金融や信販会社と長年貸し借りを続けていた場合、過払いとなっている可能性がある
借り始めの金利が年18%を超えていれば、現在の金利が年18%以下でも過払いの可能性がある
貸金業者との争点は概ね一旦完済して間が空いて再度借入したときに一連計算できるか、貸金業者が「悪意の受益者か」(過払い金に利息が付くか)、取引履歴が一部開示されないときどうするかの3点
過払い金請求への対応や取引履歴の開示は貸金業者によって異なる
消費者金融から借金をして数年以上繰り返して借入や返済を続けている場合、利息制限法に引き直すと過払いとなっている(本来借金はなくなっていて払い過ぎていて、取り返せる)可能性があります。2000年ころ以前から借入や返済が続いていれば、たいていの場合は過払いとなっていて、過払いの額も数十万円になっていることが多いですし、1990年とかそれ以前から借入や返済が続いていたら、百万円以上の過払いになっていることが多いです。
他方、借金をし始めた最初の段階から借入金利(業界では「約定金利(やくじょうきんり)」とか「約定利息(やくじょうりそく)」といいます)が、利息制限法の制限利率(正確には「弁護士に依頼すると借金が減るわけ」の利息制限法の解説を見てください)以下の場合は、どれだけ長い間借りたり返したりを繰り返しても借金は減らず、過払いにはなり得ません。
借りたり返したりのパターンによって過払いかどうか、その程度は、必ずしも年数と一致しません。年数の割りに過払いになりにくいパターンは、少額の借入が長く続き、最近になって枠が大幅に増えて借入が大幅に増えたという場合。逆に過払いになりやすいパターンは、早い時期から枠が大きくなり、返しては枠一杯近くまで借りというのを長期間続けてきた場合。そのあたりで、結構違ってきます(この点について詳しくは「過払いの判断」を見てください)。
また、いったん完済して間があいてまた借りたという場合、借りていない期間が長いと、期間の割りに過払いになりにくい上に、全体をまとめて計算できるかという問題が起こり、期間の割りに過払いになりにくくなります。
この問題について詳しくは
「もっと詳しい過払い金請求の話」
「取引の分断・一連性:基本契約が1つのとき」
「取引の分断・一連性:基本契約が複数のとき」
を見てください。
さらに言えば、完済してその後借入がない期間が長いために別計算となる(過払い業界では、取引が分断されると言います)場合、完済した時期が過払い金請求のときから10年以上前だと、完済までの過払い金が時効消滅してしまい、過払い金が大幅に減少したり、悪くすると全体として過払いではなく借金が残っていることになったりします。
こういう問題がありますので、具体的な判断は簡単ではありませんが、長期間返済を続けていたら、過払いじゃないかと疑ってみた方がいいですね。
1回払いキャッシングサービス
近年は、限度枠の範囲で借り入れた金額を翌月か翌々月の引き落とし日に全額一括払いで返済する1回払いキャッシングサービス(信販会社では「マンスリークリア方式」などと呼んでいます)について、そもそも過払い金を一連計算できないという主張が、信販会社から、頑強になされます。この主張が通ると、過払い金額は多くの場合激減します。
この問題について、詳しくは「取引の分断・一連性:1回払いキャッシングサービス」を見てください。
貸金業法などの改正で2010年6月から貸金業者が年20%を超える金利で貸付をすると刑事罰を受けることになり、そのことや貸金業者間の競争が厳しくなったことから、2007年頃からプロミスとアコムが、その後それ以外の消費者金融も2010年までには利息制限法の金利(10万円以上100万円未満で言えば年18%)以内で貸し付けるようになりました。
最初の方でも言いましたが一番最初の借入から利息制限法以内ならば、過払いにはなりません。しかし、最初は利息制限法の金利を超える金利で借りて返済を続け最近になって金利が下がって今は利息制限法の金利以下という場合は、過払いになっている場合があります。
約定金利が利息制限法の金利以下になっていても、借りたり返したりが長くなっていくと借金がそれでも減っていき、過払いになっていくのはどうしてか、説明しましょう。返済をしたときに、消費者金融は、約定残高(約定残元本)×約定利率×経過日数(÷1年の日数)で計算した利息を取っています。しかし、利息制限法上、利息として受け取ることが許されるのは、引き直し残高(引き直し残元本)×利息制限法の利率×経過日数(÷1年の日数)で計算した利息です。借り始めの約定利率が利息制限法の利率を超えていると、その後に約定利率が低くなって利息制限法の利率以下になった場合でも、それまでの間に元本が減少します(利息制限法引き直し残高が、約定残高より少なくなっています)。そうすると、約定利率が利息制限法の利率以下でも、掛け算の元になる元本額が少なくなっている以上、毎回の返済のときに受け取っていい利息額は、現実に取ってきた利息額より少なくなります。この差額が、それぞれの返済時点で残っていた元本(引き直し元本)に充てられ(元本を返したという扱いになり)、さらに利息制限法引き直し残元本が少なくなっていくということになるのです。
約定金利が利息制限法の利率より低い場合、利息制限法引き直し計算では、その部分では約定金利で計算します(利息制限法は、利息制限法で定める利率より高い部分を無効とするだけですから、それより低い利率は有効です)。ですから、借り始めが利息制限法の利率より高い金利の場合、返済の都度確実に、約定利息による計算より元本が減ることになります。
利息制限法引き直し計算では、そういう理屈で、借金を減らしていくので、借り始めが利息制限法より高い金利であれば、その後利息制限法の利率より安い金利になっても、借りたり返したりの期間が長ければ、過払いとなり得るのです。もちろん、借入のすぐ後に約定金利が利息制限法の金利以下になった場合(借入後、金利が利息制限法の利率以下になるまでの期間が短い場合)には、そう簡単には過払いにはなりませんが。
そういうことを知らないで長いこと返済を続けてきていよいよ返せなくなって、破産しかないと思いつめて弁護士に相談に来られて、よくよく聞いてみたら昭和の頃から返済を続けていたりして、消費者金融数社から数百万円取り戻したなんて例も、私も何度も経験しています。
最近、弁護士や司法書士が、早く過払い金返還請求をしないと時効になるという広告を出す例が、よく見られます。
中には、最高裁の2006年1月13日の判決から10年で消滅時効などという、全くのでたらめを書いているものもあって、ため息が出ます。
過払い金返還請求権の消滅時効は、貸し借りの終了から10年です(最終取引が2020年4月1日以降の場合、下の※に注意してください)。借り始めからずっと借りたり返したりが続いている場合は、その続いている間は、時効は進行しません。
ただし、先にも説明しましたように、いったん完済して借入がない期間が続くと取引が分断され(東京地裁では、1年を基準にする裁判官が多いですが、それより短い期間で分断する裁判官もいます)、完済前の過払い金はその完済時点から10年で時効消滅するとされてしまうことになります。弁護士として相談を受けたり、事件依頼を受けるときに、お話を聞いても、いったん完済したかどうか、完済した後借入のない期間がどれくらい続いたか、そしてその完済した時期はいつか、記憶がはっきりしないというケースがとても多いので、そこは、取引履歴を取ってみないとわからないということになります。
ものすごく昔には、貸金業者が弁護士からの請求でないと取引履歴を出さないという時代もありましたが、現在は、貸金業法でも、個人情報保護法でも、借り主が請求すれば貸金業者は無条件に自分が保管している取引履歴を出さなければなりません。取引履歴を請求したからといって、貸金業者の方で借り主に、例えば一括返済請求をするとかそういう不利益なことはできません。取引履歴を何のために欲しいのかを言う必要もありません。時効が気になる人は、まずは貸金業者に取引履歴を請求して見るといいと思います。もちろん、弁護士に依頼すれば、弁護士の方で取引履歴を取りますので、内容を検討するまでもなく弁護士に過払い金請求をしたい場合は、自分で取らなくても大丈夫ですが。
※2020年4月1日施行の民法改正(改正自体は2017年)で、債権の消滅時効は、@債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年、A権利を行使することができるときから10年のどちらかが経過したときに成立することになりました。この改正法は、債権が2020年3月31日までに生じたものには適用されませんので、最終取引(最後の借入か最後の返済の遅い方)が2020年3月31日以前の場合は、過払い金請求の時効は10年のままです。最終取引が2020年4月1日以降の場合、借主が過払い金返還請求が可能であり(過払い金を生じた基本契約のままで貸し借りが継続している期間中は可能ではなかったと扱われます)借主がそのことを知っていれば、過払い金請求の時効は、最終取引から5年となりますので注意が必要です。このあたりは、貸金業者側の弁護士と借主側の弁護士の間で、しばらくは訴訟技術上の闘いがなされると思われ、細かいところでは扱いが微妙な点が出てくるとは思いますが。
弁護士が、債務整理か過払い金返還請求を依頼されると、まず貸金業者に取引履歴の開示を求めます。弁護士からの取引履歴開示請求に対して貸金業者がこれに応じる義務があるかどうかについては、かつては裁判所の判断が分かれていましたが、2005年7月19日、最高裁が貸金業者は取引履歴を開示する義務があるという判決を出し、法的には決着がつきました(それでもエイワや破産前の三和ファイナンス(現SFコーポレーション)のように10年たつと取引履歴は自動的に廃棄していて存在しないなどと言い張る業者、一定の時期までは自動的に廃棄していたのでそれ以前の取引履歴は存在しないと言い張る貸金業者が少なくないですが)。
貸金業者から素直に最初の取引から全部取引履歴が出てくれば、利息制限法計算シート(表計算ソフト)に入力して過払い金を計算します。
素直に取引履歴を開示する業者の場合は、その段階で計算した過払い金を示して請求します。依頼者の意向と貸金業者の態度によっては、交渉だけであっさり合意できて返ってくることもあります。かつては、特に2006年とか2007年頃は、ほとんどの貸金業者が交渉だけでほぼ満額の支払に応じていました。その後、最高裁判決の転換や経営の悪化などにより、消費者金融のほとんどは交渉では満額の支払に応じなくなりましたが、一部の信販会社などは、今でも交渉で満額の支払に応じることがあります。
取引履歴を素直に開示してきた場合でも、依頼者の希望や貸金業者の態度によって、合意ができない場合も、あります。特に最近は過払い金返還請求が増えて貸金業者も経営が厳しくなっていることもあり、担当者があれこれ難癖をつけて値切ってきたり、中小の消費者金融では分割払いでないと払えないなどと言い出すことも出てきて、簡単には合意できないことが多くなっています。
私自身は、2009年頃からはごく一部の交渉で満額払ってくる貸金業者以外は、交渉するだけ時間の無駄と判断して、交渉などしないで過払い金返還請求の訴訟を起こしています。訴訟提起すれば、たいていは過払い利息も含めてほぼ満額取れるのに、交渉で減額に応じる気が知れません。
取引履歴が全部開示されている場合は、開示された取引履歴でそのまま過払い金を計算して訴状を作ります。
この場合は、取引経過に争いはありませんから、昨今では、取引の一連性(途中で完済しているか、完済後借入のない期間がどれくらいあるかにより、取引が分断されるか)問題、貸金業者が「悪意の受益者」か(そうなるかどうかで過払い金に年5%の利息を付ける必要があるかが変わってくる)についての貸金業者毎にパターン化された争点があるほかは、貸金業者によって特有の主張がなされるくらいです。しかし、貸金業者側の主張も、貸金業者側の必死の対応で、業者によってかなり複雑化しています。これらの争点は、多くの場合事実関係の争うではなく、かなり技術的な法律論です。過払い金返還請求訴訟が得意な弁護士には、手慣れたやりとりですが、弁護士でさえきちんと隅々まで理解している人は少ないと思われ、ましてや一般人(依頼者)にわかるように説明するのは、実はかなり難しい状態です。
取引履歴を素直に開示してこない業者については、貸金業者が開示してきた最初の取引時点の残高をゼロにして計算するか、依頼者からの聞き取りで最初に借りた時期、最初に借りた額、貸付枠拡大の時期、返済パターン(毎月何日頃にいくらずつ返済していたか)、追加借入パターンを聞き取って取引経過を推定計算して訴状を作ります。この時の推定の仕方は、弁護士によって、それぞれのノウハウがあり、人によって変わってきます。取引履歴がきちんと開示されていない貸金業者との裁判は、貸金業者毎にパターンがありますが、近年は、裁判所が推計による認定や冒頭ゼロ計算に消極的な傾向もあり、簡単ではありません。いろいろと工夫が必要になります。
なお、過払い金返還請求訴訟をしたい方は、このHPも含め、インターネットで得られる情報の限界があることについて「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」を見てください。
もっと詳しく知りたい方のために「もっと詳しい過払い金請求の話」を書き始めました。
なお、私自身が過払い金返還請求の依頼を受けた場合の裁判・交渉と和解についての考え方については、「過払い金返還請求と和解」を見てください。
過払い金返還請求をしたときの消費者金融・信販会社側の態度、取引履歴の出し方、訴訟になった場合の対応はいろいろです。そのあたりについて消費者金融・信販会社別に私の経験を紹介します。日頃、明るくフレンドリーなコマーシャルを流している消費者金融・信販会社が過払い金返還請求をしたらどういう態度をとるか、という関心で見てもらってもいいですよ。
消費者金融
アイフルの場合
アコムの場合
プロミスの場合
レイクの場合
武富士の場合
→長らく更新していませんので現状にマッチしていないところがあります
CFJ(ディックファイナンス・アイク・ユニマットレディス)の場合
→長らく更新していませんので現状にマッチしていないところがあります
アエル(日立信販)の場合
→長らく更新していませんので現状にマッチしていないところがあります
SFコーポレーション(三和ファイナンス)の場合
→長らく更新していませんので現状にマッチしていないところがあります
クレディアの場合
→長らく更新していませんので現状にマッチしていないところがあります
信販会社
オリコ(オリエントコーポレーション)の場合
三菱UFJニコス(旧日本信販)の場合
クレディセゾンの場合
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