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  アイフルの場合

ここがポイント
 裁判では、事件の内容に関係なくひとつ覚えの分厚い書面を出してきますが、ただの時間稼ぎ
 私の認識では、現在は、ふつうに過払い金を全額回収できる消費者金融
    はてなブックマークに追加  アイフルの場合(過払い金請求の話) 庶民の弁護士 伊東良徳
 「ネットで調べてみるとアイフルは特に手強いようなのでアイフルへの過払い金請求は先生に依頼することにしました」と、相談者から言われることがあります。ちょっとビックリしています。
 アイフルって、後で説明するように、裁判での主張は事案に関係なくワンパターンの上、(取引の空白期間が長いケースで、分断の主張がされた場合にそれが通るのを除けば)裁判所で通りそうもないことばかりですし、お金がない潰れるぞって脅しも、それでびびった人たちが多くて過払い金請求が少なくなったためのようですけど、最近はもう現実味がなくて、手強いなんて感じる要素は全然ありません。過払い金請求をきちんとやっている弁護士の目には、ただ減額してくれという電話がしつこくてうっとうしいという点以外は、楽勝だと思うのですが。

 アイフルは、現在は債務整理の交渉等は滋賀県のアシストセンターで集中して行っていますが、従来は支店対応でしたし、和解後の分割払いの管理は支店で行っていて、その支店の担当者にはずいぶんと態度の悪いのが時々いて、弁護士相手でもこういう態度なのだから一般人相手にはかなり強硬な取立をするのだろうなと感じることがままありました。アシストセンターの担当者は丁寧なんですけどね。業務停止処分の後は、私の個人的経験では強硬な電話が来ることはなくなりましたけど。
 アイフルは、近年は、過払い金返還請求訴訟に対しては、専ら引き延ばしに徹し、定型化された答弁書、準備書面、控訴理由書を出し続け、時間稼ぎを図っています。そして、その間に、繰り返し和解したいといって、アイフルには金がない、武富士のように潰れる危険があるといい続けて低額の和解案(4割とかその前後)を出し、そんな水準で和解するはずないでしょといってもとにかく本人に聞いてくれといってきます。
 最近の決算発表とかは悪くないように見えますし、過払い金返還請求の見積もりといえる利息返還損失引当金も減少の一途をたどっています。アイフルの担当者から執拗にかかってくるアイフルは危ない、早く和解した方がいい、4割以上払えないなどの電話に屈して和解した人が多くなってきて、アイフルに余裕ができたってことなんじゃないでしょうか。
 最近は、アイフルからの和解案も4割とかの超低水準のものはなく、ふつうの消費者金融レベルに近づいているやに聞きます。私は最近はアイフルとほとんど和解をしていない(さっさと判決をもらっている)ので、詳しくは知りませんが。
 そうはいっても、潰れるときは突然潰れますからわかりませんが、「潰れるかも」に脅えて不本意な和解をするのは疑問に思います。

<業務停止処分>
 アイフルは、借り主名義の委任状を勝手に作成して個人情報を取得したり、返済義務のない家族に取立をしたりしたことを理由に全店舗で2006年5月8日から10日まで、違反行為のあった店舗ではさらに長い期間、業務停止処分を受けました。

  アイフルの取引履歴開示

 アイフルに取引履歴開示請求をすると、アシストセンターから写真のような書式で開示されます。「計算書」というタイトルですが、利息制限法引き直し計算書ではなく、約定利率での取引履歴です。アイフルの取引履歴は、アコムやアエルとは違って、貸付と入金が別の列になっていますし、一番最後に貸付額や入金額の合計額も書かれていて入力の検算もしやすく、事務員さんに優しい取引履歴といえるでしょう。その点はありがたいと思います。
アイフルの取引履歴
 以前アイフルに対して裁判を起こしたときにアイフル側の代理人から主張されたところによれば、アイフルでもコンピュータ化の時期が支店によって異なるとかいうことでした。この写真のケースでは1988年4月からの開示になっています。おおかたそのあたりの時期からはコンピュータのデータで取引履歴が開示されています。
 1988年より前から取引のあるケースをそれほどやったわけではありませんが、以前は、私の経験では、こういうふうに取引の途中からの開示の場合は、冒頭の残高0で計算した過払い金(もちろん法定利息年5%付き)であっさり和解できていました。
 しかし、過払い金請求が増えたこともあって、今では、判決を取らないでそういう鷹揚な和解をするのはまず無理です。

  裁判対応

 以前は、交渉での和解でも鷹揚な態度を見せていたアイフルが、次第に交渉で頑なになってきていたのですが、それでも2008年までは、私の経験上は、裁判を起こすとあっさり(慰謝料や弁護士費用はともかく)過払い金についてはこちらの主張通りに払う和解をしていました。
2009年〜2010年の対応
 ところが、2008年12月に提訴した事件で、2009年1月15日付の答弁書が送られてきてビックリ。複数原告で起こした事件について原告1人ごとに1通ずつに分けて答弁書を出してきましたが、全部本文が21枚とか22枚。21枚目の2行目までは全部同文で、最後のまとめだけ原告ごとに少し長さが違います。21枚目の2行目までは原告ごとの個別事情は一切出てきませんから、おそらくすべての訴訟で全く同文のこの答弁書を出すことにしたのでしょう。
 その後、若干の修正があり、2009年8月12日付で出てきた答弁書では、3ページから19ページ半ばまでが全部同文。その後、完済後再借入まで間があいている原告には過払い金がその後の再借入に充当されないというおなじみの主張(これについては、「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」で説明しています)、過払いとなってから10年以上経っている原告には最高裁で明確に否定されたにもかかわらずまだ過払い金の消滅時効は個別に進行し取引継続中でも10年経ったら時効消滅すると主張していました(アンビリーバボー:し〜んじられな〜い!)。
 その後さらに修正があり、2009年12月7日付で出てきた答弁書は、少しスリムになって3ページから10ページ半ばまでが全部同文でした。
 共通部分(最近のバージョンの定型答弁書3ページから10ページ)の中身は、アイフルは「悪意の受益者」ではない(だから過払い金に法定利息を付ける必要はない)、アイフルは法人税を支払ったため過払い金のうち45%相当分は現存しないので返還義務がない、悪意の受益者が支払うべき過払い金に対する法定利息は過払い金発生時からは発生しないの3点です。
 「悪意」については、最近のバージョンでは、それまでのバージョンとかなり変更され、最高裁第2小法廷2009年7月10日判決の理屈(これについては、詳しくは「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」の「悪意の時期・悪意を推定されない特段の事情」の項目で説明しています)が取り入れられています。この点は少し学習したようですね(でも、同じ内容の最高裁第3小法廷2009年7月14日判決は全く引用されていないのはなぜ?)。この最高裁判決で、2006年1月13日以前の貸金業者の悪意の判断では、みなし任意弁済(これについては、詳しくは「みなし任意弁済をめぐる闘い」を読んでください)の成立要件のうち、任意性が期限の利益喪失約款があるために満たされない(この点については最高裁2006年1月13日判決で明らかにされました。「みなし任意弁済の適用の余地はほぼなくなりました」を読んでください)以外の要件がすべて満たされていれば悪意の推定が働かず、満たしていない要件がある場合は、「下級審の裁判例及び学説の大多数」がその貸金業者の実務がその要件を満たしていないとは言えないという立場であったときには悪意の推定が働かないという考えが示されています(ちょっと、素人にはややこしすぎますね)。アイフルは、このみなし任意弁済の成立要件のうちキーポイントになる17条書面(契約書等)、18条書面(受取証書)について、1988年11月1日からのある時期にアイフルが使用していた書式を例に挙げて、貸金業法17条、18条の記載事項が書かれていたから、それぞれの借主に交付した書面の写しを提出しなくても、任意性以外の要件を満たしていることが立証できるという主張をしています。しかし、みなし任意弁済の適用要件については、すべて貸金業者に立証責任があるというのが貸金業法制定時からの確立された実務で、みなし任意弁済が認められるためには貸金業者がそれぞれの借主に交付した17条書面、18条書面の控えを裁判所に提出することが前提です。現にこれまでみなし任意弁済について執拗に主張してきた貸金業者(エイワやシティズ)はその控えを保管して現実に裁判所に証拠提出していたからこそ、一定の範囲でみなし任意弁済の成立を認められてきたのです。貸金業法がみなし任意弁済の適用要件としているのは、17条書面、18条書面の「書式の作成」ではなく規定を満たした「書面の交付」なのです。アイフルの主張は、みなし任意弁済と17条書面、18条書面についての確立された実務を無視したものです。
 法人税云々の話は、貸金業者の中でもアイフルだけが言っているもので、裁判所にまともに扱われることは考えられませんし、相手をする気にもなれません。まぁ簡単に言っておくと、そもそも返還するのが「現存利益」でいいのは善意の不当利得者であってアイフルは悪意の受益者ですから、利益が現存しなかったとしても関係ありません。それにグレイゾーン金利の支払を受けた時点でその収入で払った法人税は、遅くとも過払い金の返還時点での損金処理(引当金積立時点で損金処理が認められるならばその損金処理)によって戻ってくる勘定になっている(その年度の課税額が減少することで調整されるという意味で必ずしも現実に還付されるということではないですが)わけで、税法上すでに手当てされているわけですからアイフルのいう「経済的合理性の観点」から言えば過払い債権者に負担させることは間違いです。
 過払い法定利息の発生時期については、基本契約に基づく継続的金銭消費貸借取引では消滅時効は取引終了時まで進行しないとした一連の最高裁判決をきっかけに、多くの消費者金融が、過払い法定利息も取引終了まで発生しないというこじつけの主張をしてきました。アイフルの主張も基本的に全く同じです。この主張は、最初から無理な主張でしたが、最高裁第2小法廷2009年9月4日判決で、明確に否定されました(これについては、「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」で説明しています)。それから3か月が経っても、最高裁判決を無視して、無理な主張をし続けるセンスというか無知ぶりには驚きます。
 過払い金の消滅時効の個別進行説については、「CFJの場合」でも指摘したように、2009年1月22日、最高裁第1小法廷が、大方の予想通りに、一定限度額内で繰り返し貸し借りを継続する基本契約に基づく取引の継続中は過払い金返還請求権の消滅時効は進行しない、過払い金返還請求権の消滅時効は特段の事情がない限り取引が終了した時点から進行すると判断して決着を付けました。その後2009年3月3日に最高裁第3小法廷も同じ内容の判決を出し(田原睦夫裁判官だけが反対意見を書いていますが)、3月6日には最高裁第2小法廷も同じ内容の判決を出してすべての小法廷で一致した確立された最高裁判例となりました。その後でもなお、アイフルには田原睦夫裁判官の少数意見が正しいと主張しているのです。しかも、消滅時効の進行では最高裁第1小法廷の2009年1月22日判決は誤りだと主張しながら、過払い利息の発生時期では最高裁第1小法廷2009年1月22日判決を根拠に主張しています(定型答弁書10ページ:最近のバージョンでもなぜかやはり10ページ)。書いてる人は矛盾を感じない/恥ずかしくないんでしょうか。
2011年〜2012年の対応
 2011年になってから、アイフルはそれまで定型答弁書で書いてきたことを、答弁書では長々と書かずに、第1準備書面で書くようになりました。これまで以上に引き延ばしに力点を置いています。アイフルの本社が京都なので、東京地裁に提訴した場合に、東京23区内に住所がない原告や請求額が140万円未満の原告については分離して原告住所地の裁判所や簡易裁判所に移送しろという申立をしてきます(本社が東京の消費者金融だと、原告の住所に関係なく東京に土地管轄があるのでこういう主張はできません)。これをやられると期日が1回空転する上に、裁判所も実際に移送してしまったりするので、無意味に時間がかかります。そういうこともあって、私は最近は遠くの依頼者の方から依頼を受けるときは、アイフルについては依頼者の地元の裁判所に提訴することになり、内容的なことはすべて私がやりますが裁判所への出廷だけはお願いすることになります、裁判官から何か聞かれたらすべて次回までに弁護士と相談して対応するといえばいいですからという約束で受けて、依頼者の地元の裁判所に提訴しています。その方が東京地裁や東京簡裁より早く判決をくれたりしますし(私の方でアイフルのいつも出してくる主張に対して先回りして反論し、アイフルに何回期日を与えても無駄だから速やかに判決が欲しいという書面を出しておいたら、地方の地裁や簡裁は1回・2回で結審して判決をくれたりします)。
 東京だと、アイフル側から「支配人」として出廷する人物(とても支配人の権限があるとは思えない人)がねばるのと裁判官がなかなか判決を書きたがらない傾向があるのとで何度か口頭弁論を繰り返すことになります。でも、2011年9月提訴の事案で2012年4月までかけて延々やった事案でも、2006年1月13日以降に初めて過払いになったケースなのに2006年1月13日判決以前の17条書面の要件適合性とかそれで悪意の受益者じゃない特段の事情があるとか、まったく内容を理解していないとしか思えないどこかから引き写してきた主張を続けるだけ(最高裁2006年1月13日第二小法廷判決で、期限の利益喪失約款がある契約での返済は任意性がなくみなし任意弁済の適用がないとされたわけだから、それ以降について悪意じゃないというのは基本的に無理だし、仮にその主張をしたいなら2006年1月13日以降に期限の利益喪失約款をどうしたのか主張しないと話にならない)。裁判官からその点を指摘されて出してきた証拠にも、どこにも期限の利益喪失約款がどう変わったのか書かれてなかったり、自分が(形式上)主張していることの意味もわかっていない様子がありあり。アイフルの訴訟対応は、引き延ばし以外何も考えていないとしか思えません。
 2012年8月提訴の事件で2012年11月に送ってきた第1準備書面では、従前の主張に加えて新たに2011年12月1日の最高裁判決を反映したとかで、このプロミスやCFJについての判決でリボルビング取引の貸付時の交付書類(特にATMによる追加貸付の際のATM利用明細書)の記載事項で追加貸付後の最低返済額による返済回数の記載がなければ悪意の受益者として過払い金に利息をつけて返済する必要があるとされた(かなりマニアックな論点で、素人にはもちろん、多くの弁護士にとっても難しい話です。いずれ「もっと詳しい過払い金請求の話」できちんと書かねばとは思っていますが、現時点では「アコムの場合」と「プロミスの場合」の悪意の受益者問題のところで説明しています)ことに関して、アイフルは他社と違って元金定額返済方式だから回数は明確である(貸付後残元本を元本最低返済額で割ればいい)から、アイフルはATM利用明細書に返済回数の記載を追加する前から(つまりずっと昔から)悪意の受益者ではないという主張をしています。ちょっとマニアックな話ですが、最高裁はリボルビング取引(追加貸付が自由で毎月の返済額は残高の何%という形ではなく一定額に固定される取引)の場合でも、貸金業法が求めている貸付時の書面に追加貸付時点での各回の返済金額及び最低返済額を返済し続けた場合の返済回数が記載されることで借り主が債務の程度を把握できるから、それを記載すれば貸付時の書面の要件を満たすと扱えるとしているわけです。プロミスやCFJの場合、各回の返済金額が元利合計で定額なので、返済回数が問題になり、返済回数の記載があればOKと判断されたわけです。しかし、アイフルの場合元金定額返済なので、元利合計の返済額は毎回違います。返済額が毎回違ったら返済回数がわかっても総返済額はわかりません。もちろん、返済すべき元本額はわかりますが、そんなことは各回の返済金額や返済回数を見なくても約定残高を見ればわかります。重要なのは利息と合わせて合計いくら返さなければならないかを把握することなのです。アイフルのいう元金定額返済方式はそこがわかりにくいので、プロミスやCFJの場合よりも2011年12月1日の最高裁判決の要件を満たすことは難しいことになります(むしろATM利用明細書に返済回数欄を追加した後でもダメだということになると思います)。アイフルは、そこのところをまったく理解していないようで、またしても新たに恥ずかしい主張を増やすことになりました。(まぁ、いまだにこれまで一度として認められたことのない、法人税を払った分過払い金返還額を減らすべきだという主張を臆面もなく続けていることからしても、裁判所に通じるかどうかなんて気にもせず、ただ相手を困惑させたり、書面1回分として引き延ばしができればいいと考えているのでしょうけれど)
2013年の対応
 2013年になってから起こした事件では、答弁書は形だけの引き延ばし答弁書で、第1準備書面で、アイフルは悪意の受益者ではない、法人税課税分は現存利益でないから返還する必要がない、新たな借入金は過払い利息には充当されないの3点の主張をしてきます(2012年後半からこうなっているように思えますが)。
 1点目と2点目は2009年〜2010年の対応で説明した通りです。3点目は最高裁2013年4月11日第一小法廷判決で明確に否定された見解です。2013年5月に、アイフルの定型答弁書に対する反論で、アイフルは次に出してくる「第1準備書面」で既に最高裁2013年4月11日第一小法廷判決で否定された主張を、きっと臆面もなく書いてくるだろう、こういう業者に何回期日を重ねてもまともな主張など出て来ないから直ちに弁論終結して判決を言い渡して欲しいとまで書いておいたのですが、こちらがそこまで書いた後で出して来た第1準備書面でもまた同じことを繰り返していました。こちらの準備書面を読んでいないのか、思考能力がないのか。裁判官からも、既に最高裁判決が出てるのですから、今後こういう主張は削除した方がいいと思いますよと、法廷でいわれていました。
2014年の対応
 2014年の1月15日付けで出してきた第1準備書面は、2013年のものと同じでしたが、別の事件で2014年2月26日付(でもうちの事務所に送ってきたのは3月5日。実にせこいやり方)出だして来た第1準備書面では、ようやく最高裁で遠に決着済みの「新たな借入金は過払い利息には充当されない」の主張を外してきました。最高裁で決着した論点を外すのにまるまる10か月もかかるんですね。
 2012年のところで書いている、アイフルのアイフルは元金定額返済方式だから返済回数は明確であるという主張に対して、私が主張し続けていた「元金定額だと各回の返済金額が違うので借り主にはわかりにくいから最高裁の2011年12月1日判決の要件を満たさない」ということを認めた判決を、2014年3月19日、簡易裁判所レベルですがとりました。これまでは、そこまで判断せずに、アイフルが悪意の受益者でない特段の事情を具体的に主張立証していないからとか、アイフル主張の書式改定までに既に過払いだとか、書類の記載が利息制限法引き直し額と大きく違うからとか別の理由でアイフルの主張を落としていたものばかりでしたので、マニアックな論点ではありますが、ホッとしました。
2015年〜2016年の対応
 2015年になってもアイフルの主張は相変わらずです。時間稼ぎのために薄くなった答弁書では、いまだに過払い利息の発生時は訴状送達の翌日からなんて、まるっきり素人丸出しの主張をまだしていますし、裁判所からまったく顧みられることのない「法人税支払分だけ返還すべき過払い金が減少する」というアイフルだけが言っている特殊な主張をまだ恥ずかしげもなく書き続けています。
 近年、アイフルがこだわってくる主張に、借り主が支払日にわずかでも遅れると、最初の延滞で期限の利益を喪失し、その後全取引について利息制限法の遅延損害金の利率で計算すべきというものがあります。利息制限法の制限利率は、遅延損害金については通常利息の1.46倍(2000年6月以前は2倍)ですから、もしこの主張が通ると、過払いではなくなってしまったり、そこまで行かなくても過払い金が大幅に減額されてしまいますので、かなり大きな影響があります。私自身は、そういう主張で負けた経験はまったくありませんが、アイフルの準備書面によれば、アイフルのその主張を認めた判決もいくつかあるそうです(アイフルは準備書面でそういう主張をするだけで、判決文を出してきませんから、本当かどうかもわかりませんが)。
 2015年6月に起こした裁判では、借り主が、過払い金額について間違った認識をして、アイフルの計算(過払い利息なし)でも239万円あまりの過払いの事案で35万円の和解案を示され、契約書を送ってくれと言ったけれど、送られてきた契約書を見て署名押印を拒否し、その後私のところに相談に来たケースで、和解契約書に署名押印を拒否しているにもかかわらず、口頭で和解が成立していると主張して、延々争ってきました。アイフルの交渉担当者は、口頭で合意している、録音もあるなどと言って、減額和解を執拗に言ってきました。私は、録音があるというならさっさと裁判で証拠に出せばいいでしょと言いましたが、アイフル側は証拠を出さずに、まだ主張したいと言い続けて引き延ばしを続け、裁判官から最後通告をされて録音は出さずにアイフル側で勝手に作った交渉記録だけ出してきました。そもそも和解契約書への署名もしていないケースですから、当然ですが、2016年1月18日言い渡しの判決ではアイフルの主張は認められませんでした。
 2015年10月に提訴した事件で、アイフルが2016年1月14日付で出してきた第1準備書面でも、主張は相変わらずで、むしろ悪意の受益者に関する主張は昔の主張に戻っているようでより手抜きしている感じがします。
2017年の対応
 2017年になっても、答弁書の記載は基本的に2015年〜2016年と同じで、いまだに過払い利息の発生時は訴状送達の翌日からなんて、まるっきり素人丸出しの主張を続けています(まったく呆れます)が、ここのところ、「法人税支払分だけ返還すべき過払い金が減少する」というアイフルだけが言っていた特殊な主張は、見ていません。それが出る前に弁論終結に至っているせいかもしれませんが。

  事業再生ADRへの申立と支払状況

 アイフルは、2009年9月24日、事業再生ADR手続の利用申請を行い、受理されました。これは会社更生や民事再生などの法的(強制的)な手続ではなく、私的な整理で、内容的にはアイフルに融資している金融機関に対して返済の猶予や条件変更を求めるものです。
 ですから、過払い債権者に対しては影響はありません。
 しかし、アイフル側はそれを理由に、和解案を出せないとか提案する和解条件を切り下げたり、また裁判の引き延ばしを図ったりしていました。
 私が、それ以前に提訴して9月に第1回期日で弁論終結して2009年10月1日に判決をもらった事件では、アイフルに判決が送達されてすぐの10月6日にアイフルから、8日に判決通り払うから支払日までの法定利息付きの金額と振込口座を教えてくれと言ってきて、その通りに10月8日に全額の支払いがありました。その事件で訴訟費用(印紙代等)も判決に従って計算して請求したら、全額支払ってきました。
 その後も、判決を取った事案では、判決直後にこちらに電話してきて少しでも負けてくれと言い続けるので、すぐ払うなら判決日以降の利息は負けてやる(2〜3週間分の利息だけカット)とかいうと、それですぐに払ってきたりしていました。
 2012年4月27日判決のケースでも、私の留守中、5月7日に電話が来ていたので、きっとまた負けてくれという話だろうから、次に電話してきたら「伊東は一切負けないといっている」と言ってくれと事務員さんに伝えて外出したところ、それを聞いたアイフルの担当者は、最初はそれなら控訴を検討すると言って電話を切ったそうですが、その日のうちに5月10日に判決通り(支払日までの過払い利息もつけて)払うといってきたそうで、2012年5月10日その通りに入金がありました。
 2012年11月13日1審判決、アイフル控訴で2013年3月6日2審判決のケースでも、2013年3月12日に電話してきて3月14日に送金する、訴訟費用も印紙と郵券だけなら請求されれば払う(旅費・日当も請求するなら訴訟費用額確定手続をしてくれ)ということで、3月14日に判決通り(支払日までの過払い利息付きで)支払ってきました。
 2013年10月11日判決のケースでは、10月17日に電話してきて、控訴しない、10月21日に判決通り(支払日までの過払い利息付きで)全額払うといってきて、その通り支払われました。その事件は京都地裁に訴訟提起して口頭弁論期日が4回も開かれたため交通費がかさんだので、きちんと訴訟費用確定処分の申立をして、訴訟費用が14万0100円にもなりました。確定処分が年末に来たのでアイフルに請求書をFAXしておいたら、年が明けて2014年1月9日に全額支払ってきました。
 2014年2月14日判決のケースでは、2014年2月24日に支払日までの利息を含め全額支払ってきました。
 最近は、判決を取れば負けてくれとも言わずに耳をそろえて払ってきますし、控訴も必ずしもしてこない感じです。全件控訴されるっていう人もいますけど、私の経験上は近年では控訴されるケースは半分以下です。最近はむしろほとんど控訴されていない印象です。この間(2014年2月14日)も完済後1年8か月の空白期間後に再借入した事案で(再借入時の利用明細を借り主が持っていてその記載事項にやや特殊事情があったケースですが)一連計算が認められ、普通なら控訴してくるだろうと思われるのですが、控訴されず、あっさり支払ってきました。
 アイフルは、2014年6月13日、事業再生の手続期間を終了し、その際に払えなくて繰り延べした金融機関への債務も2015年8月25日に完済しました。

 私の感覚では、アイフルはもうふつうに全額回収できる消費者金融に戻っていると思います。
 2016年1月18日判決のケースでは、過払い利息込みで305万円ほどの請求でしたが、借り主が電話で和解に承諾したかの論点で本人がやや弱気になったのか、300万円で和解してよいというので(私に依頼してくる過払い金債権者は1万円未満の端数くらいしか減額しないという人が多いのですが)アイフルの担当者に300万円なら和解してもいいと答えていたのに、アイフルが120万円とか150万円とか最終段階でも240万円とかばかばかしい話に終始するので和解ができず、判決に至りました。判決後も、アイフルの新しい担当者が電話してきて、控訴するとか、負けてくれとか言っていましたが、判決が出て減額するわけないでしょ、控訴でも何でもすればいいと答えたら、結局控訴もせずに判決に従って払うというので、支払日までの利息付きで結局313万円あまりを払わせました(引き延ばしをするから提訴後の過払い利息が増えます)。この事案は、そもそもがアイフルの計算(過払い利息なし)でも239万円あまりの過払いの事案を借り主を言いくるめて35万円で和解しようとしたことから納得できない借り主が私に相談に来て裁判になったものです(アイフルが239万円とかそれに近い金額を払うと言ったら、借り主は、過払い利息のことまで考えずに和解していたと思います)し、裁判になった後でも素直にこちらの提案に沿って和解すれば300万円で済んだものが、和解金をケチったために結局313万円支払うハメになった(確定後に訴訟費用の確定請求をして、訴訟費用として4万8976円を取り立てました)ものです。

 個別事案で考えれば、経済的にも愚かなことなのに、それでもアイフルがこういう態度を取るのは、高圧的な姿勢/他方で例によって潰れるという恫喝を続けることで、過払い元金にも満たない額での和解を勝ち取れることが多いからだと考えられます。アイフルの担当者がそう言っていますし、実際過払い金請求をする弁護士の全員またはその大半が私のように請求額満額付近(端数切り)でないと和解せず判決を取るという対応なら、アイフルのような態度では経済的に損をしますので、むしろ判決予想額より少しでも安ければ和解するという姿勢になるはずですから。


 私も、武富士やSFコーポレーションで、全件判決主義で行って突然倒産されて支払を受けられなかったことから、和解案は依頼者に伝えて私は妥協する必要はないと考えるがいつ倒産するかは外部からは判断できないので依頼者が和解したいというのなら和解するという方針にしていますから、依頼者の希望によっては、早期の支払を条件に減額和解するケースもあります。でもその早期というのも、判決が出ていないと2か月とか3か月先、さらには甘い姿勢を見せたら半年とか1年先の話になったりしますので、私の感覚では、和解の話に付き合って引き延ばされたり減額するより、さっさと判決を取った方が早くきちんと回収できると思っています(実際、裁判中に和解した人よりも和解を蹴って判決を取った人の方が先に支払われることもあります。和解した人は減額した上に遅くなって踏んだり蹴ったりだと思うのですが)。


 不動産担保の話は「もっと詳しい過払い金請求の話」に移しました。→「不動産担保取引」

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