庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆債務整理の話
  みなし任意弁済の適用の余地はほぼなくなりました

   最高裁2006年1月13日判決&1月19日判決&1月24日判決
   ついに滝井裁判官の補足意見が多数意見に!

 2006年1月13日、最高裁第2小法廷は、貸金業者と約束した利息の支払をしなかった(遅れた)場合には分割払いではなく残金を全額一括で支払わなければならないという「期限の利益喪失約款(きげんのりえきそうしつやっかん)」がある場合に、借り主が利息制限法が定める利息を超える利息を支払うのは、事実上強制されたもので任意の支払ではないから、みなし任意弁済の要件が満たされず(「利息として任意に支払ったこと」も要件になっていますからね!)、みなし任意弁済は適用されないという判断を示しました。
 続いて2006年1月19日に最高裁第1小法廷が、さらに2006年1月24日に最高裁第3小法廷が、同じ内容の判決を言い渡しました。これで最高裁の3つの小法廷で同じ判断が出ました。第2小法廷の2004年2月20日判決の滝井裁判官の補足意見が、今や最高裁の多数意見になったわけですが、滝井裁判官のいる第2小法廷だけでなくすべての小法廷で同じ結論になったのです(1月24日の第3小法廷の判決で、上田豊三裁判官が反対意見を書いている以外は全員一致です)。
 厳密にいえば、最高裁は、利息制限法違反の利息を約束している場合には期限の利益喪失約款があっても利息制限法の範囲の利息を支払えば期限の利益は失われない(一括払いする必要はない)、その意味で期限の利益喪失約款は部分的に無効であると判断した上で、そのことがわかっていてそれでも利息制限法違反の金利を支払ったといえるような特段の事情があるときは別だとしています。しかし、弁護士に依頼する前からそういう知識があることは、普通ないでしょうから、これらの判決は、期限の利益喪失約款がある場合には「みなし任意弁済」の適用はないと判断したものと評価できます。
 そして、消費者金融からの借入で期限の利益喪失約款がないということはまず考えられません。
 ですから、これらの判決で、消費者金融からの借入については、「みなし任意弁済」の適用の余地はほぼなくなった、従ってほぼすべての場合に利息制限法が適用されると考えていいはずです。

   シティズの呪縛もこれでおしまい

 これらの判決のうち1月13日と1月19日の判決が「シティズ」という貸金業者相手の裁判で出されたことも、私たち消費者側の弁護士にとっては、感慨深いものでした。実は、シティズは、貸金業者の中で例外的に、「みなし任意弁済」について裁判所で勝ち続けた業者でした。そのためシティズは、和解でも極めて高飛車な態度を取り、利息制限法引き直しには一切応じず遅延損害金を一部減額する程度しか譲歩しないという態度をとり続けてきました。それでも裁判になるとシティズが勝ってしまうという状況の下で、消費者側の弁護士は、裁判で闘って負けると裁判中に遅延損害金がふくらんで借り主の傷が大きくなるため、泣く泣くシティズのいいなりの和解を飲まされるケースが多かったのです。
 これらの判決によって、ようやくシティズ相手の事件でも、通常の利息制限法による解決が図れるようになっていくでしょう。

   今後も注目:貸金業者の巻き返しを許さないために

 でも、まだ油断はできません。消費者金融は、その財力(利息制限法違反の利息で借り主から巻き上げたお金ですけどね)で政治家に圧力をかけて貸金業者に有利な法律改正をもくろむでしょう。そもそもみなし任意弁済の規定(貸金業規制法第43条)も、貸金業を規制する法律を作るときに貸金業者との妥協の産物として、それまでの最高裁判決を後退させるような形で作られたものです。この問題に関しては、消費者・庶民の敵は裁判所よりも政治家と見られます。
 せっかくの最高裁判決を後退させないよう、裁判実務とともに立法の場も監視していきたいものですね。
 これらの最高裁判決を受けて、2006年12月13日、貸金業規制法等の改正がなされ、グレーゾーン金利や「みなし任意弁済」の規定は撤廃されることになり、2010年6月18日に全面施行されました。
 しかし、これについても見直しを言い、制限金利を上げさせようと画策する勢力がいます。貸金業者と政治家の動きには、なお注目しておく必要があります。

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