庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  ◆過払い金返還請求の話

 閏年計算の憂鬱

    
 貸金業者の契約書では、利息計算の方法として、閏年でも1年365日計算すると記載されていることがよくあります。
 しかし、利息制限法引き直し計算では、契約条項がそのように書かれていても、閏年(うるう年)は366日計算します。そうしないと、実質的な制限利率が利息制限法の規定を超えてしまうからです。

 貸金業者では、Jトラストフィナンシャルサービス(旧ステーションファイナンス、現在は「ロプロ」(旧日栄)に吸収合併されています)が、利息制限法引き直し計算書で何の断りもなく閏年を365日計算していました。
 最近、レイクがなんと弁護士がついた上で裁判所に提出してきた利息制限法引き直し計算書で閏年を365日計算しています。これはレイクが最近(2011年7月)裁判所に出した利息制限法引き直し計算書です。
レイクの引き直し計算書
 2000年3月27日の残高が47万8594円となっていて、その29日後の2000年4月25日の返済の際の利息が6844円となっています。閏年を366日計算していれば、47万8594円×0.18×29日÷366日=6825.8円、閏年を365日計算していれば、47万8594円×0.18×29日÷365日=6844.5円ですから、この利息制限法引き直し計算書が閏年を365日計算していることは明らかです。こういうのを平気で裁判所に出せる感覚は、私には理解できません。
 貸金業者の中には、こういう卑劣な業者もありますので、注意したいところです。

 実は、この閏年計算は、利息制限法引き直し計算シートを作るときに最も面倒なところです。
 まず、閏年計算をする期間について、ほとんど判例はないんですが、そのわずかな判決が、最初の貸付日を初日として1年毎に区切り、その区切りで2月29日を含む期間を閏年計算するという立場だったりします。
 これをエクセルの計算式に反映させるのはすごい面倒。しかも、裁判所(少なくとも東京地裁)が使用しているエクセルは2001とかで、判決前に裁判所から計算シートの提供を求められて渡すときにはそのバージョンに変換しないといけないんですが、2001だと使える関数の段階が限定されています。2001に変換することを考えると、そういう複雑な処理は1コマではできなくて、いろいろ非表示の列をたくさん作って処理することになります。
 そういうのいやなので、私は、暦に従い1月1日から12月31日で閏年計算していますし、普通の利息制限法計算シートはそうしています。さらに、その処理をするとして、一番簡単なのは、閏年の前の年と閏年はその日に取引があろうがなかろうが必ず12月31日を入力するというパターン。ただ、これをやると、取引のない日が出てきて見てくれが悪いのと、そこで端数切り捨てをするので、端数切り捨てをしない場合と比べてわずかに誤差が出ること。自分の計算シートの計算結果以外はすべて誤りだと主張する高飛車な消費者金融(典型的にはライフ)から、ときどき文句を言われます(そういうライフは、最高裁2010年4月20日第三小法廷判決以前は返済によって元本が減って10万円未満になると制限利率を20%にする間違った計算書を平気で送りつけてきていましたが)。その点を処理するとやはり1コマで処理できなくなったりします(弁護士会でポピュラーな計算シートのロジックを見ていると、この閏年を処理するだけのためにどれほどの労力をかけているかが見えて涙ぐましいというか、あほらしいというか)。そのため、私は、閏年の前年と閏年は12月31日を入力するパターンの計算シートを使用しています(それほど手の込んだことをしなくても12月31日で端数切り捨てしない計算シートを作れることがわかり、作ってみましたが、やっぱり大差ありませんし、普通の貸金業者はそんなことまったくこだわってませんから、今も普通には閏年の前年と閏年の12月31日で端数切り捨てする計算シートを使っています)。  

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