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短くわかる民事裁判◆
絶対的上告理由:判決裁判所の構成の違反
 民事訴訟法第312条第2項第1号の絶対的上告理由「法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと」は、判決をした(判決の内容を決め判決原本に署名押印した)裁判所が、本来合議体でなければ担当できない事件(高裁では全件、地裁では控訴事件くらい)であるのに単独体であった(裁判所法第18条、第26条違反)とか、3人で構成しなければならない合議体を2人で構成した(裁判所法第18条違反)とか、特例判事補(とくれいはんじほ:経験5年以上の判事補を指名)として指名を受けていない判事補(未特例判事補)が単独で裁判をした(裁判所法第27条第1項違反)とか、未特例判事補が合議体の裁判長を務めたとか合議体に2名入った(裁判所法第27条第2項違反)、裁判所法上裁判官となる資格のない者が誤って裁判官に任命されて担当したなど、理屈の上ではいろいろ考えられますが、現実にそういうことが起こることは考えにくく、実際に問題になったのは、基本となる口頭弁論に関与しなかった裁判官が判決をした場合(民事訴訟法第249条第1項違反)や、裁判官が交代した際に適法に弁論の更新を行わずに判決をした場合(民事訴訟法第249条第2項違反)です。

 前者の基本となる口頭弁論(実際には最終の口頭弁論)に関与しなかった裁判官が判決を書くというのは、どういう事情でそうなるのかもわからず、由々しい事態であろうと思います。
 これについては「判決裁判所の構成の違反:弁論終結時と別の裁判官による判決」で説明しています。今回、調べているうちにけっこうたくさんそういうケースが出てきて驚きました。

 他方で、弁論の更新については、その実態は裁判官が、「裁判所の構成が替わりましたので弁論の更新を行います。双方、従前通りと伺っていいですね。」と発言するだけ(双方の代理人が「はい」と言うか、黙っている)という程度のものなので、もし裁判官がその言葉を言い忘れたり、書記官が調書にその記載をし忘れたとしても、弁護士の感覚では、ごく軽いミスと思うのですが、裁判所にとっては大事のようで、仰々しく判決が破棄されることになります。
 こちらについては「判決裁判所の構成の違反:適法な弁論更新の欠落」で説明しています。

※ここでいう「判決裁判所」は、判決の内容を決定し判決書原本に署名押印した裁判所(裁判官)のことで、判決を言い渡した裁判所(裁判官)のことではありません。判決の言い渡しは別の裁判官が(代読)してもかまわないとされています(最高裁1951年6月29日第二小法廷判決)。
 判決を言い渡した裁判所が法律に従って構成されていなかった場合、最高裁は、絶対的上告理由(民事訴訟法第312条第2項第1号)ではなく、別の理由で、原判決を破棄しています。それについては「判決言い渡し裁判所の構成の違反」で説明しています。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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