◆短くわかる民事裁判◆
管轄違いの主張
原告が訴えを提起し、被告に対して訴状副本等を送達してきた裁判所に、管轄がないとき、被告は管轄違い(かんかつちがい)を主張して、管轄のある裁判所への移送(いそう)を求めることができます(民事訴訟法第16条第1項)。
この管轄違いを理由とする移送の申立ては、被告が管轄違いの主張をしないで本案(ほんあん)について弁論した(訴状の請求の原因についての認否・反論を答弁書や準備書面に記載して期日に陳述扱いとなったり、期日に出席して口頭で述べた)場合は、できなくなります(民事訴訟法第12条)。そして、管轄がなくても被告が応訴すればその裁判所での裁判が継続できます(応訴管轄:おうそかんかつ の発生:民事訴訟法第12条)。
被告としては、他の管轄がある裁判所で裁判を行うことが今事件が係属している裁判所での裁判続行よりも有利なのかを検討して、移送を求めるべきかを判断し、移送を求める場合は答弁書で移送を求め、移送することにメリットがなければ、移送は申し立てずにそのまま訴状に対して答弁をするという選択になります。
なお、現在事件が係属している(訴状等を送達してきた)裁判所にも管轄があるが、遠方であるなどの事情で、当事者間の衡平を理由に被告の住所地等の裁判所への移送を求めること(それについては「遠隔地で裁判を起こされたとき」で説明しています)は、本案について弁論(訴状の請求の原因に対する認否や反論)をした後でも可能ですが、その裁判所での審理が不利ないし負担がある以上、早期に求めるべきでしょう。
管轄違いの主張をする場合は、訴えの却下ではなく移送を求めることになりますので、答弁書冒頭の記載は、
第1 本案前の答弁
本件を○○裁判所に移送する
との決定を求める。
というようになります。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「第1回口頭弁論まで」でも説明しています。
**_****_**