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短くわかる民事裁判◆
棄却と却下:判決以外の場合
 判決の場合、原告の請求に「理由がない」ときが請求棄却、訴え(請求)が「不適法」のときが却下ということを「判決主文:棄却と却下」で説明しました。

 しかし、裁判所が判決以外の「決定」等で判断を示す場合、「理由なし」に当たる場合でも「却下」の主文を書きます。例えば訴え提起手数料(印紙)の納付の猶予を求める訴訟救助申立や、別の地域の裁判所での審理を求める移送申立、立証のために必要な文書を相手方などから提出させるための文書提出命令申立などが、申立自体は適法であっても「理由がない」として認めない場合、裁判所は「却下」の決定をします。
 家事審判(かじしんぱん。財産分与とか、遺産分割とか)でも同様です(現実には却下になるのは子の親権者の変更とか、推定相続人の廃除とかが考えやすいですが)。
 これらの決定に対する不服申立は即時抗告(そくじこうこく)です。即時抗告は、民事訴訟法の領域での決定(上の例では、訴訟救助却下決定、移送申立却下決定、文書提出命令申立却下決定)の場合は、決定の送達を受けてから1週間以内(民事訴訟法第332条)、家事審判については審判書の送達を受けてから2週間以内(家事事件手続法第86条)に抗告状(抗告状の文書の宛名は上級審:地裁・家裁の決定に対しては高裁)を原裁判所(決定をした裁判所)に提出して行います。

 これらの却下決定等に対する不服申立として即時抗告がなされた場合、抗告審の決定では、抗告が「不適法」な場合(例えば抗告手数料の不納付、抗告期間経過後の申立等)はやはり却下の決定をしますが、抗告に「理由がない」場合は「本件抗告を棄却する」という決定を出します(民事訴訟法第302条、第331条、家事事件手続法第93条第3項)。

 そこは、理屈じゃなくて、民事訴訟法と家事事件手続法の規定がそうなっているからなんです。統一的な説明はできなくて、頭が混乱しますが、そういう用語法だと理解して(諦めて)ください。
  

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