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短くわかる民事裁判◆
決定・命令への裁判官の記名押印
 民事訴訟規則は「決定書及び命令書には、決定又は命令をした裁判官が記名押印しなければならない。」と定めています(民事訴訟規則第50条第1項)。これは、判決書について「判決書には、判決をした裁判官が署名押印しなければならない。」とされている(民事訴訟規則第157条第1項)のと同趣旨です。

 判決について、当事者に送達される判決正本に裁判官の署名がない、押印がないことを上訴理由と主張する人がいますが、署名押印が必要なのは裁判所に保管される判決原本であって、判決正本には裁判官の署名は不要(最高裁1965年3月23日第三小法廷判決)、捺印も不要(最高裁1973年10月18日第一小法廷判決)とされています。
 同様に、当事者(控訴人)に送達された訴え提起手数料(控訴手数料)の納付を命じる補正命令書(この場合の補正命令については「訴状に印紙を貼らなかったら:訴え提起手数料不納付」で説明しています)の謄本に裁判官の押印がないとして、書記官の処分(補正命令書謄本の作成?)に対する異議申立て(書記官の処分に対する不服申立てが異議申立てであることは「訴訟費用額確定処分に対する不服申立て」で説明しています)がなされた事案で、補正命令書の謄本は原本の内容を原本と同一の文字及び符号によってその全部を記載すべきであるが補正命令書を作成した裁判官についてはその所属裁判所を表示して氏名を記載すれば足りその押印まで模写することを要せずまたその押印があることを表示することも要しないとした原決定(東京高裁2003年10月6日決定)に対する許可抗告が棄却されています(最高裁2004年2月26日第一小法廷決定:判例時報1902号8ページ)。

 裁判実務上も私の経験でも、当事者に渡される判決、決定等には裁判官の氏名は記載されていますが押印がなされていることはまずなく、書記官の認証文(これは正本であるとかこれは謄本であるなど)と書記官の記名押印があるのがふつうです。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。 

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