◆短くわかる民事裁判◆
再審期間:判決確定から5年の除斥期間
民事訴訟法第342条第2項は「判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)から5年を経過したときは、再審の訴えを提起することができない。」と定めています。
この判決確定または再審事由がその後に生じた場合は再審事由が発生した日から5年の期限は、裁判・民事訴訟法業界では再審の訴えの「除斥期間(じょせききかん)」といわれています。
除斥期間と解する結果、裁判所がそれを短縮も延長もできない上、当事者の責めに帰することができない事情による場合でも、訴訟行為の追完(民事訴訟法第97条)により適法とすることもできないと解されています。
再審の訴えの除斥期間の起算日は「判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)」ですので、要するに、判決確定の日と再審事由が発生した日の遅い方から5年間です。
判決の確定日は、第1審判決、控訴審判決については、上訴なく確定した場合は上訴期間の満了日、上告審判決の場合は判決言渡日(最高裁の決定の場合は決定が送達された日。決定は告知によって効力を生じるため:民事訴訟法第119条)です。「判決の確定(原則)」で説明しています。
再審事由が発生した日は、4号〜7号再審事由については、有罪判決要件も満たした日になり、有罪判決確定の場合は有罪判決確定日、有罪判決に代わるものについては、被疑者の死亡、公訴時効の成立、起訴猶予処分がなされた日になります(最高裁1972年5月30日第三小法廷判決は、文書偽造罪と科刑上一罪となる公正証書原本等不実記載罪の有罪判決確定によって文書偽造罪について別に有罪判決を得ることができなくなったために証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決を得ることができないときに当たるとされたケースで、5年の除斥期間の起算日を有罪判決要件を満たした日としています。最高裁1977年5月27日第二小法廷判決も、被疑者の死亡等の事実が判決確定後に生じたときは、5年の除斥期間は被疑者の死亡等の生じたときから起算すべきとしています)。
この点に関しては、さらに、再審原告が、それらの後に(それらによる5年の除斥期間経過後に)有罪の立証するための有力な証拠を入手したときにどうすべきかをめぐって議論があります。最高裁1977年5月27日第二小法廷判決は、証拠を後で入手してもそれが再審事由の発生日に当たると解するのは相当でないとしています。学説上は、再審の補充性との関係では有罪を立証する証拠を後で入手した場合は民事訴訟法第338条第1項但し書き(再審事由を知りながら主張しなかった、上訴しなかった)には該当しないとする最高裁1994年10月25日第三小法廷判決に合わせて除斥期間の起算点もずらすべきという主張がなされています。これについては、「有罪判決に代わるものと再審期間」で検討・説明しています。
8号再審事由(判決の基礎となった裁判等の変更)の場合は、再審事由が判決確定後に発生することが当然に予定されており、判決の基礎となった裁判等が変更されたときが起算日となります。
※他方、1号〜3号再審事由、9号再審事由、10号再審事由が判決確定後に生じるということは、理論的にありえません(当事者が後から「知る」ことはあり得ますし、後から知った場合が再審の本来の姿ではありますが)。
再審請求で複数の再審事由を主張する場合に、除斥期間の起算日となる再審事由が発生した日は再審事由となる事実ごとに判断され、除斥期間を守ったかもその主張ごとに判断されることは、理論上、出訴期間の場合と同じです。5年の方がそれほど厳しい話になることはあまりないでしょうけど。
除斥期間の規定も、3号再審事由(代理権の欠如)と10号再審事由(前に確定した判決との抵触)には適用されません(民事訴訟法第342条第3項)。
3号再審事由については、条文上、3号再審事由のうち「代理権を欠いたこと」に限定されていますので、「代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いた」場合は出訴期間の制限があることになります。この訴訟行為をするのに必要な授権は、後見監督人が選任されている場合に後見人が被後見人を原告とする第1審の訴訟行為(民法第864条、民事訴訟法第32条第1項)、訴えの取下、和解、請求の放棄、認諾、控訴・上告・上告受理申立ての取下等(民事訴訟法第32条第2項)を行うためには後見監督人の同意を要するということを指しています。ですから、代理人でない者(法定代理人でない親族、法人の代表者でない者、本人や代表者が依頼していない弁護士等)が訴訟行為を行ったとか、訴状副本等が被告に交付されず被告が知らないうちに判決がなされ確定したというような、3号再審事由で問題となる通常のケースは出訴期間の制限を受けません。
再審期間については、5年の除斥期間よりも、再審事由を知った日から30日以内という出訴期間の方が問題になることが多いです。それについては「再審期間:知った日から30日の出訴期間」で説明しています。
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再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「再審請求」でも説明しています。
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