◆短くわかる民事裁判◆
再審期間:知った日から30日の出訴期間
民事訴訟法第342条第1項は「再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から30日の不変期間内に提起しなければならない。」と定めています。
※「不変期間」については、裁判所の決定で短縮も延長もできず(民事訴訟法第96条第1項)、裁判所が遠隔地に居住することを理由として「付加期間」を定めることはできます(民事訴訟法第96条第2項)が今どきは遠隔地に居住することで延長を認めさせる合理的な理由を示すことは困難だと思います。当事者の責めに帰することができない事情で期限を守れないときに訴訟行為の追完により救済されることもあります(民事訴訟法第97条。控訴期間について認められた例を「控訴期間(例外):訴訟行為の追完」で紹介していますが、容易には認められません)。
この再審の事由を知った日から30日以内の期限は、裁判・民事訴訟法業界では再審の訴えの「出訴期間(しゅっそきかん)」といわれています。
再審の訴えの出訴期間の起算日は「判決の確定した後再審の事由を知った日」ですので、当事者が再審事由を知ったのが判決確定後であれば、知った日から、判決確定前から知っていれば判決確定の日からカウントします。要するに、判決確定の日と再審事由を知った日の遅い方から30日間です。
判決の確定日は、第1審判決、控訴審判決については、上訴なく確定した場合は上訴期間の満了日、上告審判決の場合は判決言渡日(最高裁の決定の場合は決定が送達された日。決定は告知によって効力を生じるため:民事訴訟法第119条)です。「判決の確定(原則)」で説明しています。
再審請求で複数の再審事由を主張する場合でも、出訴期間の起算日の「知った日」は再審事由となる事実ごとに判断され、出訴期間を守ったかもその主張ごとに判断されます。再審の訴え提起後に訴えの変更をして新たな再審事由を主張した場合にその出訴期間を遵守したかは変更の時を標準として判断すべきものとされています(最高裁1961年9月22日第二小法廷判決)。
したがって、出訴期間の問題をクリアするためにとりあえず再審請求をして、具体的な主張は後で追加すればいいというような考えは受け容れられません。
この問題については、「9号再審事由と再審期間」、「再審事由の不記載と訴え却下」でも説明しています。
出訴期間の問題は、9号再審事由(判断の遺脱)については、判決を一読すれば判断できるはずとして判決正本の送達を受けたときには知ったものと推定されることから厳しく(「9号再審事由と再審期間」で説明しています。それ以前に、知ったはずだから再審の補充性問題=民事訴訟法第338条第1項但し書きで退けられることが多いですが)、4号〜7号再審事由では有罪判決要件との関係で有罪判決確定や有罪判決に代わるもの、さらには犯罪を立証できる証拠の入手が後日の場合、起算日がそれらを知った日となるので比較的緩やかになると考えられます(「有罪判決要件と再審期間」、「有罪判決に代わるものと再審期間」で説明しています)。
出訴期間の規定は、3号再審事由(代理権の欠如)と10号再審事由(前に確定した判決との抵触)には適用されません(民事訴訟法第342条第3項)。
3号再審事由については、条文上、3号再審事由のうち「代理権を欠いたこと」に限定されていますので、「代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いた」場合は出訴期間の制限があることになります。この訴訟行為をするのに必要な授権は、後見監督人が選任されている場合に後見人が被後見人を原告とする第1審の訴訟行為(民法第864条、民事訴訟法第32条第1項)、訴えの取下、和解、請求の放棄、認諾、控訴・上告・上告受理申立ての取下等(民事訴訟法第32条第2項)を行うためには後見監督人の同意を要するということを指しています。ですから、代理人でない者(法定代理人でない親族、法人の代表者でない者、本人や代表者が依頼していない弁護士等)が訴訟行為を行ったとか、訴状副本等が被告に交付されず被告が知らないうちに判決がなされ確定したというような、3号再審事由で問題となる通常のケースは出訴期間の制限を受けません。
10号再審事由については、民事訴訟法が確定判決の抵触という事態を解決する必要上出訴期間の制限を外しているにもかかわらず、大審院が、再審事由の知りながらの解釈で再審の補充性(民事訴訟法第338条第1項但し書き)との関係で、その趣旨に反すると思われる姿勢を取っていることについて、「10号再審事由と控訴・上告対応」で説明しています。
なお、再審事由を当事者がずっと知らなかった場合、知った日から30日以内という出訴期間内であっても、判決確定の日または再審事由がその後に生じた場合は再審事由が発生した日から5年の除斥期間を経過したときは再審の訴えを提起できません。それについては「再審期間:判決確定から5年の除斥期間」で説明しています。
私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。
再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「再審請求」でも説明しています。
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