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短くわかる民事裁判◆
訴外和解
 訴えを提起し、訴状副本等が被告に送達されると、第1回口頭弁論期日を待たずに被告から和解を申入れてくることがあります。被告の方に特に言い分がなく、裁判を続けても余計な手間がかかり、何よりも無駄に弁護士費用がかかることを避けたいという場合です。
 消費者金融に対する過払い金請求訴訟など、感覚的には半分くらいそうなります。相手方の担当者と和解条件(解決金の金額と支払日)を合意できれば、和解契約書を作成して郵送します。
 その場合、裁判上の和解をしてもよく、裁判所はそうして欲しいという意向を示すこともありますが、消費者金融側では、裁判所で和解調書を作成するのに抵抗感とか面倒くささを感じるのか、裁判上の和解を嫌うことが多いです。それで訴訟外で和解契約書を作成するのがふつうになっています。
 訴外和解では、解決金の額と支払日を決めた上で、原告は支払い確認後速やかに訴えを取り下げること、被告はその取下に同意することを定めるのがふつうです。
 口頭で和解合意ができると、裁判所に連絡し、期日の延期を上申します。そのまま期日をやってもかまわないのですが、期日に出席するのも無駄な手間ですし、第1回口頭弁論を開くと後で説明する手数料還付ができないので、原告側では、可能なら第1回口頭弁論期日を開かずに延期してもらいたいのです。その場合の問題は、延期した後の期日をどうするか、です。原告側としては、支払後に取り下げるので、期日は支払日の後に指定して欲しいのですが、あまり先に期日指定することには難色を示す裁判官がいます。他方で消費者金融が示す和解条件で支払日が3か月後とかもっと先ということもあります(私は基本的に2か月先までにしてもらっていますが)。単純に期日指定を取り消して、「追って指定」にしてくれる裁判官もいますし、わりと先でも支払日の後の期日を指定してくれる裁判官もいますが、支払日より前の期日を指定して双方欠席休止(きゅうし)になっても1か月以内なら期日指定申立てできるから、もし支払がなければ期日指定申立てすればいいとか言い出す裁判官もいます。
 訴外で合意ができて和解契約書を交わし、無事に入金があると、訴えを取り下げて裁判は終了になります。そういう事件では取下に被告の同意は不要であることが多いですが、念のために取下同意書を取っておくのがふつうです(弁護士の嗜みです)。
 第1回口頭弁論を開かずに、無事入金があり取下に至った場合は、訴え提起手数料の半額の還付を受けられるので、手数料還付の申請をします。

※訴えを提起すれば概ね請求通りに和解できるとわかっている消費者金融に対して、半額返ってくるとしても訴え提起手数料を払うのは無駄ではないかという意見もあろうかと思います。私の経験上は、多くの消費者金融では、訴え提起前の交渉では請求通りかそれに近い和解はなかなか受け入れないというか、訴訟前の担当者には多額の請求をほぼそのままの無権限が与えられていないのに対して、訴訟提起後の担当部署では勝てない事件はほぼ請求通りにすんなり和解してくれます(それも消費者金融によりますが)。訴え提起を面倒がれば、解決水準が低くなるだけです。私の場合、提訴で無駄に手数料がかかるという問題が起こらないように、過払い金請求について(だけ)は、訴え提起手数料は私の負担ですることにして、訴訟を起こしても依頼者の負担は増えないようにしています。

 訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「第1回口頭弁論まで」でも説明しています。
  

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