◆短くわかる民事裁判◆
訴訟費用額確定処分の更正
当事者の申立てにより裁判所書記官が訴訟費用の負担額を定めるために行った訴訟費用額確定処分(そしょうひようがくかくていしょぶん)に「計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより又は職権で、いつでもその処分を更正することができる。」とされています(民事訴訟法第74条第1項)。
この規定は、判決についての更正決定(こうせいけってい)を定める民事訴訟法第257条第1項と同じ内容です。裁判所の決定、裁判長・裁判官の命令には民事訴訟法第122条でこの民事訴訟法第257条も準用されるのですが、訴訟費用額確定処分は裁判所・裁判長の決定・命令ではなく書記官が行う処分なので、当然には民事訴訟法第257条が準用されず、各別に規定されているということです。
現実には、判決でも訴訟費用額確定処分でも、金額が違う、当事者の表記(氏名とか住所)が違うということで更正されることがあります。訴訟費用額確定処分で強制執行しようとしたとき、金額が違っていればその金額でしか差押え等ができませんし、当事者の表記が違うと強制執行に支障があります(相手方=支払義務者の名前や住所が違うと人物の同一性の関係で差押えができない可能性があり、申立人=差押債権者の名前や住所が違うと例えば銀行預金を差し押さえたはいいが銀行が支払いに応じない可能性があるなど)。そうすると、ささいな間違いに思えることでも更正してもらう必要があります。
実際には、訴訟費用額確定処分の場合は、相手が(こちらからここへ入金してくれと通知を送りつければ)任意に払ってくることが多く、本気で差押えまですることはあまりないので、更正の申立までしたことはありません。裁判所の方で誤記に気がついて自主的に更正して送ってきた経験はあります。
訴訟費用額確定処分が更正される場合、文書の表題は「更正処分」で、前書きで更正対象となる訴訟費用額確定処分を特定(当事者、事件番号、処分日等により)した上で主文は「訴訟費用額確定処分中、『××』を『○○』と更正する。」という体裁になります。
更正の申立ては書面で行うものとされ(民事訴訟規則第28条)、申立手数料は不要です。
書記官の更正処分に対しても、その告知の日から1週間以内に異議申立て(いぎもうしたて)ができます。異議申立てには申立手数料500円がかかります(民事訴訟費用法第3条、別表第1 17の項イ(イ))。
その異議申立てに対する裁判所の決定に対しては、その告知の日から1週間以内に即時抗告(そくじこうこく)ができます(民事訴訟法第74条第2項、第71条第4項、第74条第7項、第322条)。即時抗告の申立手数料は1000円です(民事訴訟費用法第3条、別表第1 18の項(4))
訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴訟費用の負担(訴訟費用の取り立て)」でも説明しています。
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