◆短くわかる民事裁判◆
訴訟費用の負担の裁判を忘れたとき
裁判所は、事件をそれで終わらせる裁判(原告の請求に対して正面から判断したいわゆる「本案判決(ほんあんはんけつ)」はもちろん、訴えを却下する判決や決定、訴状却下もこれに含まれます)をする際には、職権で、つまり当事者の申立てがなくても、訴訟費用の負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法第67条)。それについては「訴訟費用の負担の裁判」で説明しています。
もし裁判所が判決等の際に訴訟費用についての裁判をし忘れたときは、どうなるでしょうか。
当事者は、判決のうち訴訟費用の負担の裁判だけについて控訴をすることはできません(民事訴訟法第282条)ので、そのために控訴するということはできません。当事者双方が、訴訟費用の点以外は不服がないということならば、控訴ではなく、当事者の申立てまたは職権で、裁判所が訴訟費用について、言渡済の判決とは別に、決定で裁判をすることになります(民事訴訟法第258条第2項)。
この決定に対して不服がある当事者は、訴訟費用についての決定に対して即時抗告をすることができます(民事訴訟法第258条第3項)。
判決に(訴訟費用の点以外の部分で)不服がある当事者は、控訴できますので、当事者から控訴があった場合は、原審で訴訟費用の負担の裁判を忘れた場合も控訴審で1審分も含めて訴訟費用の負担の裁判をすることになります(民事訴訟法第258条第4項後段)。その場合は、それまでに裁判所が訴訟費用の負担について決定をした場合でもその決定は効力を失い(民事訴訟法第258条第4項前段)、もし当事者が即時抗告をしていた場合その即時抗告も効力を失います(民事訴訟法第258条第4項が、第3項の即時抗告の規定も含めて「前2項の」としていることから)。
※訴訟費用の負担の裁判ではなく、原告の請求の一部に対する判断(主張に対する判断ではなく)をしなかった場合(例えば30万円の請求のうち、15万円の請求についてしか判断しなかったとき:最高裁1955年7月5日第三小法廷判決)は、その判断しなかった請求はなお原審に係属しているもので(民事訴訟法第258条第1項)、不服のある当事者は控訴上告ではなく(もちろん再審でもなく)原裁判所に追加判決を求めるべきとされます。
訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の 「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
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