◆短くわかる民事裁判◆
請求の認諾と訴訟費用の負担
裁判が判決や決定で終わるときは、裁判所が訴訟費用の負担についての裁判を行い(民事訴訟法第67条)、訴訟費用の負担についての裁判所の判断は判決書や決定書に書かれます。しかし、被告が請求を認諾して裁判が終了した場合、認諾調書が作成されますが、それは裁判所の決定ではなく、訴訟費用の負担についての裁判ではありません。その場合、訴訟費用はどうなるでしょうか。
被告が請求の認諾に際して、訴訟費用についても認諾すると述べた場合、認諾調書に訴訟費用についての認諾を記載してもいいかについて、2018年度書記官実務研究報告書「民事訴訟等の費用に関する書記官事務の研究」73ページは、これを認めてかまわないとしていますので、被告が請求の認諾をするときに、訴訟費用についても認諾するかと確認し、被告が認めれば、訴訟費用は被告の負担となると解されます。
被告が訴訟費用についても認諾するとはいわないときやそこが不明確なとき(書類だけ提出して期日は欠席の場合)は、民事訴訟法の規定に従い、つぎのようになります。
被告が請求を認諾した場合、訴訟費用の負担を求める当事者の申立てがあれば、第1審の裁判所が訴訟費用の負担について決定で裁判をすることになります(民事訴訟法第73条第1項)。当事者が申し立てないと、裁判所はこの場合訴訟費用の負担についての判断をしません。また、決定をするのは第1審の裁判所なので、上級審で請求の認諾があったときは、事件記録が1審裁判所に返ってこないと決定ができず、待たされます。
1審判決後に請求の認諾がなされた場合、1審判決で1審の訴訟費用の負担についての判断がされていますが、少なくとも1審判決が被告の全部敗訴でない場合は、認諾は1審判決の変更を意味しますから、訴訟費用は改めて判断せざるを得ません(民事訴訟法第76条第2項)から、第1審の裁判所が1審分も含めて改めて訴訟費用の負担を決定することになります。
訴訟費用の負担は敗訴者負担が原則です(民事訴訟法第61条)から、請求の認諾で終了した場合は、訴訟費用は被告の負担とするという決定となるのがふつうです。
訴訟費用は、原告側が支出しているのがふつうですので、請求の認諾があったときは、訴訟費用の負担について裁判所に裁判を求めるということになりやすいと思います。
訴訟費用の負担についての裁判所の裁判(決定)に対しては即時抗告をすることができます(民事訴訟法第73条第2項、第71条第7項)。
訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の 「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
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