◆短くわかる民事裁判◆
費用計算書:書類提出郵送料
民事訴訟費用法は、「文書又は物(裁判所が取り調べたものに限る。)を裁判所に送付した費用」を訴訟費用としています(民事訴訟費用法第2条第9号)。そうすると、準備書面や書証を裁判所に郵送した場合、その郵送料も訴訟費用額確定処分で訴訟費用計算書に計上してよいのでしょうか。
実は、これまで考えたことがなくて、私はこれまでに申し立てた訴訟費用額確定処分で計上してみた経験がないので、よくわかりません。
訴訟費用になるかどうかでよく引用される準備書面の相手方への直送費用は訴訟費用にならないとした最高裁2014年11月27日第一小法廷決定では、裁判所が行う送達の費用についての民事訴訟費用法第2条第2号の方の類推適用が議論されていて、9号の裁判所への送付費用の趣旨内容は論じられていません。
2018年度書記官実務研究報告「民事訴訟等の費用に関する書記官事務の研究」55ページは、「文書等は、通常の場合、当事者等又は代理人が口頭弁論期日等に出頭する際携帯し、本号にいう『送付』がないから、本号の費用は生じないと考えられている。したがって、文書についてこの送付費用が認められるのは、大量の商業帳簿等を書証として搬入した場合などに限られる。」とした上で「文書又は物を郵送する必要性が認められる場合には、書留料も訴訟費用になると解する。速達によることが通常と認められる場合の速達料も同様である。」としています。
う~ん、今どきは、準備書面や書証を口頭弁論期日当日に持っていってその場で提出したらかなりひんしゅくを買うわけで、裁判所は基本的に期日の1週間前に提出して欲しいという姿勢を示しています。準備書面だけならファクシミリでの送信の方がスタンダードになっています(裁判業界では、ですけど)が、書証があるときはものによったらFAXだと写真が真っ黒になったり字がつぶれて読めないことがあり、また大量になるとFAX送信は迷惑ですから、郵送のニーズはそれなりにあります。私は、裁判所には事務員さんに持っていってもらって裁判所の受領印をもらうようにすることが多い(相手方代理人には同時にレターパックで郵送)のですが、少なくとも東京では、裁判所にも相手方代理人にもレターパックで郵送することが多くなっていると思います。私も、事務員さんの都合がつかないとかいうときは裁判所にも相手方代理人にも郵送してますし。
そう考えて、民事訴訟費用法の条文を読むと、相手方代理人への郵送料は対象外だけど、裁判所への郵送料は訴訟費用に計上できるんじゃないかと思います。今度訴訟費用額確定処分を申し立てることになったらチャレンジしてみましょう。
訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴訟費用の負担(訴訟費用の取り立て)」でも説明しています。
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