◆短くわかる民事裁判◆
答弁書の記載事項
答弁書には、訴状の請求の趣旨に対する答弁、訴状の請求の原因に対する認否(訴状に記載された事実に対する認否)及び被告の主張(抗弁事実:こうべんじじつ)を記載すべきものとされています(民事訴訟規則第80条第1項)。
それと別に、被告または被告代理人(弁護士)の郵便番号と電話番号の記載も求められています(民事訴訟規則第80条第3項、第53条第4項:以前はファクシミリ番号の記載も求められていましたが、2023年2月20日以降は不要になりました)。
訴状の請求の趣旨が、原告が求める判決主文の形で記載することを求められているのと同様、請求の趣旨に対する答弁は、被告が求める判決主文の形で記載します。通常は(本案前の答弁をしなければ)、「原告の請求を棄却する。訴訟費用が原告の負担とする。」という記載になります。これについては、「請求の趣旨に対する答弁」でより詳しく説明しています。
請求の原因に対する認否は、訴状の請求の原因の項目ごとに「認める」、「否認する」、「不知」あるいは「知らない」のいずれかを記載します。否認する場合は、単に「否認する」(裁判業界では「単純否認」と呼ばれます)というだけでなく、否認する理由、例えば実際の事実はこうであるとか、否認する根拠などを記載すること(裁判業界では「理由付き否認」とか「積極否認」と呼ばれます)が、民事訴訟規則上要求されています(民事訴訟規則第79条第3項)。これについては「請求の原因に対する認否」でより詳しく説明しています。
被告の主張は、単に原告の主張する事実を否認する(そのような事実はない)というだけでなく、被告側で原告の請求が認められないという結論を導くために積極的に主張したいことを記載します。民事訴訟法が「抗弁事実」といっているのは、原告主張の事実が認められた場合でもそれと別にこういうことがあるので結論として原告の請求は認められないという法的な主張を「抗弁」と呼んでいて、それに対して原告が主張する請求原因の事実自体が認められないという主張はあくまでも請求原因事実の否認なので、それは(原告が主張していないような)事実主張を伴う積極否認であっても、請求の原因に対する認否のところで書くべき(そのように書き分けろ)という趣旨です。しかし、実際の裁判では、被告が主張したい事実が請求原因の積極否認なのか抗弁なのかは必ずしも明確ではなく、(昔気質の「要件事実」至上主義的な裁判官はさておいて)今どきはそれほどその書き分けに神経質になる必要はありません。
なお、主張する事実の記載はできるだけ具体的にすること、裏付けとなる書証を引用することも求められています(民事訴訟規則第80条第1項)。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の 「第1回口頭弁論まで」でも説明しています。
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