◆短くわかる民事裁判◆
和解調書の更正
和解調書の記載に明らかな誤りがあったとき、どうすればいいでしょうか。
民事訴訟法には、判決に関しては、「判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。」(民事訴訟法第257条第1項)という規定があり、決定、命令については、「決定及び命令には、その性質に反しない限り、判決に関する規定を準用する。」(民事訴訟法第122条)とあるので、これらによって、誤りの更正ができることとされています。その規定では救えない書記官の処分である訴訟費用額確定処分については、別途民事訴訟法第74条第1項で更正ができることが定められています(それについては「訴訟費用額確定処分の更正」で説明しています)。
判決でも決定でも命令でもなく、更正ができるという明文の規定がない和解調書は、誤りがあっても更正できないでしょうか。
これについては、和解調書は確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法第267条)ことを理由に、民事訴訟法第257条の規定が準用され、更正決定をすることができるというのが裁判実務の立場です(大阪高裁1956年1月29日決定:民事訴訟法の条文は当時のものですので現在とは条文番号が違います)。
民事訴訟法の規定の体裁には疑問はありますが、でも、更正できないとしたら困るので、そうするしかないというのが本音です。
現実には、和解調書の当事者の表記(氏名とか住所)が違うとか、和解条項の記載が誤っていたということで更正されることがあります。和解調書に基づいて強制執行しようとしたとき、当事者の表記が違うと強制執行に支障があります(相手方=支払義務者の名前や住所が違うと人物の同一性の関係で差押えができない可能性があり、申立人=差押債権者の名前や住所が違うと例えば銀行預金を差し押さえたはいいが銀行が支払いに応じない可能性がある、登記義務者の住所が登記簿と違うと移転登記等の前に住所変更登記が必要になるなど)し、和解条項が違っていたら強制執行できる内容が変わってしまいますし、記載によっては強制執行ができなくなってしまう可能性があります(ありがちなのは、登記手続条項で物件の記載が登記簿の記載と違うなど)。そうすると、ささいな間違いに思えることでも更正してもらう必要があります。
和解調書の更正決定に対しては即時抗告をすることができると解されています(民事訴訟法第257条第2項本文の準用)。
和解については「和解」でも説明しています。
モバイル新館の 「和解」でも説明しています。
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