◆短くわかる民事裁判◆
判決書の受け取り(送達)
民事裁判の判決がなされると、裁判所は判決書(はんけつしょ。裁判業界では「はんけつがき」と読むことも多いです)の正本(せいほん)を代理人(弁護士)がついているときは代理人に、代理人がついていないときは当事者(原告、被告)本人に交付します。裁判所側から見ると、判決正本の送達(そうたつ)を行うということです(民事訴訟法第255条)。
当事者(原告、被告)側から見ると判決正本の受け取りということですが、その受け取る方法は、基本的に、裁判所に取りに行くか、郵便で受け取るかの2つです。
裁判所に取りに行く場合、判決言渡の時刻より後に、担当部の書記官室に行って受け取ります。昔は法廷での判決言渡を聞きに行くとその場で書記官が判決正本を渡してくれることもありましたが、近年は法廷では渡してくれません(少なくとも東京地裁では)。書記官室にいきなり行っても、判決言渡時刻直後だと、まだ正本が準備できていないとか、担当書記官がまだ法廷から帰ってきていない(判決言渡の後、続いて別事件の口頭弁論とかが続けてあることも多々ありますので)とかで、待たされることも少なくありませんので、書記官室に電話して、何時頃なら受け取れるかとか、今から行ったら受け取れるかを聞いてから行った方が無難です。裁判所に電話する場合、判決言渡の時刻を過ぎていれば、聞けば主文は教えてくれます。結果(主文)を聞いて、それなら取りに行かないから郵送してくれというのも、ありです。
書記官室で受け取る場合、(裁判所側では、これを「交付送達(こうふそうたつ)」と扱います。民事訴訟法第100条、第101条)、送達報告書の受領者欄に署名押印を求められますので印鑑を持っていく必要があります。なお、本人が受け取りに行く場合は、本人確認の書類も要求されると思います。
受け取りに行かない場合、(裁判所から確認の電話が来ることもありますが)判決正本が、裁判手続中に「送達場所(そうたつばしょ)」として届けた(通常は訴状や答弁書に送達場所と記載した)住所に郵送されます。判決正本の郵送は(訴状の場合と同様に)「特別送達(とくべつそうたつ)」でなされます。特別送達というと何かものものしいですが、受け取りの際に送達報告書に受領の署名または押印を求められるというだけです(郵便配達人は、送達した場所、送達した日時、本人に渡したのか従業員や同居人に渡したのかなどを送達報告書に記載して裁判所に報告します)。不在の場合、書留やレターパックの場合と同一の不在連絡票が郵便受けに入れられ、書留やレターパックの場合と同様に電話等で再配達依頼をするか郵便局に行って受け取れます。不在連絡票の記載の書留やレターパックとの違いとしては、下の方の郵便物の種類のチェック欄が「特別送達」なのと上の方の差出人が裁判所というだけです。再配達依頼や郵便局での受け取りをせずに1週間放置すると郵便局は裁判所に戻します。その場合、訴状の場合と同様に、郵便に付する送達(付郵便送達:ふゆうびんそうたつ)とか公示送達(こうじそうたつ)等が検討されることになります。
控訴期間は、代理人か当事者が判決正本を受け取った(送達を受けた)日の翌日から数えて14日間(受け取った日の2週間後の同じ曜日)です。法廷で判決言渡を聞いた場合でも(傍聴席で聞いた場合だけでなく、正式に「出頭カード」に名前を書いて当事者席に座って聞いた場合でも)、判決正本を受け取らずに帰った場合は、控訴期間は、言渡日ではなく判決正本を受け取った日の翌日からカウントします(※労働審判の場合は異議申立期間は郵送受領日ではなく審判の日からカウントしますので注意が必要です)。
判決については、モバイル新館の 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
**_****_**