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短くわかる民事裁判◆
簡裁管轄事件の地裁による自庁処理
 原告が、簡易裁判所の事物管轄(じぶつかんかつ)に属する事件について、その簡易裁判所所在地を管轄する地方裁判所に訴えを提起した場合、つまり訴えが提起された地方裁判所に事物管轄はないが土地管轄はあるという場合、その地方裁判所は、相当と認めるときは、(事物管轄はないけれども)そのまま審理・判決をすることができます(民事訴訟法第16条第2項)。これを裁判業界では「自庁処理(じちょうしょり)」と呼んでいます。
 相当と認めるかどうかは、その地方裁判所の判断ですが、実務上は、当事者双方に異議がないとき、事件が複雑で地方裁判所で審理することが適当と考えられるとき、関連事件がその地方裁判所に係属しているときなどに自庁処理が行われているようです。

 簡易裁判所に事物管轄があって、現に簡易裁判所に係属している場合でも、簡易裁判所の判断で地方裁判所に移送(いそう)できる(民事訴訟法第18条。実際には難しいというか面倒な主張がなされると、簡易裁判所の裁判官から、地裁に移送しましょうと言ってくることがよくあります。それについては「簡裁から地裁への裁量移送」で説明しています)ということ、民事訴訟法上、当事者双方がその簡易裁判所所在地を管轄する地方裁判所への移送を申し立てたときは、簡易裁判所はそれにより著しく訴訟手続を遅滞させると判断した場合以外はその移送申立てに従わなければならないという規定(民事訴訟法第19条第1項)があることを、地裁側から見た制度といえるでしょう。
 
 自庁処理は、あくまでも地方裁判所がその事件について自分でやると判断した場合のことで、必ずそうしなければならないというわけではありません。しかし、簡易裁判所の側で(その簡易裁判所所在地を管轄する)地方裁判所に移送すると決めれば、地裁側はそれに応じなければならないわけです(簡裁の移送決定に対する即時抗告(そくじこうこく)がなされた場合に、それを認容するという力業に出れば別ですが)。

 管轄についてはモバイル新館のもばいる 「どの裁判所に訴えるか」でも説明しています。
  

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