◆短くわかる民事裁判◆
第1審裁判所による控訴の却下
控訴は、控訴裁判所宛の控訴状を第1審裁判所に提出して行いますが、「控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第1審裁判所は、決定で控訴を却下しなければならない。」とされています(民事訴訟法第287条第1項)。
一方で、控訴状が控訴状の(必要的)記載事項(民事訴訟法第286条第2項)に違反している場合や控訴提起手数料を納付しない場合の補正命令や控訴状却下命令は、控訴裁判所の裁判長の権限とされています(民事訴訟法第288条)ので、第1審裁判所は、それらの場合について補正命令を出すことやそれらを理由に控訴を却下することはできません。
第1審裁判所「による控訴の却下ができるケースとしては、第1審判決で全部勝訴した当事者が提訴した控訴、控訴期間が経過後に提起された控訴、控訴権を放棄した者が提起した控訴が挙げられています(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」68ページ)。
この他には、訴訟費用の負担の裁判のみに対して提起した控訴(民事訴訟法第282条)が挙げられそうです。
いずれにしても、控訴が不適法であること、その不備を補正することができないことが「明らか」である場合に限られますので、多少でも疑義がある場合は第1審裁判所が控訴を却下することはできず、控訴裁判所の判断に委ねるべきとされます(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」68〜69ページ)。
第1審裁判所による控訴却下決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法第287条第2項)。
口頭弁論を経ないでなされた控訴却下決定(第1審での却下の場合口頭弁論を経てなされることはあり得ません)が確定すると、控訴提起手数料の一部について還付を受けることができます。
控訴提起手数料の還付については、「控訴提起手数料の還付」で説明しています。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
**_****_**