◆短くわかる民事裁判◆
控訴提起手数料の還付
「手数料還付」で第1審での訴え提起手数料について説明しているのと同じように、控訴の場合も第1回口頭弁論期日(法律の規定では「最初にすべき口頭弁論期日」)の終了前に控訴を取り下げた場合(第1回口頭弁論期日の期日にその場で取り下げた場合も含まれます)、控訴提起手数料の一部の還付を受けることができます(民事訴訟費用法第9条第3項第1号)。
控訴審の場合は、第1回口頭弁論期日が最初に行われ、そこで初めて裁判官の顔を見て、その第1回口頭弁論期日で弁論終結ということが多いので、第1回口頭弁論期日終了前の取下をする場合には、担当裁判官と会う前にということになるのが通常になります。ありがちなパターンの、第1回口頭弁論期日の後(弁論終結してということもありますし、弁論は続行でということもありますが)そのまま和解勧告があって、その際に心証開示されて、判決なら附帯控訴を認めることになる(控訴人にとっては第1審判決よりも不利になる)ということで、(相手も控訴期間内に控訴や附帯控訴している場合は取り下げてもムダですが)相手が控訴期間経過後に附帯控訴しているので控訴を取り下げれば附帯控訴もなくなるという場合に、不利に変更される(負けがさらに込む)のを避けるために控訴取下という場合には、すでに第1回口頭弁論期日は終了しているので、控訴手数料の還付は受けられません。
最近はまず行われませんが、かつて一時的に第1回口頭弁論期日前に進行協議期日を行うことが流行ったことがありました。そういう進行協議期日の場合は、「最初にすべき口頭弁論期日」は開かれていないと解されるようです。
口頭弁論を経ない控訴の却下の裁判(控訴状却下命令、控訴却下決定)が確定した場合も、控訴手数料の還付を受けることができます。
還付を受けられる額は、実際に納付した手数料額から、本来納付すべき手数料額の半額と4000円の多い方を差し引いた額です(民事訴訟費用法第9条第3項柱書)。
手数料還付の申立ては手数料を納付した裁判所に対して書面で行い、裁判所が還付決定を行います(民事訴訟費用法第9条第3項)。
還付決定または還付申立て却下決定に対しては、控訴裁判所が地方裁判所の場合は、即時抗告をすることができ、即時抗告期間は決定の告知を受けた日から2週間以内です(民事訴訟費用法第9条第3項、第9条第9項、非訟事件手続法第67条第1項。民事訴訟費用法第9条第9項が民事訴訟法ではなく非訟事件手続法第2編の規定を準用しているため。終局決定以外の裁判だとすると第81条で1週間ですが、2018年度書記官実務研究報告書「民事訴訟等の費用に関する書記官事務の研究」316ページが第67条で2週間としているのでそれに倣いました)。
控訴裁判所が高等裁判所の場合、高等裁判所の決定に対しては抗告許可申立てか特別抗告しかできませんので、それによることになります(不服申立て期間が決定の告知を受けた日から5日間ですので要注意)。それについては「高裁の決定に対する不服申立て:許可抗告・特別抗告」で説明しています。
訴え提起手数料については「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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