(通常の民事裁判手続の場合)
裁判にかかる費用のうち裁判所に納める費用の主なものは、訴状に貼る印紙で、その額は請求額に応じて決まる
裁判を起こすときには裁判所ごとに定めている予納郵券(郵便切手)も納める
鑑定や仮差し押さえなどをしない限り、裁判所に納める費用はそれくらいで済む
現実にかかる裁判費用の多くは弁護士費用
請求額100万円までの部分:10万円毎に1000円(1%、ただし1000円刻み)
請求額100万円から500万円までの部分:20万円毎に1000円(0.5%、ただし1000円刻み)
請求額500万円から1000万円までの部分:50万円毎に2000円(0.4%、ただし2000円刻み)
請求額1000万円から10億円までの部分:100万円毎に3000円(0.3%、ただし3000円刻み)
この上もありますけど庶民には縁がないですね・・・
これを請求額まで積み上げていきます。
上の割合で計算すると割合が変わる境目の100万円の請求は1万円、500万円の請求は3万円、1000万円の請求は5万円になります。
例えば630万円の請求をするとすれば500万円までが3万円であと50万円(2000円)が3回分(最後は端数が30万円ありますが50万円1回分にカウントされます)ですから3万円+2000円×3で3万6000円です。
なお、金銭評価できない請求は160万円とみなします(それだけなら手数料1万3000円)
実は、この「請求額」の計算が意外に難しいことがあります。
解雇事件の場合については「裁判所に納める費用(解雇事件)」を見てください。
労働事件でもう1つ指摘すると、解雇予告手当の請求や残業代請求など(あとは休業手当、有給休暇の賃金)の際に追加で請求する「付加金」については、東京地裁ではこの請求額に含まない(その分の印紙は不要)という扱いをしています。大阪地裁等では逆の扱い(付加金も請求額に含むという扱い)をしていましたが、最高裁は2015年5月19日の決定で付加金は請求額に含まない(その分の印紙は不要)と判断しました。
一般の事件でも、いわゆる付帯請求といって、利息や遅延損害金は、この請求額に含みません。過払い金返還請求の事件でいえば、過払い金の元本が基準となり、過払い利息(法定利息)分はこの請求額に含みません(その分の印紙は不要)。
控訴審、上告審の場合、原審が一部勝訴の場合は上訴で求める請求額と原判決で認められた額の差額を基準にします。
東京地裁の場合、原告1人(複数でも代理人=弁護士が共通の場合は1人と扱います)で被告も1人の場合、6000円分(組み合わせは裁判所の指定があります。裁判所に入っている郵便局や売店であらかじめセットして売っています)、原告・被告が1人増えるごとに2440円追加になります。東京高裁への控訴の場合、控訴人が1人で被控訴人も1人の場合、6000円分、控訴人・被控訴人が1人増えるごとに3000円追加になります(東京高裁の事件で最高裁に上告・上告受理申立をする場合も同じ)。
東京簡裁の場合、原告1人で被告も1人の場合、6000円分、原告・被告が1人増えるごとに2440円追加になります。東京簡裁の事件で東京地裁への控訴の場合、控訴人1人で被控訴人も1人の場合4800円分、控訴人・被控訴人が1人増えるごとに2440円追加になります。
この金額は全国一律ではなくて、地方によって異なります。例えば大阪では、裁判所のサイトで見た限りでは、大阪地裁は原告1人で被告も1人の場合6150円分、原告・被告が1人増えるごとに2440円追加、大阪簡裁は原告1人で被告も1人の場合は6750円分、原告・被告が1人増えるごとに2440円追加のようです(裁判所のサイトでも書いている裁判所と書いていない裁判所があるので全国比較とかはできませんが)。
最近では、この「予納郵券」は現金での納付も可能です。現金の場合、金額が違うことが多く、郵券の場合よりも少し安いことが多いようです(現金の方が高いケースもあるようですが)。
訴え提起の際に、原告が以上のような額の郵券を予納しますが、訴え提起後に郵券が足りなくなると、追加の予納を求められます。訴え提起後に足りなくなるのは、訴状の後も、「送達」を要する書類が何度か出された場合です。「送達」を要する書類(当事者間で直接やりとりせずに裁判所に正本と副本を提出する書類)の代表例としては、訴状の訂正申立書、訴えの一部取り下げ書があります。当事者に代理人(弁護士)が付いていない場合、書類(準備書面等)を直接やりとりすると受け取っているかどうかでトラブルの恐れがあると判断された場合、通常の準備書面等も裁判所経由で送達されることになります。
裁判当事者以外の第三者に文書(通常はその写し)の送付を求める「文書送付嘱託」や官公署や団体に一定の事項の回答を求める(文書の写しの送付も同時に求めることが多い)「調査嘱託」の申立が何件か採用されると、1件あたり1000円程度の郵券を、申し立てた側が予納するように求められます。金額は、その部によって(あるいは書記官によって)少し違うように思えます。
証人尋問を請求するとき、請求する側が予納します。
旅費は実費程度、日当は多くの場合1万円足らずです。
鑑定を請求する場合、請求する側が予納します。ケースバイケースですが、数十万円かかります。
以上で説明したのが、文字通り「裁判所に納める費用」で、これらは、判決で「訴訟費用の負担」が定められたときに、その取り立ての対象となる費用です(詳しくは「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」を見てください)。
以下、厳密には裁判所に納めるのではないですが、弁護士が依頼者の預かり金から支出する実費についても説明します。
証人尋問などをしたあと、証言調書などをコピーします(しなくてもいいですが、準備書面等を書くのに実際上コピーしておかないと困ります)。裁判所は記録を貸し出してはくれませんので、裁判所の指定する特定の業者(司法協会等)に依頼します。独占価格なので1枚あたり何十円か取られます。地方によって違います。水戸は少し前は1枚60円も取られました。JCOの刑事記録を謄写するときビックリしました。
でも普通の裁判なら証人尋問1回分で数千円で収まります。
弁護士が、依頼者からの実費預かり金から支出する実費は、裁判所に納める費用(主として印紙、予納郵券)と記録謄写費用の他には、通常の場合には、裁判所までの交通費、裁判所や相手方、依頼者への文書の郵送費用、事務所でのコピー代等が考えられます。
私は、文書の郵送費用とか事務所でのコピー代等は特にいただいていませんし、東京地裁の場合は交通費もいただいていません。
要するに、通常の裁判では、請求額がよほど大きくなければ、鑑定をしない限り、裁判所に納める費用はそれほどはかかりません。ただ、仮差押え、仮処分などの保全処分(判決で勝ったときに強制執行が確実にできるようにあらかじめ財産を確保したり制限を加えること)をする場合には保証金が必要です。保証金は結構高額になることがあります。
通常は、裁判費用の多くは弁護士費用です。
私の場合の弁護士費用は「弁護士費用(私の場合)」を見てください
裁判では、判決の際負けた側に訴訟費用を負担させる命令が出ますが、ここでいう訴訟費用には弁護士費用は含まれません。
訴訟費用については「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」を見てください。
裁判所に納める費用が支払えない場合については「裁判所に納める費用が払えないとき」を見てください。
なお、自己破産のときの裁判所に納める費用は上の計算方法とは全く違います。
それについては「破産の手続と費用」を見てください
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