◆短くわかる民事裁判◆
補正命令を経ない控訴却下判決
控訴状が必要的記載(民事訴訟法第286条第2項:「控訴状の必要的記載事項」で説明しています)を欠くなどの不備がある場合、控訴提起手数料の納付がない場合、控訴状の送達をすることができない場合(控訴状の送達をするのに必要な費用の予納がない場合を含む)には、控訴裁判所(第1審裁判所が地裁の場合は高裁、第1審裁判所が簡裁の場合は地裁)の裁判長が、相当な期間を定めて控訴人に対して補正命令を発し、控訴人が補正しないときは、控訴状を命令で却下することとされています(民事訴訟法第288条、第137条第1項、第2項、第289条第2項)。
控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第1審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければなりません(民事訴訟法第287条)。
控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、控訴を却下することができます(民事訴訟法第290条)。
以上をまとめると、控訴が不適法でその不備が補正できない性質のものである場合は、それが「明らか」なら第1審裁判所が決定で控訴却下、「明らか」ではないときは控訴裁判所が判決で却下となりますが、補正の余地がある場合は、控訴裁判所の裁判長がまず相当の期間を定めた補正命令を発し、それでも補正されないときに初めて却下ができることになります。
控訴人が、控訴期間内に「訴状」と題する書面を第1審裁判所に提出し、控訴期間経過後に「控訴状」と題する書面を控訴裁判所に提出したという事案で、原裁判所が訴状と題する書面は控訴状とは認めがたいから控訴状と題する書面が控訴裁判所に提出されたときに控訴がなされたと認めるほかないので本件控訴は控訴期間経過後になされた不適法なものとして却下する旨の判決(仙台高裁1955年7月15日判決)をしたのに対し、最高裁1958年5月29日第一小法廷判決は「本件控訴期間内に提出された前示訴状と題する書面は控訴状とは標記していないが、その文面上控訴状と認められないことはなく、ただその方式が民訴三六七条二項所定の事項を完全に記載していないだけのことである。してみれば原裁判所は民訴三七〇条、同二二八条の規定に従い上告人に対し相当の期間を定めて控訴状の欠缺を補正すべき旨命令し、上告人においてこれに従わないときは該訴状を却下し、また、上告人において右命令に基き前示訴状を補正した書面を提出したとき、或は事前に同様の書面を提出したとき(前示控訴状と題する書面はこの書面と認めて妨げないであろう)は本案について審理判決をなすべき筋合であつたにも拘らず、ただ漫然と本件控訴を不適法として却下したのは、到底違法たるを免れない。」として原判決を破棄して差し戻しました。
※最高裁判決が引用している民事訴訟法の条項は旧民事訴訟法のもので現在とは違っています。
民事訴訟法が控訴状の記載事項として要求していることはごく少なく(「控訴状の必要的記載事項」で説明しています)、第1審判決後、控訴期間内に第1審裁判所に提出された書類ですから、当事者が判決に対して不服があって提出したものであることは容易に推測できます。いかに裁判所から見て控訴状の体をなしていないものであったとしても、書き直せば済むものは、不備が補正できないものとは言えないでしょう。
いずれにしても、誤りや不備があっても、補正の余地がある場合は、まずは補正命令を出した上でないと却下できないということです。
誤って、補正命令を経ることなく却下された場合の不服申立ては、却下が判決でなされた場合(控訴裁判所の判決:民事訴訟法第290条)は上告、決定でなされた場合(第1審裁判所による却下決定:民事訴訟法第287条第1項)は即時抗告(民事訴訟法第287条第2項)、控訴裁判所の裁判長の命令でなされた場合(控訴状却下命令:民事訴訟法第288条、第137条第2項)は、控訴裁判所が地裁なら即時抗告(民事訴訟法第288条、第137条第3項)、控訴裁判所が高裁なら許可抗告か特別抗告になります。最後の点は「高裁の決定に対する不服申立て:許可抗告・特別抗告」で説明しています。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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