◆短くわかる民事裁判◆
控訴の提起
控訴は、控訴裁判所宛の控訴状を、判決書(調書判決の場合は判決書に代わる調書)の送達を受けた日から2週間の控訴期間内に、第1審裁判所の民事受付に提出して行います(民事訴訟法第286条第1項、第285条)。
※1998年4月1日施行の民事訴訟法改正前の旧民事訴訟法では、控訴状の提出先は控訴裁判所でも第1審裁判所でもよい(控訴人が選択できる)とされていました。それ以前の裁判例や文献を読むときは注意が必要です。
ファクシミリでの提出はできません(民事訴訟規則第3条第1項第1号:民事訴訟費用法の規定により手数料を納付しなければならない申立てに係る書面になるので。1997年度書記官実務研究報告書「新民事訴訟法における書記官事務の研究(U)9ページ)。
控訴状を提出する際には相手方の数の副本も同時に提出します(民事訴訟規則第179条、第58条第1項)。
第1審の訴訟代理人(弁護士)が控訴をする場合は、通常書式の訴訟委任状には委任事項に「控訴」が明記されているので、控訴の提起は新たな委任状なく行うことができます。そのまま控訴提起後の控訴審での行為(口頭弁論期日の調整とか控訴理由書の作成提出など)ができるかについては、できるという古い判例があります(最高裁1948年12月24日第二小法廷判決は「特別委任を受けた訴訟代理人は、その事件につき、単に上告提起の権限のみならず、相手方の上告に対する応訴、その他上告審における訴訟追行に必要なる一切の訴訟行為をなすべき代理権限を有すること勿論である」と判示しています:ここで「特別委任」というのは、訴訟委任状の委任事項に「控訴」「上告」があるという意味)が、新たに訴訟委任状を提出するのが通例です(東京弁護士会の機関誌での東京高裁書記官の回答:こちらのファイルの5ページ左上参照)。
訴訟委任状については、「控訴審の訴訟委任状」でより詳しく説明しています。
資格証明書(当事者が法人の場合の法人登記簿一部事項証明書等)については、「第1審で提出している場合は、必ずしも控訴審で資格証明書の提出が必要であるとはいえない」との見解もあります(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版65ページ)が、実際には裁判所も提出を求め(東京弁護士会の機関誌での東京高裁書記官の回答:こちらのファイルの5ページ左上参照)、提出するのが通常です。
民事受付では、控訴状の形式と控訴提起手数料納付と郵券の予納等を確認し(控訴提起手数料の額について控訴人と裁判所受付の意見が違う場合は、最終的には控訴裁判所の判断になるので、受付では控訴人主張の印紙のままで担当部に回されます)、地裁では事件記録符号(ワネ)、簡裁では事件記録符号(ハレ)の事件番号を振って、1審判決をした担当部に控訴状を回します。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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