◆短くわかる民事裁判◆
忌避申立て却下決定に対する即時抗告審
裁判官忌避申立てを却下する決定に対する即時抗告(そくじこうこく)は、抗告裁判所(決定が地裁なら高裁)宛の抗告状(こうこくじょう)を原裁判所(地裁の決定ならその地裁)の民事受付に提出して行います。
抗告状の提出を受けた原裁判所の民事受付は、地裁の場合事件記録符号(ソラ)、簡裁の場合(ハソ)の事件番号を振り、原決定(却下決定)をした部に即時抗告状を回します。
原裁判所の担当部は、抗告理由書の提出(即時抗告の日から14日以内:民事訴訟規則第207条)を受けた後、再度の考案をし(民事訴訟法第333条)、即時抗告に理由がないと認めるときは、意見を付して、事件を抗告裁判所に送付します(民事訴訟規則第206条)。この意見は、通常は「本件抗告は、理由がないものと思料する。」程度のものです(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版322ページ掲載の意見書の参考例)。
抗告裁判所に事件が送られると、民事受付で、高裁の場合(ラ)、地裁の場合(ソ)の事件番号を振って、事務分配に従って担当部を決めて記録を回します。
抗告裁判所の担当部は、民事訴訟規則上、抗告状の写しと抗告理由書の写しを相手方に送付することとなっています(民事訴訟規則第207条の2第1項本文、第2項)。但し書きで、「その抗告が不適法であるとき、抗告に理由がないと認めるとき、又は抗告状の写しを送付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。」とされているので、2015年にこの規定ができた後も、実際には送付されないことも多いようですが、忌避申立てについては、相手方がない事件と扱われますので、元々の裁判(基本事件)の相手方には抗告状の写しも抗告理由書の写しも送付されません(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版342ページ)。
抗告裁判所が決定をしたとき、棄却決定の場合は抗告人に決定謄本を送達し、基本事件の相手方には特に通知しない扱いがなされ、認容決定(裁判官忌避を認める決定)の場合、抗告人に対しては決定謄本を送達して告知するとともに基本事件の相手方に対しても裁判官が替わることを知らせるため決定謄本を送付するなどして告知すべきであろうとされています(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版342ページ)。
※認容決定の場合、それに対する不服申立てができない(民事訴訟法第25条第4項)ので、送達が必要というわけでもないと思えますが。
裁判所の運用上、抗告裁判所は決定をした後、忌避申立ての対象となっている裁判官が所属する裁判所(担当部)の書記官に対し、抗告裁判所の裁判の結果を記載した通知書を送っています(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版342~343ページ:343ページに記載例があります。私が見た事件記録でも通知書が綴られていました)。
即時抗告については、「民事裁判手続中の決定に対する即時抗告」等でより詳しく説明しています。
民事裁判の手続全般については「民事裁判の審理」でも説明しています。
民事裁判の登場人物についてはモバイル新館の 「民事裁判の登場人物」でも説明しています。
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