◆短くわかる民事裁判◆
3号再審事由:旧住所への訴状付郵便送達
訴状副本等を被告に特別送達したけれども、不在で保管期間満了で裁判所に戻ってきた場合、裁判所書記官は原告(代理人弁護士)に被告の居住調査を指示し、被告の住所が訴状の記載と別の所の場合は訴状の記載を補正させ、被告が訴状記載の住所地に居住している(が、訴状等を受け取らない)場合は、付郵便送達、被告の所在が不明の場合は公示送達ということになるのがふつうです。
このうち、付郵便送達は、被告が訴状記載の住所に現に居住していることが前提で、送達時に実際には居住していなかった(別の場所に居住していた)場合は、無効となり、判決確定後にそれがわかった場合は、3号再審事由になると解されています。
訴状副本等が2回続けて不在、保管期間満了で裁判所に戻り、原告代理人が2011年11月8日に、同年9月8日付の住民票と同年10月19日に現地調査したところ、電気メーターは回っていなかったが電気・ガス等の閉栓告知書等はなく郵便ポストに郵便物が溢れている状態ではない旨の報告書を添付して付郵便送達の上申書を提出し、同年11月11日に訴状等が付郵便送達され、被告が欠席のまま弁論が終結され原告勝訴の判決が言い渡され、判決正本も付郵便送達されて判決が確定しました。
その後、被告が、同年10月1日付で旧住所から新住所に転居した記載のある住民票を添付して訴状等の送達時(2011年11月11日)時点で被告は訴の宛先住所に居住しておらず付郵便送達は無効であるから3号オ再審事由があるとして再審請求をしました。第1審(大阪地裁2012年5月7日決定)も抗告審(大阪高裁2012年6月25日決定)も3号再審事由を認め、再審を開始する決定をしました。
最高裁2012年11月8日第一小法廷決定は、原告(再審被告)の許可抗告に対し「所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。」として抗告を棄却しました。(判例時報2206号9〜10ページ【23】)。
※住民票上、付郵便送達時点で住所がない(移転済)ということで、付郵便送達無効、再審事由ありという判断はあるべき姿であろうと思います。
※判例時報の記事の中で最高裁調査官の要約のため、例えば当初の保管期間満了日や、付郵便送達された訴状等、判決正本の行方(裁判所に戻ってきたのでしょうけれども)等の事実関係の詳細がわかりませんが、弁護士の目には10月19日現地調査、11月8日上申書というときに原告代理人が取り寄せた被告の住民票が9月8日付というのには不自然なものを感じます。仮にその前に住民票を取っていたとしても保管期間満了返還の知らせがあった後に取り直すと思いますが。そういう疑問も何らかの影響があったのでしょうか。
同様に付郵便送達時には居住していなかったとして再審請求をしたが認められなかったケースも紹介します。
訴状副本等が2回続けて不在、保管期間満了で裁判所に戻り、原告代理人が、被告住所の近隣の者が被告が乗った自動車をたまに見かける、被告の子どもを見かける等の伝聞の記載のある代理人作成の報告書を添付して付郵便送達の上申をし、裁判所書記官が訴状等について付郵便送達を行ったところ、訴状等は裁判所に返送されませんでした。被告欠席のまま弁論が終結され原告勝訴の判決が言い渡され、判決正本も付郵便送達され、判決正本は保管期間満了で裁判所に返ってきました。
判決確定後、被告から3号再審事由があるとして再審請求がなされましたが、第1審(名古屋地裁2003年12月26日決定)も抗告審(名古屋高裁2004年5月21日決定)も、3号再審事由を認めず、第1審は訴え却下、抗告審は抗告棄却しました。
最高裁2004年9月21日第三小法廷決定は、被告の許可抗告に対し、「所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。」として抗告を棄却しました。(判例時報1902号12ページ【20】)
※これも判例時報の記事の中で最高裁調査官による要約のため、例えば被告の住民票の記載はどうなのか、被告側が再審事由をどのように主張立証したのかなどの事実関係がわかりませんが、記載されている事項を見る限りは、付郵便送達した訴状副本等が裁判所に戻らなかった(受け取ったと推定できる)ことと、近隣の者が被告を見ているという情報(伝聞の信頼性がどの程度かという問題はありそうですが)から、被告の主張を信用しなかったという事実認定の問題なのでしょうね。
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