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短くわかる民事裁判◆
訴えの取下と訴訟費用の負担
 裁判が判決や決定で終わるときは、裁判所が訴訟費用の負担についての裁判を行い(民事訴訟法第67条)、訴訟費用の負担についての裁判所の判断は判決書や決定書に書かれます。しかし、原告が訴えを取り下げて裁判が終了した場合は、判決も決定もありません。その場合、訴訟費用はどうなるでしょうか。

 原告が訴えを取り下げた場合、訴訟費用の負担を求める当事者の申立てがあれば、第1審の裁判所が訴訟費用の負担について決定で裁判をすることになります(民事訴訟法第73条第1項)。当事者が申し立てないと、裁判所はこの場合訴訟費用の負担についての判断をしません。また、決定をするのは第1審の裁判所なので、上級審で訴えの取下があったときは、事件記録が1審裁判所に返ってこないと決定ができず、待たされます。
 1審判決後に訴えの取下があった場合、1審判決で1審の訴訟費用の負担についての判断がされていますが、訴えの取下によってその判決もなかったことになる(民事訴訟法第262条第1項)ので、第1審の裁判所が1審分も含めて改めて訴訟費用の負担を決定することになります。1審判決後に訴えの取下でなく控訴の取下があった場合は1審判決はそのまま残り1審の訴訟費用の負担についての判断も確定しますが、控訴審の訴訟費用についての裁判はないので、やはり第1審の裁判所が事件記録が戻ってきてから、控訴審の訴訟費用について決定することになります。後者の場合、控訴裁判所が決定する方が合理的に思えますが、民事訴訟法が第1審裁判所が決定すると定めている(民事訴訟法第73条第1項)ので、第1審裁判所が決定します。

 訴訟費用の負担は敗訴者負担が原則です(民事訴訟法第61条)から、訴え取下で終了した場合は、訴訟費用は原告の負担とするという決定となるのがふつうです。
 被告が支払ってきたので訴外和解して原告が訴えを取り下げるような場合は、実態は原告勝訴ですから原告の負担では決まりが悪いかも知れませんが、訴外和解しているときは精算条項で訴訟費用の請求もできないはずなので、そこが問題になることは考えられません。

 訴えの取下の場合、被告が訴訟費用を支出していることはあまりない(遠方の事件で期日に出席するのに旅費がかさんでいるとか、鑑定でもしたというのでなければ)ので、現実には、訴訟費用についての決定が求められることは少ないと思います。

 訴訟費用の負担についての裁判所の裁判(決定)に対しては即時抗告をすることができます(民事訴訟法第73条第2項、第71条第7項)。

 訴訟費用とその取り立てについては「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
  

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