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短くわかる民事裁判◆
手数料(印紙)を納められないとき:訴訟救助
 裁判を起こすときに、裁判所に納める費用が払えないときには、訴訟救助(そしょうきゅうじょ)という制度があります(民事訴訟法第82条:民事訴訟法の用語では「訴訟上の救助(そしょうじょうのきゅうじょ)」といいます)。
 訴訟救助の対象は、訴訟費用となっていますが、現実的には裁判を起こすときに訴状に貼る印紙代です(印紙の額については「訴え提起手数料:訴状に貼る印紙」で説明しています)。

 訴訟救助の決定があると、訴訟費用の支払(印紙の納付)が裁判終了まで先送りされます(民事訴訟法第83条)。先送りされてどうなるかというと、判決で決まる訴訟費用の負担に応じて決着するということです。全面勝訴で、訴訟費用は(全部)被告の負担とするという判決になれば最終的に支払は不要(印紙は貼らないまま)になります。敗訴して訴訟費用は原告の負担とするとなったら、その時点で印紙代を支払え(印紙を貼れ)ということになります。
 ただし、訴訟費用の負担についても、判決の場合判決が確定してからになりますので、控訴すれば控訴審の判決が出て確定するまで、支払は先送りになります。

 民事裁判では、判決の際に必ず判決書で、訴訟費用の負担について決めています(民事訴訟法第67条)。通常、訴訟費用の負担は負けた方に負担させ、その程度は負けの程度に応じて決められます。原告の全面勝訴なら、「訴訟費用は被告の負担とする」となります。原告の全面敗訴なら「訴訟費用は原告の負担とする」です。一部勝訴の場合、例えば「訴訟費用はこれを3分し、その1を原告、その2を被告の負担とする」というような書き方になります。この例では原告が3分の1、被告が3分の2を負担するわけです。
 訴訟救助の決定がされている場合は、この訴訟費用の負担の決定に応じて支払が請求されます。「訴訟費用は被告の負担とする」なら支払は不要です。「訴訟費用は原告の負担とする」なら全額裁判所から請求されます。一部勝訴で上の例なら、原告に印紙代の3分の1、被告に印紙代の3分の2が、裁判所から請求されます。

 注意を要するのは、和解の場合です。和解をするとき、普通は、「和解費用は各自の負担とする」という条項がつけられます。そうなると、裁判費用はそれぞれが負担するということになって、印紙代は原告の負担ということになりますので、裁判所から原告に印紙代全額の請求が来ます(ただし、資力が回復していないときに直ちに裁判所から支払命令が出るということでもないということを「訴訟救助事件終了時の受救助者への支払命令」で説明しています)。
 通常は、和解成立の時に、書記官から印紙の納付はいつしてもらえるかと聞かれます。そのときに、和解の解決金から払いますといえば、たいていは、そうですかと、被告から解決金が支払われるまで待ってくれます。
 和解の場合で、和解費用は被告の負担とするという和解条項も、理論上は不可能ではありませんが、それで被告がOKすることはないでしょう。

 訴訟救助がなされた事件が終了して、訴訟費用の負担についての判決が確定すると、裁判所から猶予されていた訴訟費用(通常は訴え提起手数料:印紙)の支払いを催促がありますが、それでも支払わないとどうなるでしょうか。裁判所は、最終的には、支払を命じる決定をします。その決定の主文は、原告に対して命じるときは「原告に対し、支払を猶予した訴訟費用○○円(内訳は別紙計算書記載のとおり)を国庫に支払うことを命ずる。」というようなものになるようです。裁判所はこの決定に基づいて強制執行をすることができます。現実に裁判所がどこまでやるのかは、私は払わなかった経験がないのでわかりませんが。

 事件終了時の裁判所の受救助者への取立については「訴訟救助事件終了時の受救助者への支払命令」で説明しています。
 事件終了時の裁判所の相手方への取立命令については「訴訟救助事件終了時の相手方への取立命令」で説明しています。

 訴訟救助については「裁判所に納める費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴訟費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
  

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