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短くわかる民事裁判◆
訴訟救助の取消
 訴訟救助決定があり、訴状が被告に送達されて、裁判が開始した後、訴訟救助の要件を満たしていなかったことが発覚する(実は資力が十分なのにそれを隠し偽って訴訟救助を得た)とか、訴訟救助の要件を満たさなくなった(資力が十分になった)という場合、裁判所はいつでも訴訟救助を取り消すことができます(民事訴訟法第84条)。
 私の経験上は、原告があの手この手で裁判の引き延ばし行為を続けていた事件で、こちら(被告)は裁判所に何も働きかけもしなかったのですが、裁判所が原告の資力に疑いを持ったようで独自に調査をして原告に資力があることを確認し、訴訟救助の取消をしたということが1度ありました。
 そのときの取消決定の主文は、「当裁判所が令和○年○月○日付でした原告に対する訴訟上の救助の決定(令和○年(モ)第○○号)を取り消す。原告に対し、支払いを猶予した訴訟費用○○円(内訳は別紙計算書記載のとおり)の支払を命ずる。」でした。
 この訴訟救助取消決定に対しては即時抗告(そくじこうこく)が可能です(民事訴訟法第86条。抗告期限は決定の送達を受けた日から1週間:民事訴訟法第332条)。原告は即時抗告しましたがその即時抗告も棄却され(主文は「本件抗告を棄却する。抗告費用は抗告人の負担とする。」)、裁判所が訴え提起手数料を14日以内に支払うことを求めた命令を出した上、訴え提起手数料の納付がなかったため、訴え却下の判決を言い渡しました。その主文は「本件訴えを却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」でした。この場合は、被告に訴状が送達され被告側で主張立証をしていた段階でしたので、決定ではなく判決で訴えを却下するということになりました(民事訴訟法第140条。そのあたりについては「訴状に印紙を貼らなかったら:訴え提起手数料不納付」でも説明しています)。
 どちらかというと、被告側では、勝訴して当然の事件で、事件の中身できちんと勝訴判決を取りたかったのですが、裁判所の方で職権で調査して訴えを却下してしまい、残念に思いました(却下だと、原告は再訴可能なので)。

 訴訟救助については「裁判所に納める費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴訟費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
  

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