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短くわかる民事裁判◆
法テラス利用と訴訟救助
 実際問題として、弁護士が訴訟救助の申立をするときは、法テラス(正式な名称は「日本司法支援センター」)を利用した(法テラスが弁護士の着手金を立て替え払いして事件当事者=被援助者が法テラスに月数千円~1万円ずつ分割払いする)事件に限られます。訴え提起手数料は(よほどとんでもない金額の請求をすれば別ですが)高くてもせいぜい数万円程度ですから、ふつうはそれより1桁多い弁護士への着手金が支払えて訴え提起手数料が払えないということはあり得ませんので。

 法テラスの援助決定では、「貼用印紙代は訴訟救助を受けるものとし、訴訟救助が受けられない場合は35万円を限度として、受任者からの申立後に審査の上追加支出する」と記載されているのがふつうです。そのため、法テラス利用の事件では、現実には印紙代くらい特に問題なく払える場合であっても、訴訟救助の申立てをせざるを得ません。
 なお、予納郵券については、法テラスが弁護士に「実費等」名目で支払うもの(事件により2万円~3万5000円。実費といっても精算は予定されておらず、その実質は着手金の一部ですが)でまかなうことが求められています(郵券は6400円を超えて初めて追加費用支出申立てができるとされていますので、提訴時の予納郵券は法テラスに要求できません)ので、これについては訴訟救助申請をする余地はありません(「予納郵券の訴訟救助」で説明しているように、仮に申し立てても救助決定を得るのはかなり困難ですが)。

 法テラス利用の事件で訴訟救助申立てが却下された場合、法テラスに追加費用支出申立書(依頼者からの意見聴取欄があるので、あらかじめ依頼者の承諾を得て作成)と却下決定の写し等を提出すると、印紙代について追加援助決定がなされ、法テラスが弁護士に印紙額を送金してきます(その分法テラスの立替額が増え、分割払いの期間が延びることになります:月々の支払額は増額されません)。法テラスの援助決定に2~3週間、送金までに1か月程度かかりますので、弁護士が立て替えて印紙を納付し、後日その分を法テラスが支払ってくる形になります。
 法テラスの訴え提起手数料の援助の上限は35万円ですが、訴訟の目的の価額(請求額)1億1000万円まではそれでまかなえますので、ふつうは問題ありません。

 訴訟救助が認められた場合(たいていは認められます)訴え提起手数料は支払いを猶予され、裁判が終わったときに支払が決まります。全部勝訴の場合以外は、原告がいくらかは支払う必要があります。和解の場合は、「訴訟費用は各自の負担とする」という条項になるのがふつうですから、原告側で訴え提起手数料全額を裁判所に支払わなければなりません(ただし、資力が回復していないときに直ちに裁判所から支払命令が出るということでもないということを「訴訟救助事件終了時の受救助者への支払命令」で説明しています)。
 そのときに、被告が判決や和解に応じて支払う額を受け取ってそこから支払うことがふつうで、裁判所(書記官)にそう言えばそれで待ってくれます。しかし、その際、法テラスは、法テラスが立て替えるわけでもない(相手から支払われたものの中から裁判所に納める)のに、追加費用支出申立書と訴訟救助決定の写し、和解調書の写しの提出を求めます。また相手方が判決や和解調書に基づいて支払うお金はすべて弁護士が受け取らなければならず、法テラスの決定がある前にそれを依頼者(法テラス被援助者)に渡してはいけないとされています。しかも法テラスへの終結報告は相手方からお金の支払いを受けてからしろと言われます。それらの報告書・申立書を法テラスに送ってから決定が来るまでに速くても2週間遅ければ1か月以上かかります。お金がなくて困っているから法テラスを利用している当事者に、相手が支払ってから1か月以上、法テラスの手続だけのために待たせるのには、いつも心苦しいというか悩ましく思っています。

 訴訟救助については「裁判所に納める費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴訟費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
  

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