庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

短くわかる民事裁判◆
訴状が本物か疑わしいとき
 近年は、さまざまな企業や役所の名をかたる詐欺が横行し、怪しげな郵便物は無視する/間違っても記載されている電話番号に電話しないようにというアドバイスがなされることが多くあります。他方で、「訴状の受取を拒否したら」「訴状の不在連絡票を放置したら」で説明しているように、裁判所からの本物の特別送達を無視したらとんでもないことになりかねません。
 近時は、郵便での詐欺は手間とコストがかかることから、詐欺行為の主流は電子メールやSNSへと移行し、郵便による詐欺はあまり聞かなくなりましたが、油断しているところを狙って裁判所をかたった郵便を送りつける輩がいないとも限りません。警戒を怠らないことは、よいことです。
 では、その上で、裁判所からとされている郵便が来たとき、詐欺に引っかからずに済むようには、どうしたらいいでしょうか。
 送られてきた郵便物を開封して(ネット上の閲覧とは違って、封筒を開封して書類の内容を確認すること自体で、問題が生じることはありません)、同封されている「訴状」を見て、原告と、記載されている事実に思い当たるところがあるのなら、ふつうには実際にその訴えが提起されたと考えてよいでしょう。他方で、原告の名前を見ても、内容を見てもまったく心当たりがないようなら、詐欺の可能性もあります(心当たりがなくても、まったく言いがかりであっても、実際に訴訟が起こされているのなら、対応しなければたいへんなことになるので、ここですぐに無視すると決めてはいけません)。

 その郵便が特別送達で来ているのかとか、封筒や文書の体裁から、本当に裁判所からの文書かを判断することは可能ですが、現在では外見をそれらしく作ることは難しくないので、特に素人の方がそれだけで判断することはリスクを伴います。
 疑わしいので確認したいときに、確実な方法は、1つは(その裁判所の地元の)弁護士に相談する、もう1つは(送られてきた文書に記載されている電話番号ではなく)裁判所に電話して確認することです。
 外見を似せて作ったとしても、弁護士は実際の裁判所からの郵便を日常的に見ていますので、本物かどうかを容易に判断できると思います。裁判所の文書の体裁が全国で特に統一されているわけではないので、特に慎重を期するなら、その裁判所の地元の弁護士に確認してもらうのが確実です。
 弁護士に相談するのでは相談料を取られるとか、それでも絶対とは言えないということなら、やはり裁判所自身に確認するのが一番です。裁判所の電話番号は裁判所のサイトの「各地の裁判所」で該当する裁判所(簡易裁判所の場合は、まず対応する地方裁判所)をクリックして、さらにそれぞれの裁判所のページの「裁判手続きを利用する方へ」の中で「裁判所所在地」や「窓口案内」などのページに記載されています。まずは、その裁判所の代表番号にかけて、送られてきた文書に記載されている担当部と係を告げ、記載されている書記官を呼び出してもらい、その人が出てくれば間違いなく本物です。書記官が電話に出たら、聞きたいことがあれば聞いていいと思いますし、特になければ送られてきた文書に書かれている事件番号を伝えて、期日呼出状に記載されている期日の日時と場所(法廷)を確認しておけばよいと思います(その記載が間違っているとたいへんなので)。
 裁判所の各担当部の電話番号は、実はけっこう調べにくいのが実情です。東京地裁霞ヶ関庁舎の(つまり執行センター=民事第21部と、ビジネスコート=商事部:民事第8部、知財部=民事第29部・40部・46部・47部、倒産部=民事第20部以外の部)各部のダイヤルインは事件受付票に一覧があるのですが(「事件受付票」で説明しているように、近年は提訴時に民事受付で渡してくれません)、一般にわかりやすいところには出されていません。2024年12月27日現在使用されている東京地裁の事件受付票記載のダイヤルイン一覧はこのようになっています。各部のダイヤルインがわからなくても霞ヶ関庁舎の大代表(東京高裁も一緒ですが)は03-3581-5411ですので、そちらにかければ用が足りますが。


 訴状の送達については「裁判所の呼出を無視すると」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴状が届かないとき」でも説明しています。
  

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