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短くわかる民事裁判◆
訴状の提出
 訴えを提起するときは、訴状と訴状の添付書類(訴状とともに提出する書証、書証を提出するときには同時に証拠󠄁説明書、代理人が提訴するときは原告本人が署名押印した訴訟委任状、当事者が法人の場合は法人登記簿現在事項証明書等)の正本(せいほん:裁判所用)と、被告の数の訴状(と訴状とともに提出する書証、証拠説明書)の副本(ふくほん:被告用)を、訴え提起手数料(通常は、訴状にその額の印紙を貼ります)、予納郵券を、裁判所に提出します。
 提出する訴状、証拠説明書の正本、副本には作成者(代理人がつくときは代理人)が記名(きめい:氏名を活字で印刷して。もっとも手書きで署名してもかまいませんが)押印します。なお、裁判所は正本と副本の提出さえ受ければいいですが、裁判所に提出したものと同じものを自分で持っていないと自分が困りますので、当然、自分用の写しも必ず用意して手元に置きます。なお、裁判所に行って正本、副本を提出する際、自分用の写しも持っていって、これに受領印を押してくれと言えば押してくれます。
 被告が複数の場合、副本は被告の数だけ用意して提出します。被告が2人ならそれぞれ2通用意するので、裁判所の正本1通と、被告用の副本2通、自分用の写し1通で、少なくとも4通作っておく必要があります。被告に共通の代理人(弁護士)がつけば、その後は副本は1通でよくなりますが、訴状段階ではそれはわかりませんので、必ず被告の数だけ副本を提出することになります。

 訴状の提出は、管轄の裁判所の民事受付に行います。裁判所の受付に直接持っていって提出することも、郵送することも可能です。
 受付に持っていって提訴すると、形式的な不備があった場合その場で訂正できる(訂正用に作成者の印鑑を持っていくべきです)、その場で訴状の写し等に受領印がもらえる、その場で事件番号と担当部がわかる(それを記載した事件受付票をもらえる)というメリットがあります。ただし、コロナ禍後、裁判所は受付への持参に好意的でなくなり、人員態勢が手薄になったなどの事情で、受付に訴状等を持っていってもその場では事件番号や担当部を決めてくれないとか、事件受付票をくれないことが多くなっています。
 そういう状況では、受付に訴状を持っていくメリットがあまりなくなっており、郵送で提訴しても大差ないという感じです。

 民事受付は、裁判所ごとに名称も違いますので、裁判所のサイトの「各地の裁判所」の「裁判手続を利用する方へ」のページで、窓口案内などを確認しておくべきでしょう。
 小規模の裁判所では民事受付は1つですが、東京地裁などの大規模な裁判所では、事件の種類によって受付が複数あったりします。
 東京地裁の場合は、通常民事事件は霞ヶ関庁舎14階の民事訟廷事務室事件係に提出しますが、会社関係の訴訟(会社設立や合併の無効、株主総会決議取消等)などの商事部(東京地裁民事第8部)担当の事件はビジネス・コート(中目黒庁舎)2階の民事訟廷に提出します。保全事件(仮差押え、仮処分)は一般の事件では霞ヶ関庁舎2階の民事第9部に申立をしますが、労働関係保全処分(賃金債権を保全するために使用者の財産を仮差押えするとか解雇等をされた労働者が使用者に賃金の仮払い等を求めて仮処分を申し立てるなど)と労働審判は霞ヶ関庁舎13階の民事第19部の窓口に申し立てます。なお、破産申立はビジネス・コート(中目黒庁舎)1階の民事第20部、強制執行は民事執行センター(民事第21部:目黒区目黒本町2-26-14)に申し立てます。

 訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴えの提起(民事裁判の始まり」でも説明しています。
  

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