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短くわかる民事裁判◆
訴訟救助に関する決定に対する不服申立
 訴訟救助の申立を認めない(却下する)場合、私が経験したケースでは、書記官から「頭書(あたまがき)の事件について、別添(べってん)のとおり決定されました。不服がない場合には収入印紙○○円の納付をお願いします。」という事務連絡が送られ、主文が「本件申立てを却下する」という決定の謄本(とうほん。書記官が「これは謄本である。」というゴム印を押して記名押印していました)が同封されてきました。
 訴訟救助却下決定に対して、訴訟救助を申し立てた原告は、即時抗告(そくじこうこく)をすることができます(民事訴訟法第86条)。即時抗告をする場合、却下決定を送達された日から1週間(送達を受けた日の翌日から数えて1週間:結局送達を受けた日の翌週の同じ曜日。ただしその期間の末日が土日祝日あるいは12月29日から1月3日の年末年始期間の場合、次の平日まで)以内に、抗告裁判所(決定が地裁なら高裁)宛の抗告状(こうこくじょう)を原裁判所(地裁の決定ならその地裁)の民事受付に提出します。原裁判所の民事受付は、地裁の場合事件記録符号(ソラ)の事件番号を振ります。
 即時抗告は、訴訟救助申立てとは異なり、抗告申立手数料(印紙)が1000円かかり(民事訴訟費用法第3条第1項、別表第1第18項(4))、郵券の予納も求められます。予納郵券は、東京高裁への即時抗告の場合抗告人・被抗告人ともに1名の場合3000円(500円4枚、110円2枚、100円4枚、20円9枚、10円20枚)、当事者1名増加ごとに3000円追加となります。建前としては、この即時抗告費用についても訴訟救助申立てが可能で、訴え提起に際しての訴訟救助申立てとは別に判断されますが、訴え提起に際しての訴訟救助が却下されているケースで抗告申立手数料について訴訟救助が認められる可能性は低いと思います。といって、訴訟救助却下決定を争いながら、抗告申立て手数料は無抵抗で払ってしまうのも支払能力があることを自白しているようなものです。私自身は訴訟救助却下決定を争ったことはない(法テラスが法テラス利用事件では訴訟救助申立をしろというから申し立てているだけで現実には印紙代も払えないわけではないし、却下されたらその印紙代を法テラスが立て替えるのだし、争っている期間は訴状が被告に送達もされずに裁判が長引くだけですから。それに、考えたことなかったですが、訴訟救助却下決定に対して即時抗告したら、法テラスは即時抗告費用も援助してくれるでしょうか。そっちも見込み薄な気がします)のでなんとも言えませんが、訴訟救助却下決定を争うのなら即時抗告費用も訴訟救助申立てをして裁判所から言われたら即時抗告費用は納めるというところでしょうか。
 抗告の期限を確定するため、訴訟救助の却下決定は原告(代理人が付いていれば代理人)に特別送達で送られます。

 抗告理由書(こうこくりゆうしょ)は、抗告をした日(抗告状が裁判所に届いた日)から14日以内(抗告をした日の翌々週の同じ曜日。ただしその期間の末日が土日祝日あるいは12月29日から1月3日の年末年始期間の場合、次の平日まで)に、原裁判所に提出することとされています(民事訴訟規則第207条)。抗告理由書は記録が原裁判所にあるうち(抗告裁判所に行って事件番号がつく前)に提出しますので、地裁の事件であれば(ソラ)番号で書きます。
 上告理由書(じょうこくりゆうしょ)や上告受理申立て理由書(じょうこくじゅりもうしたてりゆうしょ)とは違って、この期限に遅れたら直ちに却下されるということにはなっていません(上告についての規定が民事訴訟法第331条で準用されていないため。控訴理由書について提出期限を守らない場合でも却下されないのと同じ)。実際には抗告に対する決定はかなり遅いこともままあります。しかし、期間経過後は、裁判所が抗告に対する決定を待ってくれる保証はないということになります。

 他方、訴訟救助を認める決定に対しては、議論がありますが、被告が即時抗告できるという扱いがなされています(最高裁2004年7月13日第二小法廷決定)。そのため、その抗告期限を確定する必要があり、訴訟救助決定は、訴状副本とともに被告に特別送達されています。

 即時抗告については、「民事裁判手続中の決定に対する即時抗告」等でより詳しく説明しています。

 訴訟救助については「裁判所に納める費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「訴訟費用が払えないとき(訴訟救助)」でも説明しています。
  

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