このサイトでは、民事裁判のしくみや手続、労働事件、借金の整理 過払い金請求などについて説明しています。
【和解について】
民事裁判では、裁判所から当事者にこの件は話し合いはできそうですかと聞いてきたり、裁判所として和解を勧告しますと言って、和解の協議になることが多いです。民事裁判は紛争の解決を目的とするものですから、判決をしなくても当事者が合意できればそれでいいという考えです。
和解の合意ができれば、裁判所が合意内容を調書にします。和解調書は、判決と同様、それに基づいて強制執行ができます。話し合いが決裂すれば、和解はできず、通常の裁判の手続に戻ります。
《和解勧告》
裁判所が和解勧告をするタイミングはさまざまです。あらゆる段階で和解勧告があり得ます。第1回口頭弁論期日で和解勧告があることもありますし、準備書面のやりとりをしている段階でも時々聞かれます。準備書面が大方出尽くして人証調べをするかどうかという段階で和解勧告がなされることもよくあります。人証調べが終わり、あとは判決というときにもよく和解勧告がなされます。
といっても、和解勧告が必ずあるというわけではなく、裁判所が当事者の様子からこの事件はおよそ和解は無理と考えているときやほぼ一方的な事件の場合など、和解勧告が一度もなく判決に至るということもあります。
《和解期日》
和解の協議は、通常、法廷ではなく、書記官室のエリアの小部屋で行われます。和解が行われる部屋は、裁判所の部屋の通例で窓がない部屋で、テーブルと椅子が置かれた会議室のかなり狭いものをイメージすればいいです。置かれているテーブルと椅子は応接セットの場合もあります。
和解の席では、裁判官も黒い法服ではなく通常の服装(スーツや「クールビズ」スタイル)で登場します。通常は、原告側、被告側の片方だけが部屋に入れられ、相手方のいないところで和解についての意向(和解する気があるか、どういう内容なら和解する気があるか)を聞かれたり、裁判所の和解案を示されたりします。それが交互に行われ、和解がまとまりそうならば続けられ、とてもまとまりそうにないということになれば打ち切られます。
和解案についてその場で決められないときは、持ち帰って検討するということになり、多くは和解期日が続行されます。裁判所は、和解ができそうなら和解で解決しようという考えを持つことが多いので、即答できなければ打ち切りという姿勢はあまりとりません。
和解の協議時に、裁判所が積極的に和解案を出すか、当事者の意向を聞いて調整するにとどめるかは、裁判官の考え方や審理の段階によります。かつては裁判官は当事者に心証を示さないのが美徳とされていましたが、今どきは和解のときには心証を示すことが多いので、弁護士にとっては和解期日は裁判官の心証を把握するチャンスでもあります。人証調べ後の和解で裁判官が和解案を示すときは、判決ならばこうなるということに沿った和解案が示されることが多いようです。
和解の合意ができれば、書記官が呼び入れられて、その場で和解の合意内容が確認され、それに基づいて書記官が和解調書を作成します。
《和解の合意と和解調書》
裁判所で和解する場合、和解の内容は、裁判で求められていた請求内容に関しては、違反した場合に強制執行ができる形の条項にするのが通常です。ただ、内容は話し合いですので、当事者の合意ができれば、強制執行ができない内容も和解条項に入れることができます。その場合は、その部分は紳士協定ということで、自主的に守ってもらいましょうということになります。
和解内容を他言しないという守秘義務(しゅひぎむ)の条項をつけるかどうかも、話し合い次第です。私の経験上は、労働事件では会社側が守秘義務の条項を求めてくることが多いですが、それ以外の事件では割合としては多くはありません。
和解って内容を他人に話しちゃいけないと思ってた。
守秘義務条項がつく和解は、数としては多くないですよ。
裁判所での和解では、当事者が争っていたことに関する和解内容を決めた上で、通常、原告側がそれ以外の請求を放棄すること、この和解条項で定める以外には当事者間に権利・義務が残らないこと(清算条項)、訴訟費用は各自の負担とする(相手方に請求しない)ことが定められます。この裁判で争っていたことは、この和解ですべて解決しましたということの確認です。当事者間で、別の紛争や権利義務関係があるときは、清算条項を作るときに、「本件に関し」という言葉を入れておくことになります。
和解調書は、和解の合意ができたあと早ければその日、遅くとも数日のうちに作成されます。和解の合意のときに書記官から、裁判所に取りに来るか、郵送を希望するかを聞かれ、取りに行くというと調書ができた時点で電話をくれますので裁判所に印鑑を持って取りに行きます。
《裁判外の和解と受諾和解》
裁判の期日外に当事者間で話し合って合意ができた場合、どうすればいいでしょうか。このようなときには、裁判外で合意書を作って和解の内容が実行されたら(和解金が現実に支払われたら)訴えを取り下げるという方法と、合意の内容を裁判上の和解にする(和解調書を作成する)方法があります。
裁判外和解で実行後取り下げというとき、その実行(支払)予定がだいぶ先だと、裁判所が裁判の進行を待っていられないということがあり、この方法は支払予定日が近いときでないととりにくいです。
裁判上の和解にする場合、双方が口頭弁論期日に出席すればその場で和解成立にできます。片方しか出席しない場合は、予め和解条項を作成して、裁判所から欠席する側にFAXで送り、その内容で和解に応じるという書面が提出されていれば、口頭弁論期日に片方しか出席しなくても和解ができます。この手続を「受諾和解(じゅだくわかい)」と呼んでいます。両方欠席の受諾和解はできず、片方は必ず出席しなければなりません。
どういうときに受諾和解をするの?
本来は遠方の場合などですが、消費者金融が事件が多いので欠席できるものは欠席したいというときが多いです。
《簡易裁判所の場合》
簡易裁判所の場合、口頭弁論期日にその場で話し合いの余地はあるかと聞かれて条件次第だと答えると、裁判官の横で待っている司法委員と別室に行って、司法委員が和解の協議の仲介をします。その場で合意ができると、司法委員とともに法廷に戻り、裁判官が和解内容を確認して、その場で和解成立になります。
さらに、金銭請求の事件で被告が訴状の内容に反論しない場合は、裁判所が適当な和解条項を定めて、「和解に代わる決定」をすることができます。裁判関係者の間では「和決(わけつ)」と略されることがあります。この場合、和解に代わる決定が当事者に送られてから2週間以内に異議申立があると、和解に代わる決定は効力を失い、なかったことになりますが、異議がなければその内容で和解が成立したものと扱われます。当事者間で口頭弁論期日前に合意ができて被告が欠席する場合に、原告側で和解条項を準備して和解に代わる決定で裁判上の和解にしてもらうという使い方をします。
裁判になってるのにすぐ和解できるの?
簡易裁判所の事件は中身は争いがなくて支払を減額できるかと支払条件だけが問題という事件が多いんです。
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