◆短くわかる民事裁判◆
準再審の再審申立書の作成
再審の訴状には当事者及び法定代理人、不服の申立に係る判決の表示及びその判決に対して再審を求める旨、不服の理由(再審事由)を記載しなければならず(民事訴訟法第343条)、準再審の申立てには再審の規定(民事訴訟法第338条から第348条)が準用されています(民事訴訟法第349条第2項)。
したがって、準再審の再審申立書には、当事者及び法定代理人、不服の申立に係る決定または命令の表示及びその決定または命令に対して再審を求める旨、不服の理由(再審事由)を記載する必要があります。
当事者は、再審の申立てをする者が「申立人」、その相手方が「相手方」です(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版428ページ)。
※再審の訴えの場合、確定判決の当事者以外の者の原告適格・被告適格が論じられています(「再審の訴状の作成」とそのリンク先のページで説明しています)が、その議論が準再審で通じるかは未知数です(例えば特定承継人の原告適格・被告適格を判例は確定判決の既判力が及ぶことを根拠にしていますが、決定・命令は原則として既判力がありませんので同じに考えられるかどうか…)。
再審の申立ての対象となる決定または命令(不服申立てに係る決定または命令)については、「再審の対象となる判決」で説明している、控訴審が本案判決をした場合に第1審判決に対する再審の訴えができないとする民事訴訟法第338条第3項の規定を考慮する必要があります。ここでも、準再審の場合に具体的にどう考えるべきかに関する判例や学説の議論は見当たりませんが、たぶん、即時抗告が不適法とされた場合以外の即時抗告棄却決定がある場合は原決定は申立ての対象とならず、他方、抗告許可申立ての却下や特別抗告棄却決定があってもそれは関係なく原決定に対する再審申立ては可能と思います。
最高裁1955年7月20日大法廷決定が「一定の事項を終局的に確定する目的でなされる決定及び命令」に対しては準再審の申立てが可能としているので、その概念にあわせて対象は広めに考えられると思います。
その決定または命令に対して再審を求める旨は、裁判所、事件番号、決定・命令の日(決定書等に記載されている日付)で再審の申立ての対象となる決定または命令を特定し、「に対して再審の申立てをする。」と記載するのが通常です。東京高裁が公表している再審申立書の記載例(こちら)では、「上記当事者間の東京高等裁判所令和○年(○)第○○○○号○○○○○○事件につき、同裁判所が令和○年○○月○○日にした決定(令和○年○○月○○日確定)に対して再審の申立てをする。」とされています。
不服申立てに係る決定または命令の表示は、上に記載するその決定または命令に対して再審を求める旨の記載で、裁判所、事件番号、決定または命令の日が記載されているので、既に十分特定されていますが、実務上は、それに加えて「不服申立てに係る決定の表示」、あるいは「不服申立てに係る命令の表示」と題して、再審の申立ての対象となる決定または命令の主文をそのまま全部引き写して記載するのが通例です。
そして、法令上の必要的記載事項ではありませんが、再審の趣旨として、その決定・命令にかかわる通常の申立書に記載する申立ての趣旨、あるいは即時抗告状に記載する抗告の趣旨に当たる、要するに準再審申立人が求める決定・命令の主文を記載します。
これが、事実上、再審開始決定が確定した場合に、確定した決定または命令を見直し、審理する範囲と、準再審の終局決定・命令で命じうる範囲を制限する(民事訴訟法第348条第1項)「不服申立ての限度」を示すことになります。
ここで記載すべき内容は、当初の申立て(がある場合)の申立ての内容、確定した決定または命令がその申立てをどの範囲で認容したのか、対象となる決定または命令が最初のものか抗告審決定等かあるいは再抗告審決定、許可抗告に対する決定、特別抗告に対する決定かなどの組み合わせによりケースバイケースで、説明しきることは不可能です。東京高裁の記載例でも、「原決定を取り消す。」の次の項目の文例がありません。
不服の理由は、再審事由となる具体的な事実を記載するのですが、準再審が認められるかはここにかかっていますので、その事実を認定できるような事情、理由を述べ、それを裏付ける書証も併せて提出する必要があります。
また、再審請求の出訴期間、除斥期間経過後の提訴、再審事由を確定前の上訴で主張した、知りながら主張しなかった、知りながら上訴しなかった(再審の補充性:民事訴訟法第338条第1項但し書き)、4号〜7号再審事由での有罪判決要件(民事訴訟法第338条第2項)を満たしていないという場合は、裁判所は再審事由の有無の審理に入るまでもなく再審の申立てを却下しますので、これらの事情についての主張と証拠提出にも力を入れる必要があります。
出訴期間については「再審期間:知った日から30日の出訴期間」、除斥期間については「再審期間:判決確定から5年の除斥期間」、再審の補充性については「再審請求と控訴・上告対応:再審請求の補充性」、有罪判決要件については「4号〜7号再審事由と有罪判決要件」等で詳しく説明しています。
私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。
再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
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