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短くわかる民事裁判◆
再審の訴状の作成
 「再審の訴状の必要的記載事項」で説明したように、再審の訴状には当事者及び法定代理人不服の申立に係る判決の表示及びその判決に対して再審を求める旨不服の理由(再審事由)を記載しなければなりません(民事訴訟法第343条)。この必要的記載事項に加えて、通常は、訴状の「請求の趣旨」に当たる「再審の趣旨」も記載します。

 当事者は、再審請求をする者が「再審原告」、その相手方が「再審被告」で、通常は、確定判決の敗訴者が再審原告、その相手方(勝訴者)が再審被告になります。
※確定判決の当事者以外の者が再審原告となれるかについては「誰が再審請求をできるか:再審請求の原告適格」で、確定判決の当事者以外の者を再審被告にできるかについては「誰に対し再審請求できるか:再審請求の被告適格」で説明しています。
※当事者の表示方法などは訴状について説明している「当事者の表示」法定代理人については「当事者能力」で説明しています。
 確定判決時から時間が経っていれば住所の移動や法人の代表者の交代があることも考えられますので、調査確認が必要です。法人については法人登記簿現在事項一部(あるいは全部)証明書(資格証明書)を添付します。

 再審請求の対象となる判決(不服申立てに係る判決)については、「再審の対象となる判決」で説明したことを考慮して、検討・選定する必要があります。(再審の対象とできない判決に対して再審請求しても、不適法として却下されるだけです)

 その判決に対して再審を求める旨は、裁判所、事件番号、判決言渡日で再審請求の対象となる判決を特定し、「に対して再審の訴えを提起する。」と記載するのが通常です。東京高裁が公表している再審訴状の記載例(こちら)では、「上記当事者間の東京高等裁判所令和○年(○)第○○○○号○○○○○○請求控訴事件につき、同裁判所が令和○年○○月○○日に言い渡し、令和○年○○月○○日に確定した判決に対して再審の訴えを提起する。」とされています。

 不服申立てに係る判決の表示は、上に記載するその判決に対して再審を求める旨の記載で、裁判所、事件番号、判決言渡日が記載されているので、既に十分特定されていますが、実務上は、それに加えて「不服申立てに係る判決の表示」と題して、再審請求の対象となる判決の主文をそのまま全部引き写して記載するのが通例です。

 そして、法令上の必要的記載事項ではありませんが、再審の趣旨として、訴状の請求の趣旨、あるいは控訴状の控訴の趣旨に当たる、要するに再審原告が求める判決主文を記載します。
 これが、事実上、再審開始決定が確定した場合に、確定判決を見直し、審理する範囲と、再審の判決で言い渡しうる範囲を制限する(民事訴訟法第348条第1項)「不服申立ての限度」を示すことになります。
 ここで記載すべき内容は、訴訟での請求内容、確定判決がその請求をどの範囲で認容したのか、対象となる判決が第1審判決か控訴審判決かあるいは上告審判決かなどの組み合わせによりケースバイケースで、説明しきることは不可能ですが、再審請求の対象が高裁の控訴審判決で控訴棄却か全部認容の場合についての記載については、東京高裁の記載例が参考になります。
 ただしこの東京高裁の記載例は、「不服申立てにかかる判決の表示」の記載例1が再審原告が控訴人、記載例2が再審原告が被控訴人、「再審の趣旨」の記載例1が再審原告が被控訴人、記載例2が再審原告が控訴人ですので、記載例1同士の組み合わせ、記載例2同士の組み合わせはあり得ません。再審原告が控訴人で控訴棄却された確定判決に対して再審請求するときは「不服申立てにかかる判決の表示」の記載例1と「再審の趣旨」の記載例2の組み合わせをベースに事案に応じて修正し、再審原告が被控訴人で控訴認容された確定判決に対して再審請求するときは「不服申立てにかかる判決の表示」の記載例2と「再審の趣旨」の記載例1の組み合わせをベースに事案に応じて修正するという形で使えばいいかと思います。少しわかりにくく錯覚しかねませんので注意しましょう。

 不服の理由は、再審事由となる具体的な事実を記載するのですが、再審請求が認められるかはここにかかっていますので、その事実を認定できるような事情、理由を述べ、それを裏付ける書証も併せて提出する必要があります。
 この不服の理由(再審事由)が具体的に記載されていない場合は、補正命令もなされないままに訴えが却下されることもあります(その例については「再審事由の不記載と訴え却下」で検討・説明しています)し、そうでなくても、ここで裁判官を説得できるような十分な記載がなされなければ再審開始決定が出ることは考えられません。
 また、再審請求の出訴期間、除斥期間経過後の提訴、再審事由を確定前の上訴で主張した、知りながら主張しなかった、知りながら上訴しなかった(再審の補充性:民事訴訟法第338条第1項但し書き)、4号〜7号再審事由での有罪判決要件(民事訴訟法第338条第2項)を満たしていないという場合は、裁判所は再審事由の有無の審理に入るまでもなく再審請求を却下しますので、これらの事情についての主張と証拠提出にも力を入れる必要があります。
 出訴期間については「再審期間:知った日から30日の出訴期間」、除斥期間については「再審期間:判決確定から5年の除斥期間」、再審の補充性については「再審請求と控訴・上告対応:再審請求の補充性」、有罪判決要件については「4号〜7号再審事由と有罪判決要件」等で詳しく説明しています。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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