◆短くわかる民事裁判◆
忌避申立て却下決定に対する不服申立て
裁判官忌避申立てを却下する決定に対しては、即時抗告(そくじこうこく)をすることができます(民事訴訟法第25条第5項)。(裁判官忌避を認める決定に対しては即時抗告はできません:民事訴訟法第25条第4項)。
即時抗告をする場合、忌避申立てに対する決定の告知を受けた日から1週間(決定の告知を受けた日の翌日から数えて1週間:結局送達を受けた日の翌週の同じ曜日。ただしその期間の末日が土日祝日あるいは12月29日から1月3日の年末年始期間の場合、次の平日まで)以内に(民事訴訟法第332条)、抗告裁判所(決定が地裁なら高裁)宛の抗告状(こうこくじょう)を原裁判所(地裁の決定ならその地裁)の民事受付に提出します。原裁判所の民事受付は、地裁の場合事件記録符号(ソラ)、簡裁の場合(ハソ)の事件番号を振ります。
忌避申立てに対する決定は、決定書が送達されるとは限らず、特に法廷で口頭で忌避申立てをし、それが濫用的申立てを判断されて直ちに簡易却下されるような場合は口頭での告知ということもあります。即時抗告期間の開始日については注意が必要です。疑わしいときは早期に裁判所(担当部)の書記官に確認した方がいいでしょう。
即時抗告は、抗告申立手数料(印紙)が1000円かかります。忌避申立て対象の裁判官が複数の場合は、抗告状が1通でも人数×1000円かかります(2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版342ページ)。
申立の際には、申立手数料と別に郵券の予納も必要です。予納郵券は、裁判所によって異なります。詳しくは、「即時抗告の費用」で説明しています。
裁判所が忌避申立てを簡易却下した場合も、それに対する即時抗告は可能です。例えば最高裁は、大阪高裁がした忌避申立て簡易却下決定(大阪高裁2002年11月5日決定)に対する許可抗告を棄却しています(最高裁2003年2月14日第二小法廷決定:判例時報1866号4~5ページ【2】)。簡易却下決定に対して抗告ができないのであれば最高裁は抗告を棄却ではなく却下するはずですので。
判決言渡期日に忌避申立てがなされ、簡易却下して判決が言い渡され、その後に即時抗告をした場合、忌避申立ての対象となる裁判官が当該事件に関与する余地がないので、即時抗告は抗告の利益がないとして不適法却下されます(それについては「即時抗告の利益:いつまで申立て可能か」で説明しています)。
抗告理由書(こうこくりゆうしょ)は、抗告をした日(抗告状が裁判所に届いた日)から14日以内(抗告をした日の翌々週の同じ曜日。ただしその期間の末日が土日祝日あるいは12月29日から1月3日の年末年始期間の場合、次の平日まで)に提出することとされています(民事訴訟規則第207条)。抗告理由書は記録が原裁判所にあるうち(抗告裁判所に行って事件番号がつく前)に提出しますので、地裁の事件であれば(ソラ)番号、簡裁の事件であれば(ハソ)番号で書きます。
上告理由書(じょうこくりゆうしょ)や上告受理申立て理由書(じょうこくじゅりもうしたてりゆうしょ)とは違って、この期限に遅れたら直ちに却下されるということにはなっていません。実際には抗告に対する決定はかなり遅いこともままあります。しかし、期間経過後は、裁判所が抗告に対する決定を待ってくれる保証はないということになります。
即時抗告については、「民事裁判手続中の決定に対する即時抗告」等でより詳しく説明しています。
民事裁判の手続全般については「民事裁判の審理」でも説明しています。
民事裁判の登場人物についてはモバイル新館の 「民事裁判の登場人物」でも説明しています。
**_****_**