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短くわかる民事裁判◆
判決と決定・命令の違い
 民事裁判で裁判所が行う判断には、判決、決定、命令があります(他に審判という言葉が使われるものもあります:労働審判とか家事審判とか)。

 判決は、当事者(原告)が提起した「訴え」そのものに対する判断(結論)です。判決は、原則として、口頭弁論を開いた上で行われ(民事訴訟法第87条)、判決書(はんけつしょ。業界では「はんけつがき」と読むことも多いです)を作成した上で(民事訴訟法第252条)、公開の法廷で言い渡されます(憲法第82条第1項)。
 ただし、訴えが「不適法」として「却下」する場合は、口頭弁論を開かずに判決をすることができます(民事訴訟法第140条。私が実際に経験した例を「訴訟救助の取消」で説明しています)。
 判決に対する不服申立方法は、控訴、上告です。

 決定は、裁判の過程で生じた問題や訴えに付随するようなことがらについての判断で、(判決でなく)決定で行える事項は、民事訴訟法などの法律で個別に定められています。決定は事件やそのことがらについて担当する裁判所(合議事件なら3人が全員で)が行い、その審理のために口頭弁論を開くかどうかはその裁判所の判断(開いても開かなくても自由)によります(民事訴訟法第87条)。告知の方法も自由です(民事訴訟法第119条)。ただし、決定に対する即時抗告(そくじこうこく)が認められているときは、即時抗告期間(決定が告知されてから1週間)を明確にするため、決定が送達(特別送達)されるのがふつうです。
 決定がなされる主なケースとして、訴訟救助申立に対する決定移送申立に対する決定、裁判官忌避申立に対する決定、文書提出命令申立に対する決定などがあります。
 決定に対する不服申立方法は、抗告(こうこく。即時抗告も抗告の1種)です。

 命令は、裁判官が単独で行うもので、民事訴訟法の規定では「裁判長」が行うという規定になっています。合議事件の場合、「裁判所」は3人の裁判官で構成され(一般的な用語の裁判所と区別するために、法律学上は「訴訟法上の裁判所」、業界では「合議体(ごうぎたい)」とか「裁判体(さいばんたい)」という言葉を使うことがあります)、判決や決定はその全員で行わなければならないのですが、命令は、その中の1人の裁判官である裁判長が単独で(1にんで)できるということです。1人かどうかというのは、もともと裁判官1人で担当する大半の事件(単独事件。この1人の裁判官を「単独体(たんどくたい)」と呼ぶこともあります)では、「裁判所」も「裁判体」も1人なので、区別する意味はあまりないのですが。命令でできる事項は民事訴訟法などで個別に定められています。口頭弁論を開かなくてよいこと、告知の方法が自由であることも決定の場合と同じです。
 民事訴訟法での裁判長と裁判所の仕訳については「裁判長と裁判所」でも説明しています。
 合議事件と単独事件については「合議事件と単独事件」で説明しています。
 命令がなされる主なケースとして、訴状の補正命令、訴状却下命令などがあります(その例については「訴状に印紙を貼らなかったら:手数料不納付」で説明しています)。
 命令に対する不服申立方法も、抗告(こうこく。即時抗告も抗告の1種)です。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。 

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