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短くわかる民事裁判◆
5号再審事由:犯罪による自白・訴訟妨害
 「刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。」(民事訴訟法第338条第1項第5号)という5号再審事由では、「刑事上罰すべき他人の行為」によって「自白をするに至った」または「判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられた」ということが必要です。
 「刑事上罰すべき他人の行為」は、通常の想定では、脅迫、暴行、傷害、監禁等ですが、犯罪であれば特に限定されないと解してよいでしょう。訴状副本等の毀棄と判決正本の隠匿で認められた実例があります。
 また、「他人」は本人以外という意味であり、家族も含まれます。
 「自白するに至った。」は、(脅迫等によって)相手方の主張を認め、裁判所がそれを前提に判決をした場合を指します。
 「判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられた」は、他人の犯罪行為によって主張や証拠を提出できず、その主張や証拠が提出されているか否かで判決の結論に影響を及ぼしうる場合である必要があります。ここでは、他人の犯罪行為のために提出ができなかったという因果関係と、その提出できなかった主張や証拠が重要なもので判決の結論に影響するものであるという2点がポイントになります。提出ができなかった原因が他人の犯罪行為であるということが納得できるような事情があれば、その犯罪行為が本人に対してなされたものである必要はなく、近親者等に対してなされたものでもかまいません。

 実際の再審事件で5号再審事由が認められた例を以下のページで紹介しています。
  「5号再審事由:訴状等の毀棄・判決正本の隠匿」
  「5号再審事由:暴力を受け身を隠した者への公示送達」 

 5号再審事由では、「罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。」といういわゆる「有罪判決要件」(民事訴訟法第338条第2項)も必要です。「有罪判決要件」については「4号〜7号再審事由と有罪判決要件」とそのリンク先のページで詳しく説明しています。
 なお、この有罪判決要件のために、他の再審事由で厳しいハードルとなっている再審の補充性(再審事由を上訴で主張した(が退けられた)、知りながら主張しなかった、知りながら上訴しなかった場合は再審の訴えを提起できない:民事訴訟法第338条第1項但し書き)、再審期間(知った日から30日以内の出訴期間)に関しては、偽造または変造の事実に加えて、有罪判決要件が満たされたとき(さらにはその後有罪の可能性を立証する有力な証拠を入手したとき)に「知った」と解されうるため、有利に扱われることがあります。例えば、他人の犯罪行為によって判決に影響を及ぼすべき攻撃防御方法の提出を妨げられたと上訴で主張していても、有罪判決要件は判決確定後に満たされたような場合は、民事訴訟法第338条第1項但し書きによる提訴の制限は働かず、また出訴期間も有罪判決要件が満たされたことを知ってから30日以内になります。それについては、「有罪判決要件と控訴・上告対応」「有罪判決に代わるものと控訴・上告対応」「有罪判決要件と再審期間」「有罪判決に代わるものと再審期間」で説明しています。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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