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短くわかる民事裁判◆
郵券を予納しなかったら:送達費用不納付
 訴えを提起する際(訴状を提出する際)、裁判所が指定する組み合わせと金額の郵券(東京地裁で原告1人被告1人の場合6000円分:詳しくは「予納郵券」で説明しています)を予納することになっていますが、この郵券を予納しなかったら(予納郵券を納付しなかったら:もちろん現金予納もしなかったらということですが)どうなるでしょうか。
 訴え提起手数料を納付しなければ、郵券以前にそちらで訴状却下等になります(「訴状に印紙を貼らなかったら:手数料不納付」で説明しています)。訴え提起手数料は納付して郵券だけ予納しないというケースは現実的には考えにくく、私も経験したことはありません。現実にもしあるとすれば、訴え提起手数料も郵券も訴訟救助を求めたが、訴え提起手数料だけ救助が認められて郵券の救助は認められず、原告が一切予納しなかったというときくらいでしょうか。

 その場合、裁判所側では、訴状送達に必要な費用を特定して期間を定めて原告に納付を命じる補正命令を出し、それでもその費用の予納がないときには、訴状却下をすることができます。訴状が被告に送達される前は、裁判所(裁判長:合議事件でも裁判官3人全員でではなく裁判長が単独で。民事訴訟法の「裁判長」と「裁判所」の仕分けについては、「裁判長と裁判所」で説明しています)が判決ではなく命令で訴状却下をします(民事訴訟法第138条第2項、137条)。

 訴状が被告に送達されたあと、したがって訴状の送達費用は予納されたという前提ですが、その後当事者に対する期日の呼出に必要な費用が予納されないときには、裁判所(ここでは裁判長ではなく、合議事件なら3人の裁判官全員で)がその費用を特定して期間を定めて原告に納付を命じてもその費用の予納がないとき、被告に異議がなければ、裁判所は決定で訴えを却下することができます(民事訴訟法第141条第1項)。
 当事者に代理人(弁護士)がついている場合、実務上は、期日に裁判官から次回期日の告知を受けているとき(この場合呼出不要)以外の期日指定は電話やFAXで知らされた上で弁護士の方で期日請書を提出して処理していますから、期日の呼出のために費用が必要になることはありません。期日の呼出に費用が必要になるのは、本人訴訟で、欠席した当事者に次回期日の呼出状を送達するとか、念のために(安全のために)呼出状を送達しておこうというときくらいかと思いますが。

 訴状却下命令に対しては即時抗告(そくじこうこく)ができます(民事訴訟法第137条第3項)。これについては、「訴状に印紙を貼らなかったら:手数料不納付」で説明しています。
 訴え却下決定に対しても即時抗告ができます(民事訴訟法第141条第2項)。

 訴状却下の場合に時効完成猶予の効力があるかについては、「時効完成猶予と訴状却下」で検討します。

 訴え提起手数料については「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「裁判所に納める費用(民事裁判)」でも説明しています。
  

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