庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆活動報告:原発裁判

 六ヶ所村核燃料サイクル訴訟

Tweet  はてなブックマークに追加 六ヶ所村核燃料サイクル訴訟 庶民の弁護士 伊東良徳

  裁判の進行状況

   再処理工場・高レベル放射性廃棄物貯蔵施設:青森地裁

  再処理工場の危険性についての原告(住民)側の主張を中心に進んでいます。
 再処理工場については、国側が安全審査で使用した資料の提出に抵抗し続けて長期間空転し、住民側の主張に対する反論もなかなかせず、証人尋問にも抵抗を続け、主として国側によって裁判の遅延が図られてきました。国側が再処理工場の危険性や地震・地盤についての主張を進めず、その証人尋問にも抵抗を続けたために臨界問題だけ証人尋問を先行させることになりました。国側はそれについても抵抗を続けましたがようやく期日直前の2006年11月17日付で臨界問題について内藤俶孝証人の申請書を出してきました。2006年11月24日の口頭弁論でこの証人が採用され、2007年3月2日、7月13日の全日法廷2期日をかけて内藤証人の尋問を行いました(あ〜疲れた)。その後また通常の弁論に戻っています。この間東洋大学の渡辺満久先生が発見した六ヶ所断層をはじめとする施設周辺の断層問題を原告側が主張し、国側は安全委員会が行っているバックチェックが終わるまではなにも主張できないという状態が続き、いつまで経っても何も反論しない国側に対する裁判所の督促が続き、2010年9月10日の進行協議ではさすがに国側も安全委員会の審議結果が出ない場合でも六カ所断層などについての原告側の主張に対する反論を次回までに必ず出すと約束していたところ、2010年11月30日付でようやく六ヶ所断層について反論の書面を出してきました。3月4日、原告側が被告の反論に再反論し、その次は海底活断層について原告側で主張する予定でしたが、福島原発事故が起こったことから、2011年6月3日、9月16日、12月2日、2012年3月2日、6月1日と、福島原発事故の実情、特に津波によってではなく地震によって主要機器が破損して大事故に至ったこと、つまりこれまでの耐震安全性の評価に誤りがあったことや「やらせメール」の保安院に安全審査をする資格などないことというような主張を続けました。その後さらに、六ヶ所再処理工場自体の問題としても航空機落下に対して現実的な衝突条件で解析すれば耐えられないとか六ヶ所沖の海底活断層の活動性などの主張をしています。国側は被告が原子力規制委員会に代わりましたが新たな主張は何一つせず(これまでの裁判での主張を見直す姿勢も一切示さず)だんまりを決め込んでいました。2013年6月7日の法廷で、現在再処理工場の指定処分は適法なのか、違法なのか聞いたら、国側は「即答しかねます」と答えました(下に具体的やりとり)。国が適法だと自信を持って言えないのなら、裁判で争わなければいいと思うんですが。2013年9月6日の法廷で、前回は「即答できない」との答えだったが、3か月たったが今はどうかと聞いたら「検討中」だそうです。2014年6月6日の法廷では裁判長が交代し、大飯原発差止訴訟の判決などについて主張しました。規制委員会は、裁判所に主張を促されて、新規制基準の内容を説明する準備書面(六ヶ所再処理工場がそれに適合しているかについては何ら触れない)を細切れに出し続けていました。2020年7月29日に規制委員会は再処理工場の変更許可を行い、再処理工場の安全性に関する主張を先送りする口実はもうなくなりました。それを指摘されて、規制委員会は、2021年6月になって、今後10の論点について順次主張する、その主張に10期日を要するなどと言い出し、さらに引き延ばしを図っています。それに歩調を合わせるように、これまで提訴後28年間関与してこなかった日本原燃が「補助参加」をしてきました。他方、原告側は変更許可処分についての取消訴訟(新訴)を提起し、併合審理されています。
 2024年9月27日の第127回口頭弁論では、原告側は、前回被告原子力規制委員会が提出した航空機落下確率評価基準の趣旨に関する準備書面はまったくのこじつけであり、原子力規制委員会は評価基準に従って三沢対地射爆撃場での訓練飛行回数を反映した評価をすべきだ(その評価をしたら本件許可が基準違反だということになる)という準備書面、被告と日本原燃が否定してきた六ヶ所断層の存在を国の機関である産総研が認めたという準備書面等を陳述しました。被告からは火山噴火に関する準備書面が提出されました。
 次回は2024年12月20日午後2時〜

 再処理工場の裁判での私が担当した主張の一部をこの下(↓)で紹介しています。

 2022年7月2日の冷却機能喪失事故について、オンライン公開学習会を行います:2022年10月20日午後7時〜
  六ヶ所再処理工場供給液槽B冷却機能喪失事故学習会

 近時、私の担当になった航空機墜落対策問題について、講演会で話したことをまとめました。
  聞いてビックリ! 六ヶ所再処理工場の航空機墜落対策

   低レベル放射性廃棄物処分場:最高裁決定で住民側敗訴確定

 2009年7月2日付で最高裁第1小法廷は住民側の上告の棄却と上告不受理の決定をし、住民側の敗訴が確定しました。ウラン濃縮工場の事件に引き続き、全く内容についての判断をしない形式的な三行半の判決でした。
  2審判決についてはこちら
  1審判決についてはこちら

   ウラン濃縮工場:最高裁決定で住民側敗訴確定

 2007年12月21日付で最高裁第2小法廷は住民側の上告の棄却と上告不受理の決定をし、住民側の敗訴が確定しました。航空機墜落に関する安全審査に誤りがあることが明らかになり、また施設周辺の活断層を安全審査で検討もしていない杜撰な安全審査で、高裁判決も住民側を敗訴させる理由の言い訳に苦労していましたが、最高裁は全く内容についての判断をせず適法な上告理由に当たらないというだけの形式的な三行半の判決でした。安全審査の誤りがはっきりしているのにその事実と向き合えない裁判所の姿勢には強い疑問を持ちます。
  2審判決についてはこちら

  私が担当した主張の一部の紹介

   更新弁論意見書 

《2023.9.29の口頭弁論で陳述》

 更新弁論意見書/再処理施設の特徴
 更新弁論意見書/航空機落下評価

   航空機落下確率評価に関する適合性審査の誤り(その2)

《2023.3.24の口頭弁論で陳述》
 原子力規制委員会の航空機落下問題の規制基準とされている航空機落下確率評価基準は、「原子炉施設周辺に存在する訓練空域での訓練飛行の回数が明らかに他の地域より著しく多くなったと判断される場合」にはその実際の状況を考慮して原子炉施設への航空機落下の確率を評価することを求めているのに、日本原燃と原子力規制委員会はこの基準を無視してその評価を行いませんでした。そのことを2022年6月17日の期日に原告ら準備書面(191)で指摘したところ、2022年12月23日の期日に被告原子力規制委員会はそれでいいのだと開き直った反論をしてきました。そこで、評価基準をそのように解釈適用することは誤りであるということに焦点を絞った反論をすることにしました。
 ここでは、落下確率の評価が科学的に合理的かという技術的な議論以前に、原子力規制庁が審査基準を守らなかったということが問題となっています。審査基準に違反して行った適合性審査も変更許可もそのこと自体で違法無効です。
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   安全冷却水系機能喪失事故で露見した重大事故対策の不備

《2022.10.7の口頭弁論で陳述》
 六ヶ所再処理工場では、原発の炉心の燃料を溶かした溶液(高レベル放射性廃液等)を取り扱っています。福島原発事故で広く知られることになったように炉心の燃料は崩壊熱を出し続けますので、冷却し続けなければなりません。福島原発事故直後に政府が各原子力事業者に対して福島原発事故のような重大な事故に対してどの程度の安全裕度があるかの報告を求めたストレステストで、日本原燃が最初に出した報告書の最初に挙げたのが、この高レベル放射性廃液を冷却する安全冷却水系の評価でした。
 2022年7月2日、その再処理工場での重大事故防止の要ともいうべき安全冷却水系が、2系統ともに機能喪失した状態が8時間以上続くという事故がありました。この事故を契機としてわかったこと、安全装置が複数あってもだから安全とは言えないこと、日本原燃の運転管理の実情とその能力などについて論じます。
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   航空機落下確率評価に関する適合性審査の誤り

《2022.6.17の口頭弁論で陳述》
 六ヶ所再処理工場では、重量20tの航空機(F16)が150m/sの速度で衝突した場合に耐えられるという防護設計をしていますが、周辺(南方10km)に存在する三沢対地射爆撃場で年間数万回行われている訓練飛行中にF16がエンジン停止して六ヶ所再処理工場に墜落する場合の計算上6割以上が150m/sを超える速度で衝突することが、科技庁審査の際に用いられた資料で明らかになりました。その点も含めてさまざまな観点から150m/sを基準とする防護設計では現実にはF16の墜落に耐えられず、六ヶ所再処理工場の防護設計はまったく不十分です。
 また原子力規制委員会の航空機落下問題の規制基準とされている航空機落下確率評価基準は、「原子炉施設周辺に存在する訓練空域での訓練飛行の回数が明らかに他の地域より著しく多くなったと判断される場合」にはその実際の状況を考慮して原子炉施設への航空機落下の確率を評価することを求めているのに、日本原燃と原子力規制委員会はこの基準を無視してその評価を行いませんでした。三沢対地射爆撃場での訓練飛行の実際の状況を考慮した評価では六ヶ所再処理工場への航空機落下確率は基準の10−7を超え、追加の(150m/sを超える速度での)防護設計を求めることなく行われた変更許可(再稼働GOサイン)は違法無効です。
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   原子力規制庁の指示による臨界事故対策対象機器削減の誤り

《2021.1.22の口頭弁論で陳述》
 臨界事故が発生したときに臨界を収束させたり発生した放射性物質の放出を抑制するなどの臨界事故拡大防止対策について、事業者の日本原燃が23の機器で臨界事故の可能性があり、拡大防止対策が必要であり実施するというのを、原子力規制庁が対象機器を削減するように指示し、それを受けて日本原燃が臨界事故拡大防止対策の対象を8機器に減少させていたことがわかりました。削減対象には、日本原燃が行った臨界事故評価で拡大防止対策が失敗したときの放射性物質放出量が最大となる(臨界事故想定の代表的機器とされている溶解槽での臨界事故の4倍以上もの放射性物質が放出される)プルトニウム系統の漏洩液受け皿が軒並み含まれています。臨界事故が発生したときの放出放射能量が大きいところほど臨界事故拡大防止対策の対象から外されたのです。その外した理由は、監視カメラを付けて作業員が2時間に1回見ることにしたから臨界事故は起こらないと評価したというのです。
 事業者が対策をすると言っているのをやらなくていいと指示するのが規制当局でしょうか。臨界事故が発生したときの放出量が多いところの臨界事故拡大防止対策(放射性物質放出抑制策)をしなくていい、それも目視確認の工程を1つ増やしたから臨界事故は起こらないと評価したなどというのはあまりにも不合理です。現在の原子力規制は、福島事故前より大きく後退しているのではないでしょうか。
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   航空機落下に対する評価基準の不合理性

《2019.12.6の口頭弁論で陳述》
 平均して10日に1回以上の頻度で、全国の原子力施設のどこかの上空を航空機が飛行しているという事実を、知っていますか? 国は、原子力規制委員会は、原子力施設上空の飛行回避が指導され、周知徹底していると、説明してきました。この説明から、私は、原子力施設上空を航空機が飛行することは稀なことだと信じていました。しかし、現実には10日に1回以上、日本全国の原子力施設のどこかの上空を航空機(その多くはヘリコプターですが)が飛行しているのです。
 六ヶ所村の小中学校付近の民有地への模擬弾落下事故を契機に明らかになったこの事実に基づいて、原子力規制委員会が用いている航空機落下確率に対する評価基準の不合理性について論じます。
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   航空機落下に関する適合性審査及び審査基準の誤り

《2019.9.13の口頭弁論で陳述》
 六ヶ所再処理工場への航空機落下確率は、規制基準とされている評価基準に基づいて計算すると、航空機に対する防護設計が必要な水準になっています。しかし、六ヶ所再処理工場については、30km圏内にある三沢基地に現に配備されているF35(総重量30t)に対する防護設計はなされていません。そうすると、基準に適合しないから不合格となるのが当然ですが、原子力規制委員会は、六ヶ所再処理工場には航空機落下確率の計算方法の特例を認めて、落下確率を低く計算して航空機に対する防護設計を要しないことにしました。
 ここでは、六ヶ所再処理工場が本来は基準上必要な防護設計を満たしておらず操業が許されないこと、原子力規制委員会が原子力施設の稼働・再稼働を認めるためには基準を曲げ、明らかに不合理な基準でも維持するという姿勢を取っており、原子力施設の安全性を判断する資格がないことを論じます。
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   航空機落下確率評価の誤り

《2018.3.9の口頭弁論で主張》
 原子力規制委員会は、航空機落下を「想定される外部人為事象」として設計上考慮する必要があるかについて、今なお原子力安全・保安院時代(2002年)に策定した航空機落下確率評価基準を用いて評価しています。この評価基準では、パイロットの回避操作や原子力施設上空の飛行制限があることを考慮することとされていますが、2018年2月20日の小川原湖へのF16からの燃料タンク投棄の事例を見ても米軍機のエンジントラブル時に回避操作は期待できませんし、2018年1月18日・2月23日の普天間第二小学校上空の飛行の事例を見ても、米軍は飛行制限を守らない上、日本政府が飛行を確認しているのに平然と上空の飛行を否認していて、飛行制限の取り決めがあるから落下確率を低く評価することはできません。そして、航空機落下確率評価基準を正しく適用して六ヶ所再処理工場への軍用機の落下確率を評価すると、現時点で 9.6×10−8となって、基準の10−7までわずか4%の余裕しかありませんし、2019年1月20日までに自衛隊機か米軍機が1回訓練空域外の日本の陸地に墜落すると、10−7を超えることになります。そうなると、航空機落下を「想定される外部人為事象」として設計上考慮していない六ヶ所再処理工場は、規制基準を満たさないことが明白ですので、事業指定は取り消すべきことになりますし、稼働は許されません。
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   六ヶ所再処理工場の耐震脆弱性

《2016.9.2の口頭弁論で主張》
 日本原燃が2012年4月27日に公表したストレステスト報告書では、六ヶ所再処理工場の耐震裕度は、当時の最大加速度450ガルの基準地震動(Ss)に対して1.50〜1.74倍でした。その耐震裕度も通常の評価方法では1.50未満となるものを「ミルシート適用」によってかさ上げしたり、消防ポンプによる冷却コイルへの直接注水やエンジン付き空気コンプレッサーからの圧縮空気供給といった可搬式の対策は常に有効・適切に行われるという想定をして導き出したもので、これらの手法を用いずに評価すれば、耐震裕度は最大加速度450ガルの基準地震動に対してさえ1.1〜1.2程度と考えられます。そして2016年2月19日の適合性審査会合で六ヶ所再処理工場に適用される基準地震動の最大加速度は700ガル(450ガルの1.56倍)に引き上げられましたから、普通に評価する限り、六ヶ所再処理工場はこれに耐えることができないことになります。
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   再処理工場一般共同溝の不適合工事に関する調査嘱託

《2016.6.3の口頭弁論》
 2015年9月以降、六ヶ所再処理工場の一般共同溝で配管サポートを固定する埋込金物の浮き上がり等の不適合工事が発覚し、原告側が2015年12月4日の口頭弁論で、これについて日本原燃に対して不適合工事の具体的内容や原因等の回答を求める調査嘱託を申し立てたところ、2016年3月11日の口頭弁論で被告(原子力規制委員会)から反対意見が提出されていました。これに対して、原告側から反論の主張をしたところ、裁判所は、証拠調べの必要性は否定できない、裁判所として追加の調査までは求めないが、原告らの求める事項のうち現在までに調査済みのものについては調査内容を回答し、調査していないものについては調査していない旨の回答を求めるという趣旨で、原告らの調査嘱託を採用すると決定しました。
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   福島原発事故後の重大事故対策評価の基本的誤り

《2015.9.4の口頭弁論で主張》
 福島原発事故後の原子力規制委員会の規制基準では、常設設備によって自動的に事故が収束できなくても、可搬設備を用いて運転員が積極的に正しく操作することで施設外への放射性物質漏洩を一定の基準(Cs137換算で100TBq)以下にすることができると評価されれば合格することにされています。原子力規制委員会や原発推進派は、世界最高水準などと自画自賛していますが、これはむしろ福島原発事故前の安全審査よりも考え方として後退し規制を緩和するものと考えられます。
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   大飯原発差止訴訟判決と安全審査の基準の合理性

《2014.6.6の口頭弁論で主張》
 2014年5月21日に言い渡された大飯原発3、4号機運転差止訴訟福井地裁判決は、原子力施設周辺住民の生命を守り生活を維持することが根源的な権利であり、原発事故がこの根源的な権利を極めて広範に奪う事態を招くことから、かような事態、言い換えれば福島原発事故のような大規模事故を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが原発の運転差止訴訟の判断対象とされるべきでありかつ運転差止を命じる基準であるとしています。この考え方は、原子力発電技術の持つ危険性のあまりの大きさから、常識的な法律実務家にはごく自然に導かれるべきものです。この考え方からすれば、原子炉施設の事業許可の取消訴訟では、安全審査に用いられた具体的審査基準が、原子力施設の大規模事故が「万が一にも」起こらないようにするために十分なものであるかどうかが問われるべきです。
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   2013.12.6の口頭弁論でのやりとり

原告代理人(伊東):今後の裁判の進行についての被告である原子力規制委員会の上申書についてお聞きしたい。被告の上申書の最後には「被告は、今後、(中略)本件再処理施設に係る変更申請等に対する原子力規制委員会の安全審査の進捗状況も踏まえつつ、原告らの主張に反論するとともに、本件安全審査に不合理な点がないことにつき主張する予定である」と書かれていますが、これから行われる規制委員会の適合性審査で新基準に適合しないという結論になったら、被告はこの裁判でどうするのか、新基準に適合しないと判断した以上は安全審査に不合理な点がないとは主張しないということになるのですか。
被告代理人:仮定の質問には答えられません。
原告代理人(伊東):そういうことは考えたこともないということですか。
被告代理人:上申書の通りです。
 (中略)
原告代理人(伊東):適合性審査はこれからやるわけで、まだ原燃が申請書さえ出していないわけだから、新基準に適合するかどうかの判断はまだしてないですよね。適合すると判断した場合は安全審査に不合理な点はないと主張するというのならわかりますが、どうして適合するかどうかの判断をしていない時点で、「本件安全審査に不合理な点がない」と断定して書けるんですか。
被告代理人:上申書に書いた以上にお答えすることはありません。

   2013.9.6の口頭弁論でのやりとり

原告代理人(伊東):本件再処理工場事業指定処分の法的状態について、改めて被告の見解を伺いたい。第1に本件(再処理)事業指定処分の安全審査に用いられた審査指針、特に立地審査指針については、昨年2月に現職の安全委員長だった斑目さんが公の場で不合理だったと認めています。第2に伊方原発訴訟最高裁判決は、安全審査に用いられた具体的審査基準が不合理であるときは処分は違法という判断基準を示しています。第3に本日現在、新規制基準は定められていません。この3つの事実の下で、現在、本件事業指定処分はいかなる法的状態にあるのか、端的に言えば適法なのか、違法なのかを前回の法廷で聞いたところ、被告は「即答しかねる」と答えました。この3つの条件は昨年2月からあったわけですが、それは置いても、前回の期日から3か月たちました。改めて見解をお聞きしたい。
被告代理人:答えられるかどうかも含め、検討中です。
原告代理人(伊東):3か月も検討しても、なお答えられないのですか。
被告代理人:検討中です。
原告代理人(伊東):要するに、新規制基準ができて、適合性審査がなされるまでは、本件処分を適法とする法的な根拠がない、つまり、今答えると適法だと言えないから、今は答えないということじゃないですか。
被告代理人:検討中としかお答えできません。

   2013.6.7の口頭弁論でのやりとり

 国側は現在、再処理工場の事業指定処分が適法かどうか「即答できない」そうです。「適法だ」と明言できないなら、裁判などやめて出て来なければいいと思うのですが。

 国側が新基準が作成されないと主張ができないことがらがある等の発言をしたことを受けて
原告代理人(伊東):新基準との関係で被告の見解を伺いたい。本件(再処理)事業指定処分の安全審査に用いられた具体的基準については、1年前に書いた書面で指摘したように、現職の安全委員長が瑕疵があった、不合理だったと公の場で認めています。そして現時点で、新基準に基づく安全審査がなされていないのはもちろん、そもそもまだ新基準もできていません。そういう状態で、現在、本件事業指定処分はいかなる法的状態にあるのか、端的に言えば適法なのか、違法なのか、被告の見解を伺いたい。
被告代理人:それは、即答しかねます。
原告代理人(伊東):わからない、ということですか。
被告代理人:即答しかねる、と申し上げた。

   本件再処理工場が破壊される航空機衝突条件について

《2012.11.30の口頭弁論で主張》
 六ヶ所再処理工場の航空機に対する防護設計は、戦闘機が150m毎秒程度の速度で衝突した場合のみを前提としているが、現実にはそれ以上の速度での衝突や旅客機の墜落もあり得ます。そこで、私たちは東芝の格納容器設計グループ長だった後藤政志さんに依頼して、安全審査と同じ解析条件で衝突速度が速くなったり重量が増加した場合に航空機全体の荷重で壁・天井が破壊されないかの解析をしてもらうとともに、安全審査で用いられた計算方法で衝突速度が速くなった場合にエンジンが壁・天井を貫通しないかを計算しました。その結果、衝突速度200m毎秒程度になると壁・天井の破壊、エンジンの貫通ともに起こり得ること、旅客機の墜落の場合衝突速度が150m毎秒程度でも壁・天井の破壊の判定基準に達することがわかりました。そして再処理工場の安全審査では一時は215m毎秒や340m毎秒の衝突を想定することが検討されながらコストやPA(公衆への説明)上の不都合や他の原子力施設への影響などを理由に見送られたという経緯があり、またアメリカでの現実のF16の墜落事故では海面に達したときの速度は垂直方向成分だけで343m毎秒に達していました。そうするむしろ現実的な墜落条件を考えれば、本件再処理工場は航空機墜落に耐えられないということになります。
  詳しくはこちら

   班目発言で明確になった安全審査の不合理性・違法性

《2012.3.2の口頭弁論で主張》
 2012年2月15日の国会事故調査委員会で班目春樹原子力安全委員長が、原子炉立地審査指針の仮想事故について「甘々の評価」「強引な計算」をしてきたことや「敷地周辺には被害が及ぼさないという結果になるように考えられたのが仮想事故だと思わざるを得ない」などと発言したことから、原子炉立地審査指針自体が原子力施設を作るために事故時の放射性物質放出の想定を非現実的なまでに過小評価したもので不合理なものであり、これまでの安全審査で行われてきた仮想事故の評価が「強引な計算」を「甘々の評価」で正当化してきたという看過しがたい過誤のあるものであったことが明らかで、それだけでも伊方原発訴訟最高裁判決の判断基準に照らして、六ヶ所再処理工場の事業指定も、これまで行われてきた他の原子力施設の安全審査も不合理で違法なものであることを主張しています。
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   六ヶ所断層の存在とその活動性

《2011.3.4の口頭弁論で主張》
 再処理工場の敷地のすぐ東側に広く分布している約12万5000年前に形成された本来平らな海成段丘面が約1km幅で撓曲していることから、敷地東側を南北に走る六ヶ所断層が存在し、かつ12万5000年前以降も活動しており、これが原子力施設の耐震設計上考慮すべき活断層であることが明らかであること、これに対する国側の反論が現在の科学的常識に反し、日本原燃が恣意的に作成した不適切な断面図を根拠とするものであることなどから、反論となっていないことを主張しています。
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   再処理工場の臨界事故の危険性(その3)

《2006.5.26の口頭弁論で主張》
 六ヶ所再処理工場の設計に用いられている臨界計算の方法・基準が恣意的に作成されてその信頼性が十分検証されていないことについて、これまでの主張の取りまとめとして総括的に主張しています。
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   再処理工場と高レベル放射性廃棄物貯蔵施設での崩壊熱除去解析の誤り

《2005.3.4の口頭弁論で主張》
 安全審査では貯蔵するガラス固化体(放射能をガラスで閉じこめていますが、発熱し続けていて、冷却がうまくいかないと閉じこめに失敗して放射能が漏れることになります)の中心温度が最高でも約430℃にとどまるということを理由に設計を妥当としていました。ところが日本原燃の解析には初歩的な誤りがあり、その誤りを直すとガラス固化体中心温度は再処理工場の貯蔵建屋では624℃にもなってしまうことが発覚したのです。日本原燃の解析の誤りを見抜けずそのまま認めた安全審査はやはり誤りというほかありません。
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