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6号再審事由:判決の証拠となった文書の偽造等
 「判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。」(民事訴訟法第338条第1項第6号)という6号再審事由では、「判決の証拠となった文書等」が「偽造または変造された」ということが必要です。
 「判決の証拠となった文書」は、判決の事実認定に用いられた文書で、基本的には「書証」として提出された文書であり、その文書による認定があるかないかで判決主文に影響を及ぼすような場合である必要があります。それについては、「6号再審事由と判決の証拠となった文書」で説明しています。
※なお「その他の物件」は印影や検証目的物と解されています。
 偽造は、通常の用語法では作成名義人でない作成権限もない者が他人名義の文書を作成すること、変造は、他人名義の文書を修正等をする権限のない者が勝手に書き換える(改ざんする)ことを指します。要するに、他人名義の文書を勝手に作成したり書き換えることです。
 内容が虚偽の文書を作成することについては、刑事法の業界では通常の偽造(作成名義人を偽ること)を「有形偽造」、作成名義人自身が(したがって作成名義を偽らず、また作成権限のある者が作成したが)内容が虚偽の文書を作成することを「無形偽造」と呼ぶことがあること、公文書については虚偽文書作成、虚偽の申請によって登記簿や戸籍簿に不実の記載をさせる公正証書原本不実記載が罰せられ、医師が公務所に提出する診断書等に虚偽の記載をすることが罰せられるため、これが6号再審事由の「偽造または変造」に含まれるかはグレーゾーンのように思えます。ただし、虚偽の私文書作成については、医師の診断書を除き処罰規定がないことから否定的に解されています。それについては、「虚偽私文書の作成は6号再審事由の偽造となり得るか」で説明しています。
※私が再審の相談を受けた経験上、相手方が提出した訴状や答弁書、準備書面に嘘が書いていると力説し、それを文書の偽造だと主張する人が少なからずいますが、訴状や答弁書、準備書面は「主張」を記載した書面ですから「書証」ではなく、また私文書ですから内容が虚偽であっても6号再審事由の「偽造または変造」には当たり得ません。

 実際の再審事件で6号再審事由が認められた例を以下のページで紹介しています。 
  「6号再審事由認容例:最高裁1972年5月30日第三小法廷判決」
  「6号再審事由認容例:最高裁1994年10月25日第三小法廷判決」
  「6号再審事由認容例:最高裁1963年4月12日第二小法廷判決」

 6号再審事由では、「罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。」といういわゆる「有罪判決要件」(民事訴訟法第338条第2項)も必要です。「有罪判決要件」については「4号〜7号再審事由と有罪判決要件」とそのリンク先のページで詳しく説明しています。
 なお、この有罪判決要件のために、他の再審事由で厳しいハードルとなっている再審の補充性(再審事由を上訴で主張した(が退けられた)、知りながら主張しなかった、知りながら上訴しなかった場合は再審の訴えを提起できない:民事訴訟法第338条第1項但し書き)、再審期間(知った日から30日以内の出訴期間)に関しては、偽造または変造の事実に加えて、有罪判決要件が満たされたとき(さらにはその後有罪の可能性を立証する有力な証拠を入手したとき)に「知った」と解されうるため、有利に扱われることがあります。例えば、偽造または変造だと上訴で主張していても、有罪判決要件は判決確定後に満たされたような場合は、民事訴訟法第338条第1項但し書きによる提訴の制限は働かず、また出訴期間も有罪判決要件が満たされたことを知ってから30日以内になります。それについては、「有罪判決要件と控訴・上告対応」「有罪判決に代わるものと控訴・上告対応」「有罪判決要件と再審期間」「有罪判決に代わるものと再審期間」で説明しています。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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