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短くわかる民事裁判◆
3号再審事由:代理権を欠いたことなど
 「法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。」という民事訴訟法第338条第1項第3号の再審事由は、本人が訴訟を遂行する能力がない(未成年者、被後見者等)場合に正しい代理人(法定代理人:親権者、後見人等)により代理されなかったり、本人が依頼していない者が訴訟代理人として訴訟活動を行ったり、訴訟活動を行うために授権(じゅけん)が必要な場合(後見監督人が選任されている場合の後見人等)にその授権がないままに訴訟活動を行ったような場合、要するに正当な、権限を有する者以外が代理して訴訟活動を行った場合です。
 訴訟無能力者が法定代理人によらずに自ら訴訟活動(弁護士への依頼を含む)を行った場合についても、代理人を欠いているので同じであると解されています。
 そして、当事者が(自分に責任がない事情によって)訴訟に関与する機会を与えられず、訴訟が係属していることを知らないうちに判決がなされたというようなケースについては、権限がない(依頼してもいない)者が勝手に代理して訴訟行為を行った場合と別異に扱う必要はないとして、この3号再審事由に当たるとされることがあります。

 3号再審事由については、「代理権を欠いた」場合は再審期間の制限がありません(民事訴訟法第342条第3項)。
※民事訴訟法第342条第3項の条文上、再審期間の適用が除外されるのは3号再審事由のうち「代理権を欠いたこと」に限定されていますので、「代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いた」場合は出訴期間の制限があることになります。この訴訟行為をするのに必要な授権は、後見監督人が選任されている場合に後見人が被後見人を原告とする第1審の訴訟行為(民法第864条、民事訴訟法第32条第1項)、訴えの取下、和解、請求の放棄、認諾、控訴・上告・上告受理申立ての取下等(民事訴訟法第32条第2項)を行うためには後見監督人の同意を要するということを指しています。ですから、代理人でない者(法定代理人でない親族、法人の代表者でない者、本人や代表者が依頼していない弁護士等)が訴訟行為を行ったとか、訴状副本等が被告に交付されず被告が知らないうちに判決がなされ確定したというような、3号再審事由で問題となる通常のケースは出訴期間の制限を受けません。

 代理権を欠く者が行った行為(無権代理行為)は、訴訟無能力者が訴訟能力を回復した場合の本人、正しく権限を有する代理人(法定代理人、訴訟代理人)が、追認(ついにん)をした場合は遡って効力を生じ(民法第116条)、3号再審事由もなかったことになります。
 「無権代理人がした訴訟行為を追認する場合には、ある審級における手続がすでに終了したのちにおいては、その審級における訴訟行為を一体として不可分的にすべきもの」とされ(最高裁1980年9月26日第二小法廷判決)、再審の場合も前訴の訴訟行為の一部だけを追認することは許されないとされています(最高裁1995年11月9日第一小法廷判決)。
 このことは、3号再審事由による再審請求をするときに再審原告側で確定判決の効力を一部(自分に有利な部分)残したいということができないという問題、再審被告側が代理権を欠いていた場合にはいつでも追認して3号再審事由を消滅させられるのだから相手方(再審被告)側が代理権を欠いていたことを3号再審事由として主張できるかという問題に関連します。
 相手方(再審被告)側が代理権を欠いたという主張については「3号再審事由:相手方の代理権の欠如の主張」で説明しています。

 訴訟能力を各当事者に法定代理人がいない場合や法定代理人でない者が訴訟行為(弁護士への依頼を含む)を行った場合について、「3号再審事由:訴訟能力を欠く被告の代理人不在」「3号再審事由:訴訟能力を欠く原告の法定代理人でない者による訴訟行為」で説明しています。
 依頼していない訴訟代理人が訴訟行為を行った場合について、「3号再審事由:代表者の訴訟委任状の偽造」で説明しています。

 訴状副本等が被告の手に渡されなかったために訴訟手続に関与する機会を与えられず訴訟継続を知らないうちに判決がされたという場合(と主張する再審の訴えがなされた場合)について、ケースに分けて次の各ページで説明・紹介しています。
  「3号再審事由:受送達能力のない子への訴状送達」
  「3号再審事由:利害対立のある同居人への訴状送達」
  「3号再審事由:同居夫婦間の離婚訴状の子への送達」
  「3号再審事由:従業員でない者への訴状送達」
  「3号再審事由:旧住所への訴状付郵便送達」
  「3号再審事由:不実の公示送達」
 被告に対する訴状副本等の送達は(法的には)有効だが3号再審事由はあるとされた場合に、再審の補充性(再審事由を知りながら上訴しなかった場合は再審の訴えを提起できない:民事訴訟法第338条第1項但し書き)との関係で、送達が有効であることから送達(同居人への「補充送達(ほじゅうそうたつ)」)時に再審事由を知ったものと扱われるまたは推定されるか否かについて、「3号再審事由と控訴・上告対応」で説明しています。

 その他に3号再審事由があると解すべきか問題となった例について、次の各ページで説明・紹介しています。
  「3号再審事由:新株発行無効認容判決」
  「3号再審事由:代表者の背任的訴訟活動」

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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