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短くわかる民事裁判◆
準再審
 一定の事項を確定する目的でなされる終局的な決定または命令が確定した(通常の不服申立てができなくなった)後でも、再審事由(民事訴訟法第338条)がある場合に、確定判決に対する再審に準じて、確定した決定や命令を取り消すことができます。これを準再審(じゅんさいしん)と呼んでいます(「再審抗告(さいしんこうこく)」と呼ばれることもあります)。
 不服申立ての対象が判決ではなく決定・命令であり、手続はすべて不服申立ての対象となる決定・命令の手続によるので(開始決定後も)判決手続がない(したがって不服申立ても控訴・上告ではない)こと、訴えの方式ではないこと、申立手数料額等は再審の訴え(再審請求)と異なりますが、それ以外は再審の訴えと同様です。
 したがって、再審事由(民事訴訟法第338条第1項各号)、再審の補充性(上訴で主張した(が退けられた)、知りながら主張しなかった、知りながら上訴しなかったときは提起できない:民事訴訟法第338条第1項但し書き)、4号〜7号再審事由の有罪判決要件(民事訴訟法第338条第2項)、再審期間(再審事由を知った日から30日の出訴期間、判決確定から5年の除斥期間:民事訴訟法第342条)等の再審の要件はすべて準再審申立てにも必要です。これらについては再審についての「再審事由」「再審請求と控訴・上告対応:再審の補充性」「4号〜7号再審事由と有罪判決要件」「再審期間:知った日から30日の出訴期間」「再審期間:判決確定から5年の除斥期間」などのページとそのリンク先のページで説明しています。
※ただし、これらのページの判例や議論はすべて確定判決に対する再審を前提にしていて、準再審は念頭に置いていません。対象が判決でなく決定・命令であることから来る問題は判例や学説でもきちんと詰められていません。例えば再審の補充性で問題となる上訴の範囲に、即時抗告が含まれることはたぶん間違いなく、他方で許可抗告特別抗告は含まれないと思います(したがって再審事由を知りながら許可抗告・特別抗告で主張しなくても、また抗告許可申立て・特別抗告をしなくても準再審申立てはできると思います)が、こういうことに触れた判例・学説を見ません。

 民事訴訟法第349条第1項は「即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては、再審の申立てをすることができる。」と規定していますが、最高裁1955年7月20日大法廷決定は、「民訴429条の法文を一読すれば、恰も『即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令ヵ確定シタル場合』に限り再審の申立を許したかの如くに見える。しかし、この規定の法意は広く一般に、一定の事項を終局的に確定する目的でなされる決定及び命令が確定した場合、それらの裁判につき再審事由の存するとき、これが救済方法として確定判決の場合に準じ決定で裁判をなし得る簡易な再審手続を認めたものと解するのを相当とする。」として、即時抗告の申立てができない決定または命令であっても「一定の事項を終局的に確定する目的でなされる決定または命令が確定した場合には準再審の申立てができると判示しました。
※最高裁はそれ以前は、最高裁判所がなした上告棄却の判決に対する異議却下決定に対してなされた特別抗告につき最高裁判所のなした却下決定(最高裁1954年3月24日第二小法廷決定)、不動産競落許可決定に対する抗告棄却決定につきなされた特別抗告を却下する決定(最高裁1953年1月21日第二小法廷決定)、人身保護請求却下決定に対する特別抗告事件につきなした決定(最高裁1952年10月10日第二小法廷判決)に対する準再審の申立てを、いずれも即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定ではないとして、不適法却下していましたが、この大法廷決定で考えを変えました。それなのに現行民事訴訟法(1998年1月1日施行)への改正時に条文を改めないのもなんだかなぁと思いますが。

 準再審の再審申立書の作成については「準再審の再審申立書の作成」で説明しています。
 準再審の申立手数料と予納郵券については「準再審の申立手数料と予納郵券」で説明しています。
 準再審の再審の申立てについては「準再審の再審の申立て」で説明しています。
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 担当部での審理については「準再審の申立てに対する審理」で説明しています。
 準再審の申立に対する決定に対する不服申立てについては、「準再審申立てに対する決定に対する不服申立て」で説明しています。


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 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
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