事件依頼:訴えられたとき

 被告側(訴えられた側)で事件を依頼する場合の流れを、現実に事件を依頼する場合の具体的なイメージを持っていただけるように、相談から事件依頼までの流れ、その際に考慮することになる弁護士費用(これは「弁護士費用」のページで説明していますが、念のためここでも説明します)、依頼してから訴状に対する反論の準備・提出までの流れ、その後の流れに分けて少し詳しく説明します。

 私が最も得意とする解雇・雇止め事件(労働事件)や過払い金請求事件では、ふつうの裁判の場合と違う点が多いので、別に「事件依頼:解雇・雇止め」「事件依頼:過払い金請求」のページで説明します。

相談から事件依頼まで

 法律相談では、現実に生じている(あるいは今後予想される)紛争について、事実関係を、相談者の方の説明やお持ちいただいた資料(書類等)によって確認し、相談者の方の希望(どのような解決を望んでいるか)を聞いて、法的にはどのようなことが可能か、適切か、法的な手段をとった場合の見通しなどを判断します。
 被告の場合、すでに裁判が起こされて、相談をすることになるわけですので、起こされた裁判の内容を、原告側が提出した訴状と証拠書類(甲号証)と、相談者の説明、相談者(被告)側で持っている相談者の言い分を裏付ける資料を検討し、相談者(被告)がその裁判をどのような結果で終わらせたいのかを聞いて、どのような法的対応が可能なのか、適切なのか、また裁判でそのように対応した場合の見通しを判断することになります。

 法律相談では、その事件に関係がある資料をできる限り全部持ってきていただくことが重要です。特に、被告の場合、すでに裁判を起こされているのですから、原告が裁判所に提出した訴状と証拠書類(その一式が被告のところに送られています。ふつうは、裁判所から訴状と証拠書類、期日呼出状、答弁書催告状が送られてきて、裁判を起こされたことを知り、驚いて弁護士に相談することになります)は必ず持ってきてください。それさえ持ってこないのでは、弁護士は、相談のしようもありません。
 そして、それだけでなく、相談者(被告)自身が持っている事件に関係のある資料、特に相談者の言い分を裏付ける資料も持ってきていただくことが重要です。裁判を起こされた場合、法律相談は、実質的には、被告側にどういう言い分があるのかを検討し、それで裁判官を説得できるかどうかの見通しを判断し、さらに言えば、裁判官をどうやって説得するのがいいかを考え出す場となります。相談者の言うことをそのままそれが全部正しいと仮定すれば、というような判断では意味がありません。相談者の主張する事実を第三者である裁判官がどこまで認めてくれそうかということがポイントになります。書類は今日持ってきていないがこういう内容だと言われても、同じ書類を見ても素人と法律実務家の間では着目点が違うことが多々あり、相談者が言っているところはそのとおりに書かれていても、別の記載があるために全体としてはまったく法的な意味が違うということはよくあります。
 被告側では、時折、裁判では原告側が立証しなければならないから被告側では具体的な事実を主張する必要がないとか証拠を出す必要はないなどと考えている人もいます。結果的にそういう主張が通ることもまったくないとはいいませんが、たいていの場合法律論(立証責任論(りっしょうせきにんろん):裁判でどの事実についてどちら側が立証しなければ不利に扱われるか)としても間違っています(あらゆることについて原告側に立証責任があるわけではありませんし、「立証責任」は裁判の最後の判決のときに事実がどちらかわからない状態ならどうするかということで、裁判の過程で証拠を出さなくていいという議論ではありません)し、通常はそういう態度をとると実際には被告に非があり被告自身それがわかっている(事実は原告側のいうとおりなのだ)という印象を与え、裁判の展開上不利になり、裁判実務上愚策です。
 法律相談の場では、相談者が一方的に説明するのではなく、弁護士側で次々と質問をしていくことになることが多いです。それは原告側の主張と提出されている証拠、相談者の説明からして、弁護士としては聞いておきたい、気になる点だから聞いているわけで、これに素直に答えていただかないと、法律相談としてもうまくいきませんし、ましてや裁判を進めていくというのに、弁護士の質問に答えることを嫌がるようでは先が思いやられてしまいます。
 法律相談や打ち合わせで、弁護士は相談者・依頼者の主張する事実の裏付けを求めて、こういう事実はないか、こういう書類はないかと聞くことが多くあります。それは相談者・依頼者の主張を裁判官に説得するのに、よりよい材料がないかと探っているわけです。事実関係は当事者である相談者・依頼者が知っている(弁護士・裁判官は最初から知っていることはあり得ない)わけですし、証拠も多くは当事者の手元にあるか、その近くで埋もれているものです。相談者・依頼者側で、弁護士の質問等をきっかけに探してみるとか、言われたものそのものはなくてもこういうものならある(あるかも知れない)というように話を進めてもらえると、さらに資料の探索・発見が進む可能性があります。そういう相談・打ち合わせは、創造的な場になります。弁護士と相談者・依頼者が共同して前進を試みる場となるわけです。これに対して、弁護士が聞いても、考える素振りもなく探して見もしないで「そんなものありません」(そんなものがあったら苦労はしませんとか)というだけで止まってしまうと発展はありません。
 被告側(訴えられた側)の場合、本人の考えでは勝ち目がないと思っていることも少なくありません。そういうときに、弁護士からの事実関係についての質問や裏付け資料に関する質問に対して投げやりな答をする場合がままあります。しかし、一見勝ち目がないように見える事件でも、意外なところで勝てることもあります。その場合でも、法的な理屈だけで勝てるということはあまりなく、やはり事実とその裏付けが重要です。弁護士としては、何か勝てる道はないかと探っているのですから、依頼者側でもできる限り真剣に考えて対応してほしいものです(そうでないと、弁護士に相談する意味がありません)。

 法律相談や打ち合わせの際に、特に気をつけていただきたいのは、弁護士に決して嘘を言わない、不利な事実も隠し立てしないことです。
 弁護士は、依頼者から説明を受けた事実、見せられた資料から読み取れる事実を前提として、ふつうは、最大限依頼者に有利になるように主張を組み立てます。その前提事実が嘘だとわかると、主張全体が崩れてしまいかねません。依頼者に有利な事実が本当はないとわかっていたら、依頼者に不利な事実が本当はあるとわかっていたら、弁護士はそれに応じた主張を組み立てます。不利な事実を最初から主張しないにしても後でそれが出てきたときに対応できるような主張にしておきます。依頼者に嘘の説明をされたり、(重要な)不利な事実を隠されると、そういう対応ができません。後でわかっても何とかリカバーできることもありますが、まったくお手上げになることもあります。
 また、そういう弁護士を騙そうとするような依頼者とその後どうやって信頼関係を保つのかという問題もあります。弁護士と依頼者の間には信頼関係がとても重要です。弁護士は、基本的に自分の依頼者を信じ、依頼者のために少しでも有利になるように訴訟活動を進めているのです。私も、委任契約書には、依頼者の虚偽の申告等によって信頼関係が破壊されるに至った場合は辞任することがある(あと、依頼者に連絡ができなくなったり連絡しても応答がない状態が続くときも)ことを明記しています。

 そうやって事実関係と裏付け資料を確認して、相談者の希望を考慮して、事件についての見通しと方針を説明し、弁護士費用を含めてかかる費用などについて説明した上で、相談者が納得し、依頼したいということになれば、基本的には、事件を受任することになります。
 私は、初回の相談でその場で受任するということはあまりしていません(別に説明するように、過払い金請求のような場合は、初回の相談で受任するのがふつうですが)。1つには、初回の相談では、相談者の説明や資料が十分ではなくもう一度来てもらった方がいいということが少なくないですし、もう1つには、訴訟という重要なことを依頼するわけですし、事件受任となると弁護士費用も相当程度いただくことになるので、「勢い」で進めるのではなく、一度持ち帰って冷静に検討して決めていただきたいと考えているからです。
 相談料は法テラス利用の場合でなければ有料ですから、持ち帰ると相談料の支払いが増えるとお考えの方もいます。しかし、裁判という多くの人にとってはその後の人生に相当に影響するような大事なことを依頼する、そのために相談料とは比較にならない多額の弁護士費用を払うことになるときに、わずかな相談料を払うかどうかを優先してことを決める(相談が無料であることを優先して弁護士を選ぶというのも同じことだと思います)という姿勢自体、すでに冷静さを欠いているのではないかと、私は思います。重要なことは、落ち着いて慎重に考えて決めていただきたい。私は、そう思うので、事件受任については、いったん持ち帰っていただくことを原則としているのです。被告の場合、裁判所から送られてきた答弁書催告状(とうべんしょさいこくじょう)記載の期日との関係で、早く依頼の手続を済ませないとと焦っている場合が少なくないですが、それについては後で「依頼から訴状に対する反論の提出まで」で説明します。

 なお、私は、相談の結果、勝てる見通しがほとんどないものについては、はっきりとそうお伝えしています。それでも弁護士費用等をかけてもやりたいということであれば、それを前提として受任することもありますが、あまりにも無理な主張の場合はお断りすることがあります。被告側では、まったく言い分がない(本当に言い分がないかは、もちろん、慎重に検討する必要がありますが)のに、ただできる限り裁判を引き延ばしてくれといわれることもありますが、そういう依頼はお断りしています。
 また、私は、いくら弁護士費用を払うと言われても、弱い者いじめに加担したくないので、基本的に企業と個人の間の裁判で企業側の依頼は受けていません。実質的に弱い者いじめや嫌がらせのための裁判と判断できるときは受けません。

弁護士費用

 一般民事事件、つまりふつうの民事事件、私の場合は簡単に言えば、解雇・雇止め事件と過払い金請求事件を除く民事裁判については、弁護士費用は、次の基準でいただいています。

着手金:請求されている額が1000万円未満の標準的な訴訟は原則として30万円+消費税
    請求されている額が1000万円以上か、通常よりも手間がかかる訴訟は原則として50万円+消費税
報酬金:お金や金額を評価できるものが問題となる事件では結果的に得られた利益の10%+消費税
   (不動産などの財産は時価で評価し、所有権はその価格、利用する権利はその2分の1を基準とします)
    お金で評価できないことが問題となる事件では、それが得られた場合は着手金と同じ額

 大半の弁護士は、着手金は請求されている額に対して300万円までは8%+消費税、300万円を超えて3000万円までは5%+消費税、報酬金は請求された額から減額された(払わずに済んだ)額などの得られた利益に対して300万円までは16%+消費税、300万円を超えて3000万円までは10%+消費税という基準を示しています。それは、2004年に公正取引委員会から競争制限だと指摘されて廃止されたかつての弁護士会の報酬基準をそのまま使っているためです。
 私は、着手金は、裁判手続を行う手間賃と位置づけています。裁判をする以上、請求されている額がどれほど少なくても一定の手間がかかりますし、請求されている額が多額になっても裁判の手間(労力)が請求額に比例して増えるわけではありません。もっとも、請求されている額が多額になると双方とも真剣度が違ってくるので、少額の場合より手間がかかるのがふつうではあります。そこで、手間の程度がそれほどではないものとふつうよりも手間がかかるものの2段階の定額としています。報酬金は、ごくシンプルに成功報酬として、得られた利益に対して定率でいただくことにしています。得られた利益が少額のときに高い率でいただくというのは、うまくいかなかったときに高い報酬を取るということになりアンバランスだと思っています(むしろふつうよりもよい成果を得られた場合にこそ高い率でいただく方が合理的だと思っています。解雇・雇止め事件については、そういう考えを採用しています)。
 弁護士費用の金額の高い安いを比較すると、弁護士会の昔の報酬基準を用いている多くの弁護士と比べると、着手金は、請求されている額が420万円未満の場合、弁護士会の昔の報酬基準の方が安くなります(もっとも、着手金は請求額の8%+消費税と言っている弁護士が、たとえば請求されている額30万円の裁判を2万4000円+消費税で実際に受けてくれるかは疑問ですが)。そして請求されている額が820万円を超えると私の基準の方が安くなります(その間は、私の場合2段階のどちらに当たるかで変わってきます)。報酬金については、基本的に私の基準の方が安くなります(得られた利益が300万円以上なら常に18万円+消費税分安くなります。得られた利益が3000万円を超えるとまた変わってきますが、私の依頼者になるような個人が関わる事件でそういうことは現実的には、あまりないと思います)。
 ただ弁護士費用を比較する場合、忘れてはいけないこと(しかし見落としがちなこと)は、それは同じ結果を出せた場合の比較だということです。弁護士費用がより多額であっても、それがとんでもなく多額ということでなければ、ふつうはより高い結果が出せればその方が手元に残る利益(金額)は多くなります。そこを考えずに弁護士費用の比較をしても現実的ではないと思います。
 弁護士費用は、事件を依頼するかどうかの判断で重要なポイントだとは思いますが、弁護士費用の基準が安くても結果を出せなければ、現実的には意味がありません。そのタイプの事件での経験と能力の方を重視した方がいいと、私は思います。

 収入が少なく、資産もなく、法テラスの援助基準を満たす場合(法テラスの援助基準は配偶者がいる場合は配偶者、つまり妻、夫の収入・預金額等も合算することに注意してください)は、法テラスを利用して、法テラスの基準で弁護士費用を定め、法テラスが立て替え払いして、法テラスに分割払いすることができます。その場合の基準等については、「法テラス利用」のページで説明しています。法テラスの援助基準を満たさない場合、つまりそこそこ(以上に)収入や預金がある場合は、以上の基準で弁護士費用を支払っていただいています。

 民事裁判には、弁護士費用以外に裁判所に納める費用などもかかります。それについては、「民事裁判の話」の「民事裁判の費用」のページで説明しています。

依頼から訴状に対する反論の提出まで

 弁護士が事件の依頼を受ける際には、まず委任契約書(報酬契約書)を作成します。この契約書で、依頼を受けた事件の範囲を特定し、弁護士費用を定めます。その際、近年は、弁護士会が本人確認についてとてもうるさいので、可能な限り写真付きの身分証明書(運転免許証、パスポート等)を持ってきてください。契約書作成のため、印鑑も必要です(同時に訴訟委任状もいただくことになりますので、印鑑は堅いもの、押しても歪まないものをお持ちください)。
 多くの場合、訴訟委任状もその時にいただきます。
 着手金は、予め用意していただいて、その場でお支払いいただくことが多いですが、後日振込でもかまいません(その場合、支払日は報酬契約書で定めます)。
 裁判所に納める費用等の実費については、概算でお預かりし、裁判が終わったところで精算します。被告の場合は、訴える際の印紙代や予納郵券はありませんので、実費は交通費や記録謄写費用くらいです。遠方の事件でなければ、特に最初に預かる必要がないということもあります。実費は、予めお預かりする場合は、受任契約のときにお預かりするか、別途お持ちいただくことになります。

 被告側の場合、まずはいただいた訴訟委任状を担当部に提出します。
 被告側には、訴状とともに答弁書催告状が送られてきていて、それには答弁書の提出期限が書かれています。たいていは、第1回口頭弁論期日(こうとうべんろんきじつ)の1週間前の日が書かれています。そのため、被告となった依頼者は、ふつうその日までに弁護士に依頼した上で訴状に対する反論を提出しなければならないと思い、焦っています。しかし、まず第1回口頭弁論期日は、裁判所と原告側(原告代理人の弁護士)の都合だけで決めていますので、被告側は、答弁書さえ事前に出していれば、欠席してもかまいません。被告から依頼された弁護士は、多くの場合期日が迫ってから依頼されることもあり、指定された期日には別の業務が入っていて主席できないことが多く、現実には出席しないことが多いのです。そして、答弁書は、「請求の趣旨に対する答弁(せいきゅうのしゅしにたいするとうべん)」(たいていは、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とすると書きます)だけを書いて、「請求の原因に対する認否(せいきゅうのげんいんにたいするにんぴ)」及び「被告の主張」については、追って主張すると書いた、1枚紙の、ただ1回先送りするだけのものを提出することが多く、それで足りるのです。もちろん、訴状を受け取ってすぐに依頼され、事件の内容と被告側の反論もすごく簡単なというか複雑ではないもので、被告の主張の裏付け資料も最初からそろっているというような場合は、答弁書催告状に書かれた期日までに訴状に対する反論をしっかりと書き込んで提出することができるかもしれません。しかし、ふつうはそういうことはあまりないので、焦って中途半端なものを出すよりは、答弁書は内容のない1回先送りのものを提出して、その次の期日(の1週間前くらい)に提出する準備書面で、じっくり検討し裏付け資料もそろえて反論する方がいいと、弁護士は考えるのです。
 ですから、第1回口頭弁論前に必ずやる必要があるのは、訴訟委任状と答弁書(内容は1回先送りでよい)を提出することだけですので、受任契約を急ぐ必要はないのです。

 答弁書は1回先送りのものを提出する場合でも、訴状に対する反論の準備はすぐに始めます。1回先送りで1か月程度の期間は確保できますが、のんびりしていると1か月程度の期間はすぐに過ぎてしまいます。
 受任手続後、打ち合わせを行い(受任後は「相談」ではなく「打ち合わせ」で、それは事件の費用に含まれていますので別途費用はいただきません)、事実経過の確認と裏付け資料を収集を進めます。この場合、被告側では、訴状に書かれている「請求の原因」について、一つ一つ、そのとおりの事実があったのか(あったときは「認める」と回答する)、なかったのか(なかったときは「否認する」と回答する)、あった場合は何故そうした/そうなったのかについての事情/言い分、なかった場合は実際には何があったのかなどを書く必要があり、その点について事実を説明してもらうことになります(認否には「不知(ふち)」「知らない」という認否もありますが、それは通常、自分が関係しなかった事実、いないところで起こった事実についての回答で、自分が関係している事実について「不知」などと認否すると裁判官に疑いなり悪い心証をもたれることになりかねません)。依頼者が何故そんなことを答える必要があるのかなどといって素直に答えてくれないこともあります(そういうときに、それは原告側が立証すべきことだろうとか、どこかで聞きかじってきた理屈を言ってごねる人が時々いて困ります)が、そういう態度は裁判実務上は不利に働きますし、弁護士の目からは自分の依頼者の方に非がある事件なのかなと思えます。
 請求の原因に対する認否とは別に、被告側の積極的な主張についても、事実確認と裏付け資料を確認していきます。原告の主張がそのとおりだとしても、別の点から勝てるということがあるわけで、そこはもちろん、十分に検討する必要があります。
 そういう打ち合わせで、反論の材料となる情報が概ね出尽くしたと判断したところで、資料を預かり、私の方で訴状に対する反論(答弁書を1回先送りのものにした場合は、最初の準備書面)の案の作成に入ります。
 資料、特に裁判で証拠提出する予定の資料は、原本があるものは原本を預かります。それは原本から直接コピーしたものを裁判所と原告に渡し、裁判期日で原本を裁判官と原告(代理人の弁護士)に見せるためです。預かった原本は用が済めばお返しします。録音を証拠提出する場合は、依頼者の方にまず全文の書き起こしをしていただきます。また外国語の資料があるときは、依頼者の方に日本語訳を作成していただきます。
 書面の案作成の過程で、疑問が出てくることはよくあります。それは電子メール等で質問したり、準備のリクエストをして、電子メール等で返してもらったり、必要に応じて打ち合わせをします。
 そういった作業を経て、書面案と提出予定の証拠リストができたら、依頼者の方にそれでよいか(基本的には、事実関係について、私の見落としや勘違い、間違いがないか)を確認して、最終的にGOサインが出たら、提出します。

その後の流れ

 訴訟が始まると、定期的に口頭弁論期日が指定されますが、弁護士に依頼している限り、当事者が口頭弁論期日に出席する必要はありません。もちろん、出席したいのであれば、出席する権利はありますから、出席できます。ただ、ふつうの民事裁判では口頭弁論期日は、事前に提出されている書面を確認するだけで、見ていてもあまり面白いものではなく、たいていの方は出席しても拍子抜けするだけですので、出席はおすすめしていません。期日でのやりとりの概要は、本人が出席していない場合、私は、原則として電子メールで報告しています。
 本人が出席する必要があるのは、判決をする事件ではたいてい行われる本人尋問(ほんにんじんもん)の日と、あとは和解の話が続いているときに裁判官が本人と直接話したいから連れてきてほしいと言い出したときくらいです。そういうときは、もちろん事前に打ち合わせをして経緯を説明し、当日も私と一緒に裁判所に行ってもらうことになります。

 民事裁判の前半は、双方が主張を「準備書面(じゅんびしょめん)」にまとめ、合わせて証拠書類(書証:しょしょう)を提出します。この段階を業界では「主張整理(しゅちょうせいり)」と呼んでいます。
 この段階では、原告から出てきた書面と書証等を検討してもらい、特に原告が主張してきた事実(訴状だけでなく、その後の準備書面でも新たな事実が主張され、「新たな事実」でなくてもより詳しい細かい事実が主張されることは、ごくふつうにあります)について、そういう事実があったのかなかったのか、本当はどういうことがあったのか、そういうことがあった場合は何故そうしたのか、どういう事情があったのかなどを説明していただきます(事実関係はとにかく本人に説明してもらうしかありませんから)。その上で、主張が食い違うところについて、こちらの主張を裏付ける資料がないかを、当初の相談・打ち合わせの際と同様、あれこれ試行錯誤しながら探していただきます。
 民事裁判の過程では、原告側の主張に対する反論のための準備で、被告本人にも事実の説明、証拠の発掘に相当な努力をしてもらう必要があります。弁護士としては、依頼者から受け取った情報・資料を材料に、裁判官を説得するためによりよい組立をして反論の書面を作成し、有効と思われる書証を提出します。そこでは、どうすれば裁判官を説得できるかが最大のポイントですから、本人が膨大な労力を注いで作業したものを結果としてほとんどあるいはまったく採用しないこともあります。
 打ち合わせ等で得られた情報を元に、原告の主張に対する反論の準備書面を書く際には、できる限り提出前に案を送って事実関係を確認してもらっていますが、この場合、提出期限の関係で、依頼者に確認してもらう時間的余裕があまりないこともあります。事実確認があまり問題とならない場合(主として法的な評価を主張する書面や、すでに確認済みの事実関係の範囲で応答する書面の場合)で、提出期限に余裕がない場合(ありがちなのは、相手が提出期限を守らずに遅れて出してきた書面に対して、反論の書面を迅速に、次回期日前に出して裁判官に読ませたいときなど)には、依頼者に事前に読んでもらわないままで提出することもあります。
 民事裁判の現実の勝敗は、訴状の作成提出、答弁書の作成提出、その後の準備書面の作成提出の流れで裁判官が持つ心証で決まることが多いのです(人証調べで逆転することもありますが、それは多くはないというのが現実です)。これらの書面作成と合わせて行う書証の提出がとても重要です。この段階で、事実確認と書証の探索に精力を注ぐ(弁護士だけでなく依頼者本人も)ことこそが、民事裁判で勝訴するためにとても重要なのです。

 主張整理が一段落したところで、多くの場合、裁判所から和解の話があります。主張整理の途中で和解の話があることもあります。その場合、弁護士としては、依頼者の意向(本音)を聞いて、和解の席に臨みます。依頼者がまったく和解する気がないときには、そういうふうに伝えますし、和解を希望しているときは、希望している和解内容に近づけるように対応します。その場合、大事なことは、きちんと本音を弁護士に話してもらうこと、その希望内容を後から変えない、特に後になってハードルを上げたり追加要求をするようなことは絶対に避けて欲しいということです。弁護士は、一定のゴールを意識して行動しているので、途中でそのゴールを変えられる、特により高い要求にされると作戦が狂ってしまいますし、いったん口にした案を後退させることは相手や裁判官からの最低限の信頼をも失って和解がまとまりにくくなります。

 主張整理が終わり和解にも至らないと、人証調べ(にんしょうしらべ)をすることになり、証人や当事者本人の尋問をすることになります。今どきは、人証調べの前に陳述書(ちんじゅつしょ)を作成するのがふつうです。当事者本人の陳述書は、本人に書いてもらうか弁護士がまとめるかですが、私は、本人がふつうに文章が書ける限りは、まずは本人に必ず書いてもらう項目だけ指示をして内容は好きに書いてもらい、読んでわかりにくいところやもっと詳しく書いた方がいいところ、逆に関係が薄く書かない方がいいところなどを指示して修正してもらうということが多いです。本人尋問は、その内容を打ち合わせしますが、これも、私の方で質問項目を書き出して、そう聞かれたらどう答えるかを書き込んでもらい、それを見て質問の仕方や順番を変える等を繰り返して行くというやり方をすることが多いです。
 人証調べ(尋問)が終わると改めて和解の話があることが多いです。和解が成立しなければ、最終準備書面を退出して判決という段取りになりますが、最終準備書面は、それまでにした主張が証拠によってどれだけ立証されたかをとりまとめる書面で、原則として新しい主張はできません(そのルールを守らない弁護士も時々いてイヤになりますが)ので、基本的には本人に準備してもらうことはありません。判決も基本的には、判決が出るまではすることはありませんので、人証調べ後は(和解が進まなければ)判決が出るまでは、待っていてもらうだけになります。

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