残業代請求と消滅時効

賃金請求権の消滅時効は2年

 残業代を含む賃金請求権の消滅時効は2年と定められています(労働基準法第115条:退職金請求権は、例外的に5年です)。月給制の場合、毎月支払日(の24時)に2年前の1月分が時効消滅していくことになります。具体的な例を挙げると、毎月末日締め翌月25日払の場合(日本の企業、特に大企業には毎月末日締め当月25日払という制度が多くみられますが、その場合でも残業代は翌月25日精算とされていますので、このパターンになります)、2016年10月25日(の24時)には、2014年9月分の賃金(残業代)が時効消滅することになります。

 残業代不払いが不法行為であるとして損害賠償請求をする場合、時効は3年となりますが、残業代不払いが不法行為とされた判決はまだ数えるほどです。

 余談ですが、現在は、労働基準法が2年の消滅時効を定めているのは、民法では月またはこれより短い時期によって定めた給料の時効が1年と定められている(民法第174条第1号)のを時効期間を延長して労働者を保護しているということになっています。2017年5月26日に成立した債権法改正(施行日は公布から3年以内で、まだ未定)で、(改正法施行後は)民法の短期時効はなくなり、時効は原則は債権を知った日から5年になることになりました。ところが、民法が改正されても、労働基準法の改正は予定されておらず、民法改正法施行後は本来5年の時効を労働基準法で時効期間を短縮して使用者を保護するというおかしなことになる見込みです。変な話ですが、経済界の意向を最優先する政権の下ではこういうことになってしまうということです。

まずは内容証明で請求を

 残業代請求をする期間が2年を超える場合、月給制ならば毎月1か月分が時効消滅していくことになります。それを避けるためには、まずは内容証明郵便で使用者に対して残業代請求をしておく必要があります。この場合、請求金額を特定する必要はなく、せいぜい何年何月分以降の残業代を請求すると書けば十分です。内容証明による請求書が使用者に届いた日の時点で時効消滅していない未払い賃金については時効がいったんストップし、その日から6か月以内に正式の法的な請求(訴訟、労働審判等)をすれば、内容証明が到達した時点で時効成立していない分はそのまま請求できます。この延長は1度しかできませんし、6か月以内に請求しそこなうと延長がなかったことになります。

付加金は内容証明では時効延長できない

 裁判所が判決の際に、残業代を認めた金額の範囲内で使用者に追加して支払いを命じることができる付加金の対象は、訴え提起から2年以内の未払い割増賃金です(労働基準法第114条)。内容証明により、未払い賃金の時効成立は阻止できますが、付加金の方は裁判所に訴え提起しないとだめです(労働審判申立の場合は、申立の際に付加金請求しておくと、本訴に移行した場合、本訴移行時ではなく労働審判申立時を基準に2年となります)。月末締め翌月25日払の会社で、2016年10月25日着の内容証明で残業代請求し、2016年12月28日提訴だと、未払い賃金請求の対象は2014年9月分以降ですが、付加金の対象は2014年12月分以降になります。

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