事件依頼:過払い金請求

 私が解雇・雇止め事件に次いで得意としている過払い金請求について私に依頼する場合の流れを、現実に事件を依頼する場合の具体的なイメージを持っていただけるように、相談から事件依頼までの流れ、依頼するかどうかを決める際に考慮することになる弁護士費用(これは「弁護士費用」のページで説明していますが、念のためここでも説明します)、依頼後の裁判等への対応に分けて少し詳しく説明します。

 過払い金請求事件や解雇・雇止め事件(労働事件)以外の一般民事事件については、原告側の場合と被告側の場合に分けて、別に「事件依頼:訴えるとき」「事件依頼:訴えられたとき」のページで説明します。

相談から事件依頼まで

 過払い金請求の事案では、他の種類の民事事件と比較して、事実関係の争いが生じる場面がかなり限定されており、大多数の事件では、依頼者の手元に資料がなくても、貸金業者側の資料で結果を出せることが特色になっています。
 そのことは、もし貸金業者が記録類を偽造・捏造した場合に闘うことが非常に難しいということをも意味していますが。

 過払い金請求で基本的な事実関係となる取引(いつからどういう約束で借金を始め、いついくら借りていついくら返したか)は、貸金業者が記録している取引履歴(とりひきりれき)によって立証され、今どきは取引履歴の開示を拒否する貸金業者はまずいません(そこに至るまでにはいろいろな闘いがあったことは「過払い金請求の歴史と現状」のページで説明しています)。
 事実関係が問題となる(争うことがある)場合としては、①貸金業者が取引履歴を開示しない(すでに履歴を廃棄したという)かなり古い時期の取引の内容、②いったん完済してその後相当期間取引がなくて再度借入した場合の完済の際の事情、完済時の契約書の返還、カードの失効手続の有無、取引がない期間の貸金業者との接触、再度借入した経緯、③返済が遅れ続けて貸付が停止されたり契約が書き換えられた場合のその経緯やその後の経緯、④無担保の借入から不動産担保の借入に切り替えた場合の切替の経緯、⑤貸金業者の承継があった場合の契約承継等の手続・事情などがあります。
 このような事情がない事案では、貸金業者に要求すれば開示される取引履歴だけで基本的な事実関係が明らかになりそれで過払い金請求ができますし、貸金業者との当時のやりとり等が問題となる場合も、やはり貸金業者に要求すれば(貸金業法(かしきんぎょうほう)に基づく帳簿閲覧請求(ちょうぼえつらんせいきゅう)だといえば、今どきは拒否されない)開示される「交渉記録(こうしょうきろく)」で明らかにできる場合も相当にあります。
 他方、それらでカバーできない場合、または貸金業者側の記録が怪しい場合、未開示の古い取引に関しては、古い利用明細書や銀行引き落としの記載のある古い通帳(銀行に元帳の開示請求をしても、貸金業者が取引履歴を廃棄したと主張するような時期の記録は銀行も出してこないことが多い)があるかを探してもらうことになりますし、また古い契約書や完済したときに貸金業者から渡された書類等が参考になることもあります。手元に記録資料がないときには、貸金業者の主張と異なる主張をするときには、借主自身の記憶を何か裏付けや手がかりになりそうな事情とともに探ってもらうということになります」。

 過払い金請求の事案では、まずは借主本人に、手元にある資料を持って事務所まで来ていただきます。借主がすでに貸金業者から取引履歴を取り寄せている場合は、取引履歴を見れば、貸金業者側が主張するであろう論点が概ね予想できますので、それに伴って問題になりそうなことがらについて質問をします。
 近年、過払い金請求訴訟で一番争われる、ありがちなパターンは、いったん完済してしばらく取引がない(借入残高がない)状態が続いた後に再借入しているとき、完済時の過払い金を再借入した借入金に充当できるか、つまり過払い金計算を一連計算でできるか、取引が分断されるかという点です。取引が分断されると、過払い金計算上不利な上に、完済が10年以上前だとそれまでの過払い金が時効消滅してしまい、過払い金の額が大きく違ってきます。一連計算できるかどうかに関しては、基本契約が1つ(完済時も再借入時も同じ基本契約によっている)か2つ(再借入時に完済時とは別に新たな基本契約をしている)かによって、結論が大きく変わってきます(具体的な事例について、「過払い金請求訴訟の論点」のページで説明しています)。
 借主が貸金業者から「交渉記録」も取り寄せていれば、より精度の高い見通しが立てられることにもなります。
 借主が手元に資料がない場合は、本人の記憶に基づいて事情を聞き、予想されることを検討します。
 事情に応じて、借主本人の手元に何か資料がありそうな場合は、探してもらう、記憶をたどれそうな場合は、思い出してもらうということになります。

 私は、通常の事件では、相談を受けた日に受任することはほとんどありませんが、過払い金請求の事件は、本人が依頼したいということであれば、原則としてその日に受任しています。
 それは、過払い金請求の事件は、基本的には貸金業者から開示を受けられる資料だけでも裁判対応できるのが通常であること、事実関係の争いがあることがあまりないこと、本人が失うものがない(仮に負けても過払い金が取れないだけでそれ以上の不利益がない)のがふつうであること、弁護士費用としても着手金をいただかず、報酬金は回収した過払い金の中からいただくので本人の負担がないことから、そのようにしています。(負けたら失うものがあるとき、特に不動産担保で約定残高があるような場合は、依頼するかどうかについて慎重に検討していただいています)(過払い金請求について、相談を受けた日に受任しているのは、多重債務者の事件はすぐに受任通知を出して取り立てを止める必要があり、かつて過払い金請求は多重債務者救済の過程で、過払いのものがあったらその一環として受任するということが多かったことから、習慣としてそうしているという側面もあります。今どきはだいぶ様相が違ってきたので、そこは再考してもいいのですが)

 事件の受任は、必ず本人と面談して行うようにしています(電話や電子メールだけでの依頼は受けません)。近年は弁護士会が本人確認についてすごくうるさいこともあり、過払い金請求の事案では顔写真入りの身分証明書(運転免許証、パスポート等)を持ってきていただき、コピーをとらせていただいています。
 また、事件依頼をご希望される場合は、報酬契約書と委任状を作成しますので印鑑(押しても歪まない堅いもの)をお持ちください。

弁護士費用

 過払い金請求については、弁護士費用は、次の基準でいただいています。

着手金なし、訴訟費用のうち提訴時の印紙と郵券は私の負担(ただし、報酬金が実費を下回るときは依頼者負担)
完済している案件では、報酬金は、回収した金額の20%+消費税
完済していない、約定残高がある案件では、報酬金は、減額分の10%+消費税と回収した金額の20%+消費税の合計額

 かつて、弁護士会の法律相談センターで多重債務者の債務整理を受けるときの報酬基準では、着手金として1社あたり2万円+消費税、報酬金として1社あたり2万円+消費税の固定額に、減額分の10%+消費税、過払い金回収額について20%+消費税を加算していました。
 私は、多重債務者から、最初に着手金を取るのは現実的ではないと考えましたし、報酬金でうまくいった度合いと関係なく固定額を取るのは理屈に合わないと思うのでやはり固定額部分をとらないことにして、このような基準にしたものです。
 訴訟実費を弁護士負担にしているのは、あまり例がないと思います。それは私は、訴訟提起しなくても交渉だけで過払い利息も含めて全額回収できる場合を別として、原則として過払い金請求では訴訟提起する方針ですので、訴訟提起のために実費を出してくれと言って依頼者が出せないとか言うと面倒なので(もともとは多重債務者でお金がないケースがほとんどでしたから)、最初から自分が出すことにしたのです。
 現在では、過払い金請求では着手金を取らないのは、たぶん業界のスタンダードになっていると思いますし、報酬金で減額分の10%は取らない、過払い金回収額に対してもっと低い%を提示している弁護士も出てきていますので、決して業界最安ではありません(それでも訴訟実費を弁護士が負担すると言っている弁護士は、私の目に入る範囲では見当たりませんが)。
 それでも、今でも報酬金で1業者あたり何万円かの固定額の報酬を取った上で、裁判をした場合の報酬金は回収額の20%より高くしている事務所が多数あるようです。私の経験上は、訴訟提起しないと、たいていの貸金業者については満額の回収はできません。裁判をする場合は20%を超える報酬を取るとしたら、実質的にはけっこう割高になるように思えます。私の弁護士費用の基準は、そういった事務所が相当あることからすると、現在でもまだかなり安い部類に入るのかなと思います。もともとは多重債務者救済の観点で着手金は取らず訴訟実費も私の負担としたもので、現在の過払い金請求の依頼者は、必ずしも手元にお金がないともいえない人が多くなっていますから、本当は再考の余地があると思っていますけど。
 いずれにしても、私としては、安さで勝負するつもりはありません。以前から、本来取れる過払い金について貸金業者に対して負けてやる必要はまったく感じていませんので、とれる限りきちんと取ることで、弁護士費用を差し引いても依頼者の手元により多くの過払い金が残るようにすることが弁護士のするべき仕事だと考えています。

 法テラスは、弁護士費用の「着手金」を立替払いして法テラスに分割払いするというしくみです。私は、過払い金請求については、着手金をいただいていませんので、法テラスを利用する意味がありません。ですから過払い金請求では法テラス利用はしていません。

依頼後の裁判等への対応

 過払い金請求を受任した場合、依頼者に約定残債務があるとき(完済していない場合)は、直ちに貸金業者に受任通知を送って、取り立てを停止させて取引履歴を出すように要求します。
 依頼者が完済していて、自分で取引履歴を入手していて、取引履歴を取り直す必要がない場合は、受任通知も送らずにすぐに提訴します。私は、減額して交渉で和解する考えはないので、訴訟提起しなくても過払い利息込みの全額を回収できるごくわずかな貸金業者以外に対しては交渉はしません。しても時間の無駄ですから。
 取引履歴を貸金業者に要求する事案では、取引履歴が来たところですぐに提訴します。
 依頼者には、取引履歴の内容が依頼者の話と大幅に食い違うような場合には、取引履歴が来た段階で確認しますが、そうでない場合は、提訴したところで、提訴のお知らせをします。連絡は、電子メールが使える人には、基本的には電子メールでしています。

 過払い金請求訴訟も、ふつうの民事裁判同様に、概ね1か月~1か月半くらいの間隔で期日が入って進みますが、過払い金請求訴訟での主張のやりとりは、ほとんどの場合、事実関係ではなく、法的・技術的な論争が中心となります。その内容は、一般人にはもちろん、下手をすると、弁護士の多くにさえ、十分に理解されないようなマニアックな議論です。
 ふつうの民事裁判の場合、私は、自分が出す準備書面と書証はもちろん(それは提出前に確認してもらう)、相手方が提出した準備書面と書証の写しを依頼者に送って、見てもらい、その事実関係について説明を求めます。そうしないと裁判が進められません。しかし、過払い金請求訴訟の場合は、ほとんどの場合、やりとりする内容は最高裁判例の解釈を中心とする法技術論争で、依頼者である借主が経験した事実が問題となることはあまりありませんので、依頼者に書面を見てもらっても、まず内容を理解できませんし、また依頼者に事実関係を聞く必要があることもあまりありません。ですから、過払い金請求訴訟の場合は、依頼者自身が経験している事実(例えば完済したときの経緯や様子とか)が問題となる場合以外は、裁判で主張されている内容について特に報告していません。

 貸金業者側が主張して裁判所を振り向かせる可能性がある論点がない場合、多くの貸金業者は、第1回口頭弁論期日前後か、第2回口頭弁論期日前後に担当者から電話で和解を申し入れてきて、概ね私の提示の線(依頼者から受任するときに確認していますが、私の依頼者の多くは、過払い利息込みの請求額満額の1万円未満の端数を落としたあたりの金額。ときには、1000円未満の端数しか落とさせないという依頼者もいますので、その場合その金額)で和解します。依頼者から予め聞いている線で合意できた場合は、依頼者に事前確認はせず、貸金業者と合意書のやりとりをし、裁判所には期日延期を申し入れ、依頼者には予定どおりの線で合意できたことを知らせ、予定どおりの入金があったところで訴えを取り下げるというパターンになることが多いです(裁判所が訴外での和解で取下はまかりならんといったら、和解条項をFAX等でやりとりした上で受諾和解(「民事裁判の話」の「和解」のページで説明しています)をします)。
 貸金業者側が、一応多少は争う余地があると考えるような事件(完済後ある程度期間が空いて再借入していて分断が認められる可能性がある事件や、クレジットカードで1回払い取引の場合など)では、貸金業者も私が提示するような和解(端数しか譲歩しない)は飲まずに弁護士を付けて抵抗することになります。そうなると、1年程度はかかることになります。そういうことがあるので、私は、依頼を受ける際に、1年くらいは覚悟しておいてくださいと依頼者に伝えています。なお、一部の貸金業者(アイフルなど)は、まったく論点がなくても、まともな和解案を出さずに無駄に長い定型の書面を出し続けて引き延ばしを図りますので、やはり時間はかかります。

 貸金業者側の主張で、依頼者が経験した事実が問題となる場合は、依頼者に問題となっている事実関係について質問をし、何か関連する資料がないか確認します。
 また、貸金業者から和解案が提示されたときは、依頼者にその内容を知らせて、それで和解したいか聞きます。私自身は過払い金請求については、自分の意見はもちろんありますが、依頼者が提示された和解案で和解するというのなら、もちろんそれで和解します。私のところに依頼に来る依頼者は、たいてい要求水準が高いので、あまり譲歩はされませんが。

 主張のやりとりが進み、裁判官が問題となっている論点について、貸金業者側の主張に理解を示した心証を開示した場合(その論点で負けそうな場合)は、依頼者に連絡してそのことを説明し、その論点で負けた場合の過払い金額を考慮して、減額した和解をする方向か、リスクをかけて判決を取りに行くか等の方針を協議することになります。

 ふつうの民事裁判でも、弁護士に依頼している限り裁判期日に当事者が出席する必要は、本人尋問の場合以外はありませんが、過払い金請求訴訟では、和解ができずに判決に至る場合であっても、本人尋問が行われることはほとんどありませんので、依頼者は一度も裁判所に行く必要がないのがふつうです。

 そういった感じで、過払い金請求訴訟については、ふつうの民事事件とは相当に違って、依頼者が経験した事実が現実に問題となる場合(そういう場合が少ないのが過払い金請求訴訟の特色といえます)以外は、進行はほぼ弁護士にお任せしてもらい、和解するかどうかは依頼者に決めてもらう、和解が成立しない場合でも判決に至るまですべて弁護士が対応し、本人が裁判所に行く場面はまずないというのが実情です。

「相談・依頼」の各ページへのリンク

「過払い金返還請求の話」へのリンク