事件依頼:解雇・雇止め

 私が最も得意とする解雇・雇止め事件について私に依頼する場合の流れを、現実に事件を依頼する場合の具体的なイメージを持っていただけるように、相談から事件依頼までの流れ、解決の結果をイメージして事件解決の目標を定める参考材料となる私が担当した事件の近年の結果(2015年以降全件)、依頼するかどうかを決める際に考慮することになる弁護士費用(これは「弁護士費用」のページで説明していますが、念のためここでも説明します)、解雇・雇止め事件で労働者にとって重要な係争中の生活について(これは「係争中の生活費の確保」のページで説明していますが、大事なことですので、念のためここでも説明します)、依頼後の裁判等への対応、裁判等終了後の対応に分けて少し詳しく(かなり詳しい…、いや、むちゃくちゃ詳しいかも (^^;)説明します。

 解雇・雇止め事件(労働事件)や過払い金請求事件以外の一般民事事件については、原告側の場合と被告側の場合に分けて、別に「事件依頼:訴えるとき」「事件依頼:訴えられたとき」のページで説明します。

相談から事件依頼まで

 解雇・雇止め事件の相談では、相談者と使用者の労働契約の内容(特に期間の定めのないもの、世間でいう「正社員」なのか、期間の定めがあるものなのか、担当業務の内容等)を確認し、使用者が言っている解雇理由・雇止め理由について、その事実があるのか、あるとした場合にそれが解雇に値するようなことなのかなどを検討し、解雇・雇止めが無効となるか(争った場合に労働者側が勝てるか)の見通しを立てることが、最も重要です。
 解雇事件では、使用者から解雇理由を(具体的に)記載した文書を渡されていない場合には、速やかに、労働者から使用者に対して期限を切って解雇理由証明書(退職証明書)を要求してください。そして使用者がそれでも解雇理由証明書を出さないときは、労働基準監督署に申告して指導してもらってください。雇止めの場合も、就労期間が1年を超えているか3回以上更新している場合は、使用者は、期間満了以外の理由を記載した雇止め理由証明書を交付する義務がありますから、同様に、労働者から使用者に要求してください。これらの手続は、私は弁護士ではなく労働者本人がした方がいいと考えています。弁護士から要求すると使用者も確実に弁護士に依頼しますので、回答が非常に遅くなりがちです。また、後で説明するように近時の東京での労働事件は使用者側から些細なことまで山ほどあげつらった主張がなされ、労働者側の裁判対応の労力はたいへんなものです。事実関係の確認・再現や証拠の掘り起こしは依頼者である労働者が主体的にしなければならず、弁護士だけでなく依頼者自身もかなりの労力を注ぐことになります。解雇理由証明書を請求し労基署に申告する程度のことさえ自分でやるのは面倒だというのであれば、裁判など諦めた方がいいと思います。
 解雇・雇止め事件の相談の際には、労働契約の内容に関する資料としては、労働契約書(雇用契約書)(正社員の場合は契約書が作成されていないことも多いです)や労働条件通知書、就業規則(就業規則という名前のものだけでなく、賃金規程、賞与規程、退職金規程、定年再雇用規程なども事件の内容に応じあった方がいいことがあります)、給与明細書(たくさんあるときは直近1年分程度をめど)などがあります。解雇理由に関する資料として解雇通知書、解雇理由証明書(解雇通知書に解雇理由が記載されていることもあります)、雇止め理由に関する資料として雇止め通知書、雇止め理由証明書、使用者側が主張する理由に関連する事実についての裏付けとなる資料などがあります。懲戒解雇のような場合は、もしあれば懲戒手続に関する規定類や懲戒処分の運用内規(処分基準)なども重要な資料となります。そういった資料をできるだけ持って(事件によって必要となる資料は変わってきますし、ないものはないでその前提で相談します)相談に来てもらうことになります。
 それらの資料を検討し、労働者から事実関係等について説明を受け、労働者がどのような解決を望むか(是非復職したいということか、復職を希望するが合意退職・金銭解決でもかまわないのか、その場合の解決金の水準はどれくらいか、復職はしたくないが解決金を取りたいということか、かけられる期間とコストはいかほどかなど)を聞いて、まずは解雇が無効となる(労働者勝訴)見通しなのか、解雇が有効となる(労働者敗訴)見通しなのかを判断し、労働者の希望に近づくにはどういう方向が適切なのかを協議して決めることになります。

 解雇の有効・無効については、多数の裁判例が積み上げられ、「解雇権濫用の法理」が判例法理として形成され、それが労働契約法に規定されているのですが、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」というような抽象的なもので、その判断は簡単なものではありません(それについては、「解雇の有効・無効(解雇権濫用の判断)」のページで説明しています)。
 近年は、何か特定の場合以外は解雇は有効となり得ないなどと自分勝手に(元はどこかに書かれていたのでしょうけど、たぶんその一部を切り取って都合よく解釈したものと思われます)決めつけた主張をする相談者が時々います。しかし、解雇の有効・無効の判断は決して定型的な判断ではなく、事件ごとに違うさまざまな事情を総合的に考えての判断ですので、似ている事件で別の裁判官が解雇無効の判決を書いていたとしても、だからこの事件でも同じとは限らない微妙なものです。
 特に、近年、能力不足、勤務態度不良、協調性なし等が解雇理由とされる事件では、些細なことも含めて長期間にわたるあれこれが山のように主張されがちですし、一つ一つはたいしたことがない事情が積み上がって解雇有効とされたり、たいしたことではないように思える態度を裁判官が重く見て解雇有効とされることもあり、楽観できません。解雇の有効・無効の判断は、今でも労使のせめぎ合いの中で揺らぎ続けているともいえます。そういう事情もあり、これらの能力不足、勤務態度不良、協調性なし等を理由とする解雇・雇止め事件の裁判は、近年は、使用者側との総力戦ともいうべき激しい闘いとなるのがふつうになっています。
 雇止めの場合、使用者が主張する雇止め理由が相当か(雇止めに値するような重要な問題かなど)以前に、雇用継続(契約更新)に合理的期待があるといえるかというハードルがあります。これも、更新回数だけで決まるというわけではなくて、さまざまな要素が考慮されます。

 法律相談では、その事件に関係がある資料をできる限り全部持ってきていただくことが重要です。相談者(労働者)自身が持っている事件に関係のある資料、特に解雇・雇止め理由とされた事実やそれについての相談者の言い分を裏付ける資料も持ってきていただくことが重要です。解雇・雇止め事件では、法律相談は、実質的には、解雇・雇止め理由等についての労働者の主張を検討し、それで裁判官を説得できるかどうかの見通しを判断し、さらに言えば、裁判官をどうやって説得するのがいいかを考え出す場となります。相談者(労働者)の言うことをそのままそれが全部正しいと仮定すれば、というような判断では意味がありません。相談者(労働者)の主張する事実を第三者である裁判官がどこまで認めてくれそうかということがポイントになります。書類は今日持ってきていないがこういう内容だと言われても、同じ書類を見ても素人と法律実務家の間では着目点が違うことが多々あり、相談者が言っているところはそのとおりに書かれていても、別の記載があるために全体としてはまったく法的な意味が違うということはよくあります。
 近年は、時折、解雇事件の裁判では解雇理由に当たる事実は使用者(会社)側が立証しなければならないから労働者側では具体的な事実を主張する必要がないとか、使用者側が主張した事実の認否もする必要がないとか、証拠を出す必要はないなどと言い張る人もいます。そういう態度は、裁判官から不興を買い、使用者側が主張する解雇理由に当たる事実が実際にあって具体的な反論ができないからそういう態度をとっているのだと思われかねず、裁判実務上愚策です。
 法律相談や打ち合わせの場では、当事者が一方的に説明するのではなく、弁護士側で次々と質問をしていくことになることが多いです。それは使用者側の主張と提出されている証拠、労働者の説明からして、弁護士としては聞いておきたい、気になる点だから聞いているわけで、これに素直に答えていただかないと、法律相談としてもうまくいきませんし、ましてや裁判を進めていくというのに、弁護士の質問に答えることを嫌がるようでは先が思いやられてしまいます。
 法律相談や打ち合わせで、弁護士は相談者・依頼者の主張する事実の裏付けを求めて、こういう事実はないか、こういう書類はないかと聞くことが多くあります。それは相談者・依頼者の主張を裁判官に説得するのに、よりよい材料がないかと探っているわけです。事実関係は当事者である相談者・依頼者が知っている(弁護士・裁判官は最初から知っていることはあり得ない)わけですし、証拠も多くは当事者の手元にあるか、その近くで埋もれているものです。相談者・依頼者側で、弁護士の質問等をきっかけに探してみるとか、言われたものそのものはなくてもこういうものならある(あるかも知れない)というように話を進めてもらえると、さらに資料の探索・発見が進む可能性があります。そういう相談・打ち合わせは、創造的な場になります。弁護士と相談者・依頼者が共同して前進を試みる場となるわけです。これに対して、弁護士が聞いても、考える素振りもなく探して見もしないで「そんなものありません」(そんなものがあったら苦労はしませんとか)というだけで止まってしまうと発展はありません。
 解雇・雇止め事件の当事者の労働者が、使用者が主張する解雇・雇止め理由に当たる事実が1つでも認められると敗訴すると思っていることも少なくありません。そういうときに、使用者側の主張している事実がそのとおりである場合、労働者側は具体的な事実を主張する必要がないとか使用者側の主張に認否もしなくてよいなどのどこかで聞きかじった誤った見解に固執したり、弁護士からの事実関係についての質問や裏付け資料に関する質問に対して素直に答えなかったり投げやりな答をすることがままあります。しかし、解雇権の濫用や、雇止めの相当性は、使用者側が主張する解雇理由や雇止め理由に当たる事実がある場合でも、その程度や使用者側からの注意指導等の経緯などのさまざまな事情を検討して解雇・雇止めに値するかという評価をして判断されます。事実を(一部であれ)認めることが直ちに敗訴となるわけではなく、関連するさまざまな事情によりやはり解雇・雇止めが無効となることがあります(というか、解雇・雇止め事件の多くは、そのあたりで勝敗を決しています)。その場合でも、法的な理屈だけで勝てるということはあまりなく、やはり事実とその裏付けが重要です。弁護士としては、何か勝てる道はないかと探っているのですから、依頼者側でもできる限り真剣に考えて対応してほしいものです(そうでないと、弁護士に相談する意味がありません)。

 法律相談や打ち合わせの際に、特に気をつけていただきたいのは、弁護士に決して嘘を言わない、不利な事実も隠し立てしないことです。
 弁護士は、依頼者から説明を受けた事実、見せられた資料から読み取れる事実を前提として、ふつうは、最大限依頼者に有利になるように主張を組み立てます。その前提事実が嘘だったら(嘘だと裁判官に認定されたら)、主張全体が崩れてしまいかねません。依頼者に有利な事実が本当はないとわかっていたら、依頼者に不利な事実が本当はあるとわかっていたら、弁護士はそれに応じた主張を組み立てます。不利な事実を最初から主張しないにしても後でそれが出てきたときに対応できるような主張にしておきます。依頼者に嘘の説明をされたり、(重要な)不利な事実を隠されると、そういう対応ができません。後でわかっても何とかリカバーできることもありますが、まったくお手上げになることもあります。
 また、そういう弁護士を騙そうとするような依頼者とその後どうやって信頼関係を保つのかという問題もあります。弁護士と依頼者の間には信頼関係がとても重要です。弁護士は、基本的に自分の依頼者を信じ、依頼者のために少しでも有利になるように訴訟活動を進めているのです。私も、委任契約書には、依頼者の虚偽の申告等によって信頼関係が破壊されるに至った場合は辞任することがある(あと、依頼者に連絡ができなくなったり連絡しても応答がない状態が続くときも)ことを明記しています。

 そうやって事実関係と裏付け資料を確認して、相談者の希望を考慮して、事件についての見通しと方針を説明し、弁護士費用を含めてかかる費用などについて説明した上で、相談者が納得し、依頼したいということになれば、基本的には、事件を受任することになります。
 私は、初回の相談でその場で受任するということはあまりしていません(別に説明するように、過払い金請求のような場合は、初回の相談で受任するのがふつうですが)。1つには、初回の相談では、相談者の説明や資料が十分ではなくもう一度来てもらった方がいいということが少なくないですし、もう1つには、訴訟という重要なことを依頼するわけですし、事件受任となると弁護士費用も相当程度いただくことになるので、「勢い」で進めるのではなく、一度持ち帰って冷静に検討して決めていただきたいと考えているからです。
 相談料は法テラス利用の場合でなければ有料ですから、持ち帰ると相談料の支払いが増えるとお考えの方もいます。しかし、裁判という多くの人にとってはその後の人生に相当に影響するような大事なことを依頼する、そのために相談料とは比較にならない多額の弁護士費用を払うことになるときに、わずかな相談料を払うかどうかを優先してことを決める(相談が無料であることを優先して弁護士を選ぶというのも同じことだと思います)という姿勢自体、すでに冷静さを欠いているのではないかと、私は思います。重要なことは、落ち着いて慎重に考えて決めていただきたい。私は、そう思うので、事件受任については、いったん持ち帰っていただくことを原則としているのです。

 なお、私は、相談の結果、勝てる見通しがほとんどないものについては、はっきりとそうお伝えしています。それでも弁護士費用等をかけてもやりたいということであれば、それを前提として受任することもありますが、あまりにも無理な主張の場合はお断りすることがあります。

解雇・雇止め事件の解決結果:近年私が受任した事件の結果

 私に解雇・雇止め事件を依頼する場合の解決のイメージを持ってもらうために、私が担当して2015年以降に終了した解雇・雇止め事件全件の結果を紹介します。

 判決に至った事件は、解雇・雇止めの有効・無効が判断されたものを全件紹介します。勝訴・敗訴は、解雇・雇止めが無効と判断されたものは勝訴、有効と判断されたものは敗訴と評価します。
 和解した事件は、口外禁止条項がついているものが相当数あるため、事案の内容には触れず、地位確認請求(復職請求)した事件の解決金の水準(月例給与の総支給額の何か月分かで評価。賞与は含みません)のみ一覧表で示します。残業代請求も合わせて行ったものは除外しています(解決金が残業代も合わせた金額になるので、解雇・雇止めに関する部分がいくらか区別できず、合わせた金額で評価すると水増しになってしまうからです)。なお復職を請求せず損害賠償(慰謝料等)を請求した場合は、解決金水準は地位確認請求をした事件と比べて相当低くなります。

 2015年以降の4年あまりで勝訴(解雇無効)判決を確定させたのが7人で、4人が現実に復職しました。
 地位確認請求訴訟の勝訴判決は「労働者として権利を有する地位」を確認するだけで、就労する権利を認める(復職そのものを命じる)ものではないというのが裁判所のスタンスです。したがって、勝訴判決を得ても使用者が復職を拒否すれば現実の復職はできず、ただ賃金をもらい続けることができるということにとどまる、というのが、私たち弁護士がする説明になります。私の経験では、現実にそうなったケースもありますが、勝訴判決が確定すると、裁判中は絶対に復職など認めないと言っていた使用者でも復職させることはけっこうあります(4年あまりで4人復職させたというのは、それでも少ないと思う方もいるかも知れませんが、業界的にはふつうに想定できるより復職は可能なものなんだという数字だと思います)。
 もっとも、勝訴判決を得ても、使用者が倒産・廃業してしまえば、復職もできませんし、賃金の支払を受けることもできません。それは民事訴訟制度の限界でもあります。また、勝訴判決後に、別の理由を付けて改めて解雇されると(そこまでやる悪辣な使用者は稀ですが)改めてその解雇について訴訟提起することになります。労働者の側で、勝訴判決を得ても、考えが変わり、その後に合意退職・金銭解決の和解をすることもあります。
 他方、私が担当してもすべての事件で勝訴できるわけではなく、敗訴した事件もあります。
 和解した事件のうち相当数の事件で賃金2年分前後の解決金を得ています。私は、勝ち筋(判決なら労働者が勝訴=解雇無効・雇止め無効)の事案では、少なくとも賃金1年分、基本的には2年分程度の解決金は取ってしかるべきだと考えています。もちろん和解するかどうかを最終的に決めるのは当事者(労働者本人と使用者)ですから、より少ない解決金で十分だと考えている依頼者に無理強いはしませんが。労働事件に強いなどの宣伝をしている弁護士のサイトで解決例として、賃金数か月分程度の解決金を得た事例を、有利な条件で解決したなどと紹介している例をいくつも見ますが、私には驚きです。私の経験上は、賃金1年分未満の解決金での和解は(労働審判では、解雇無効の心証でも解決金は賃金6か月分程度が原則と考えている裁判官が相当数いますので、労働審判の場合は別として)、裁判官から負け筋の心証を示されるなどしてしかたなくするもので(じっくり時間をかければ勝てそうな事件で、依頼者が早期解決を強く希望するためやむを得ずということもありますが)、決して誇らしげに語る話ではないと思っています。
 負け筋の事件でどの水準で和解できるかは、負ける可能性の程度、使用者側の経営者と弁護士の考え方によりさまざまです。判決なら勝てるのだから解決金など払う必要はないと、和解を拒否される場合やほんの形だけの解決金しか払わないと言われることもあります(私だって、勝てると踏んだらほとんど妥協しませんから、そういう態度をとること自体はしかたないと思いますが)。他方で、早期解決のため、訴訟を抱えていること(それを知られること)自体の負担などの事情で労働者が負け筋の場合でもそれなりの解決金が支払われることもあります。そうは言っても、やはり負け筋の場合はそう大きな金額の解決金は期待できないのがふつうです。

 判決での勝訴はもちろん、和解でもよい条件で和解するためには、まず早期の主張立証(基本的に書証)で裁判官に解雇・雇い止めが無効である(判決なら労働者側勝訴)という心証を持ってもらう必要があります。これには、事案の性質・内容が大きく影響しますが、それとともに弁護士の腕の見せどころでもあります。よい条件で和解するためには、その上で相手方(の弁護士)にも判決なら労働者側が勝訴することを認識してもらうこと(裁判官が労働者側勝訴の心証を持つに至った場合、ふつうは使用者側の弁護士もそれを悟りますが、そうでない弁護士も時々いるので・・・)、労働者本人の復職への意志の強さ、使用者側でその労働者を現実に復職させたくない事情と程度、経営者の性格と資金力などが関係し、労働者側の弁護士がその状況の下ではっきりとした見通しを持って、諸要素(手持ちカード)を考慮しながら交渉に臨むことが重要です。和解の条件は、それらの事情によって様々に決まり、必ずしも「相場」があるわけではありません。

判決事案

【勝訴判決確定】
○マーケティング会社従業員:能力不足・不正行為等を理由に普通解雇
 1審勝訴(東京地裁2018年9月27日判決)
 2審勝訴(東京高裁2019年3月28日判決)
 会社側が上告・上告受理申立てをしたが取り下げて確定
 勝訴判決確定に伴い復職
○社会福祉法人職員:社内での器物損壊と虚偽報告を理由に諭旨解雇処分
 1審勝訴(東京地裁2017年3月31日判決)
 2審勝訴(東京高裁2017年9月13日判決)
 上告審勝訴(最高裁2018年3月15日第一小法廷決定)上告不受理
 勝訴判決確定に伴い復職
○社会福祉法人職員:虚偽報告を理由に普通解雇
 1審勝訴(東京地裁2017年3月31日判決)
 2審勝訴(東京高裁2017年9月13日判決)
 上告審勝訴(最高裁2018年3月15日第一小法廷決定)上告不受理
 勝訴判決確定に伴い復職
○通信会社従業員:児童ポルノ提供(刑事処分は罰金)を理由に懲戒解雇
 1審勝訴(東京地裁2015年3月6日判決)
 2審勝訴(東京高裁2015年7月23日判決)→上告なく確定
 勝訴判決確定に伴い復職
○NPO法人職員:上司への暴言、勤務態度不良を理由に普通解雇
 1審勝訴(横浜地裁2016年3月24日判決)
 2審勝訴(東京高裁2016年8月8日判決)→上告なく確定
 確定後も使用者が復職を拒否し続けたため現実の復職はできなかったが、使用者から継続して毎月賃金を受領
○建設会社従業員兼取締役:取締役解任を理由に従業員資格否認
 1審勝訴(東京地裁2015年12月17日判決)→上訴権放棄で確定
 勝訴後すぐに2年前の暴力事件を理由に懲戒解雇されたため、さらに地位確認請求訴訟を提起し、その訴訟で和解
○運送会社従業員:暴言等を理由に普通解雇
 1審勝訴(千葉地裁2015年8月27日判決)→控訴なく確定
 経営者が廃業したため復職できず
【1審勝訴後控訴審で和解】
○公益団体職員:欠勤連続30日超を理由に普通解雇
 1審勝訴(東京地裁2018年9月26日判決) 
 控訴審で和解
【1審敗訴後控訴審で和解】
●社会福祉法人職員:業務態度不良・協調性不足を理由に普通解雇
 1審敗訴(東京地裁2019年3月7日判決)
 控訴審で和解
●各種学校非常勤講師:雇い止め
 1審敗訴(千葉地裁松戸支部2015年3月13日判決)
 控訴審で和解
【敗訴判決確定】
●飲食店従業員:大麻所持(刑事処分は執行猶予付き懲役刑)を理由に懲戒解雇
 1審敗訴(横浜地裁2019年1月31日判決)
 2審敗訴(東京高裁2019年7月24日判決)→上告せず確定
●公益団体職員:定年後再雇用の雇い止め(1審別の事務所の弁護士が担当して敗訴、控訴審から受任)
 2審敗訴(東京高裁2019年1月16日判決)
 上告審敗訴(最高裁2019年6月11日第三小法廷決定)上告棄却・不受理
●機械メーカー従業員:勤務態度不良等を理由に普通解雇
 1審敗訴(東京地裁立川支部2018年3月28日判決)→控訴せず確定
●通信会社従業員:手当不正受給を理由に懲戒解雇(1審・2審別の事務所の弁護士が担当して敗訴、最高裁段階で受任)
 上告審敗訴(最高裁2017年7月25日第三小法廷決定)上告棄却・不受理

和解事案:解決金額一覧表
解決金額(月分) 交  渉 労働審判 本  訴
0か月分超~3か月分まで    
3か月分超~6か月分まで    
6か月分超~9か月分まで  
9か月分超~12か月分まで  
12か月分超~18か月分まで  
18か月分超~24か月分まで  
24か月分超~30か月分まで  
30か月分超~36か月分まで    
36か月分超~42か月分まで      
42か月分超~48か月分まで      
48か月分超~54か月分まで      
54か月分超~60か月分まで    

弁護士費用

 解雇・雇止め事件の本訴については、弁護士費用は、次の基準でいただいています。

着手金:一般的な理由の解雇・雇止め事件は原則として30万円+消費税
    懲戒解雇事件、解雇理由が複雑な解雇事件、解雇の有効・無効が微妙な事件は原則として50万円+消費税
報酬金
《労働者の地位を確認する判決を得た場合、または和解による復職を得た場合》
地位確認の報酬として、月例賃金(裁判で請求したバック・ペイの月額:原則として支給総額から通勤手当と残業代を差し引いた毎月決まって支払われる額)の3か月分+消費税
それに伴いバック・ペイ等の金銭の支払を受けたときは、その報酬として、支払を受けた金額の10%+消費税
《金銭解決(合意退職和解)の場合》
支払を受けた解決金の月例賃金12か月分までは10%+消費税、それを超える部分は20%+消費税

 大半の弁護士は、着手金は請求額に対して300万円までは8%+消費税、300万円を超えて3000万円までは5%+消費税、報酬金は得られた利益に対して300万円までは16%+消費税、300万円を超えて3000万円までは10%+消費税という基準を示しています。それは、2004年に公正取引委員会から競争制限だと指摘されて廃止されたかつての弁護士会の報酬基準をそのまま使っているためです。旧弁護士報酬基準では、地位確認等の金銭評価ができない請求は800万円とみなし、それをそのまま適用すると地位確認分の着手金は49万円+消費税、報酬金は98万円+消費税となります。
 私は、着手金は、裁判手続を行う手間賃と位置づけています。近年、東京での労働事件は、使用者側が些細なことを含めた長期間のあれこれ(端的に言うと労働者の悪口)を山のようにこれでもかこれでもかと書き連ねた無駄に分厚い書面を出して来るため、ふつうの民事事件よりも手間がすごくかかるようになっていますので、本当はもっと着手金をもらわないとやってられない気分ですが、個人の依頼者から最初に着手金としていただくお金は50万円+消費税が限度かなと思いますので、その範囲でやっています。
 報酬金については、特にいい結果を得た場合には、その分高めにいただこうということでこういう基準にしています。まず地位確認の結果を得た場合ですが、これは簡単ではなく、それ自体かなりいい結果といえるでしょう。通常はその後長期間勤めて賃金を得続けられるのですから、月例賃金3か月分+消費税は高くないと考えています。地位確認の結果を得た場合には通常、解雇後判決確定までの賃金(バックペイ)も支払われますので、これについては通常金銭の支払いを受けたときと同様、その10%+消費税をいただきます。そして、現実には多くの事例で行われる合意退職・金銭解決の和解の場合ですが、私はここでも(大半の弁護士が低い金額のときに高くとるのとは逆に)いい解決の場合に高くいただくことにしています。労働事件に強いなどと紹介している弁護士事務所の解決事例でも月例賃金12か月分未満(数か月分)での金銭解決がいい条件の解決だと誇らしげに書かれているのをよく見ますが、私は、基本的には(労働審判は解雇無効事案でも6か月分が原則と考える裁判官が相当数いるのでそれは別として)解雇無効と見通せる事件では12か月分までは平凡な、むしろよくない解決だと考えています。そういう場合には、私は、通常事件同様(大半の弁護士よりは低い報酬になる)支払われた解決金額の10%+消費税いただいています。これに対して、通常よりもよい結果と考えられる月例賃金12か月分を超える解決金を得た場合には、解決金のうち12か月分を超える部分については20%+消費税をいただくことにしています。
 私自身の一般民事事件の場合と比べて考えても、地位確認の結果を得た場合の地位確認に対する報酬金と、月例賃金12か月分を超える解決金を得た金銭解決については、報酬金が高めになりますが、それはどちらも通常より(相当)いい結果を得た場合に限られ、いい結果を得られなかった場合の報酬金は通常と同じ扱いです。通常よりいい結果を得た場合には、依頼者が得る利益自体が通常よりも大きいので、報酬金を高めに払っても、依頼者の手元に残るものは大きくなります。弁護士報酬がより安くても、いい結果を出せなければ依頼者の利益にはならず、弁護士報酬がより高くてもいい結果を出した方が依頼者のためになる、私はそう考えて、少なくとも自分が得意とする分野である上に弁護士の労力・能力・経験が結果に結びつきやすいと私が考えている解雇・雇止め事件についてはこういう報酬基準をとっているのです。

 収入が少なく、資産もなく、法テラスの援助基準を満たす場合(法テラスの援助基準は配偶者がいる場合は配偶者、つまり妻、夫の収入・預金額等も合算することに注意してください)は、法テラスを利用して、法テラスの基準で弁護士費用を定め、法テラスが立替払いして、法テラスに分割払いすることができます。その場合の基準等については、「法テラス利用」のページで説明しています。法テラスの援助基準を満たさない場合、つまりそこそこ(以上に)収入や預金がある場合は、以上の基準で弁護士費用を支払っていただいています。

 民事裁判には、弁護士費用以外に裁判所に納める費用などもかかります。それについては、「民事裁判の話」の「民事裁判の費用」のページで説明しています。

係争中の生活等について

退職の手続等への対応
 まず解雇・雇止めされ、それを争う場合の退職の手続等への対応について説明します。
 使用者側が「退職届(退職願)」を書くように求めてくる場合がありますが、「諭旨解雇」の懲戒処分(退職届を提出しなければ懲戒解雇にする)がなされてそれが書面に明記されている(その書面を受け取っている)場合以外は、退職届を提出してはいけません。
 使用者から「合意書」「誓約書」等への署名を求められた場合も、正確にはその内容によりますが、多くの場合は使用者側への請求ができないようにするためのものでしょうから、拒否してください(心配ならその書類を預かって弁護士に相談してください)。
 退職金の扱いについては、労働者側から積極的に退職金の支払いを求めると、退職に同意したなどと主張してくる使用者もありますので、労働者側からは要求しない方がいいです。「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」に記名押印して返送しろと言われた場合、拒否しておいた方が安全です。それでも使用者側が一方的に退職金を送金してきた場合は、そのまま受領してかまいません。使用者側では解雇を撤回しない限りは返せとはいえませんし、退職金を返す必要が出てくるのは解雇が撤回された(労働者側が勝訴するか復職の和解をした)場合だけで、その場合はその間の賃金(バックペイ)が支払われることになって、返還額はそれを差し引いた額になりますから、退職金から月々の生活費分は使ってしまっても現実には問題はありません。
 離職票や雇用保険の手続を求めることは、解雇等を争うこととまったく矛盾はありませんので、離職票をなかなか出さない(法律上は解雇の翌日から10日以内に出す義務がある)使用者に早く離職票を出せと要求してもまったく問題はありません。離職票の「離職理由」欄に労働者側が記入する欄があります。この記入に際しては、使用者が現実とは違う離職理由を記載していないかに注意してください。解雇なのに「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合、転職希望等)」にチェックされているような場合、労働者側では「解雇(重責解雇を除く)」にチェックし、「離職者本人の判断」欄に「事業主が○を付けた離職理由に異議 有り」としておく必要があります。他方、離職票は解雇が有効か無効かには関係ありませんので、解雇の事案で、使用者が離職理由を「解雇(重責解雇を除く)」にチェックしている場合に、異議有りとする必要はありません。
 健康保険は、解雇を争う場合でも、通常は、いったん国民健康保険に切り替えて、勝訴確定するか復職の和解をしたときに解雇時に遡って資格を回復する扱いにして保険料の精算等を行います(厚生年金も同じ)。健康保険証の返還請求に抵抗する必要はありませんし、抵抗しても意味はありません(健康保険証がなくても使用者側は資格喪失手続ができます)。
 社員証や預かり品の返還についても、基本的にはいったん返却することになります。
 ただし、貸与品のノートパソコンについては、解雇理由に関連する資料や電子メール、会社の規定類等の文書など裁判上重要・有用なデータが満載ですので、返さずに済みそうなら持っていた方がいいですし、返却せざるを得ないときにはそれ以前にデータ(近時は、特に電子メールのやりとりが重要な証拠になることが多いので、電子メールは原則全部)をバックアップしておくべきです。

雇用保険(失業手当)の受給
 雇用保険は、受給資格があれば(解雇・雇止めの場合、過去1年間に通算6か月間雇用保険に加入していた=雇用されていた場合。雇用されていたにもかかわらず使用者が加入手続を行っていなかった場合、労働者側で遡って手続できる)受給できます。雇用保険の受給は解雇等を争うことと何ら矛盾はありませんから遠慮なくもらってください。
 雇用保険は、預金等がたくさんあって生活に困らない場合であっても受給できますし、解雇を争う場合でも勝訴判決が確定した場合でなければ(多額の解決金をもらっても:和解条項の作り方にもよります。それは後で説明します)返す必要はありませんので、基本的に、受給した方が得です。
 離職理由が重責解雇(実質的には懲戒解雇の場合)か自己都合退職の場合、3か月間受給できず、給付日数も減らされるなど不利益な取扱となります。
 受給できる金額は解雇・雇止め前の賃金額により、給付日数(何日分もらえるか)は勤続年数と年齢によって違います。正確にはハローワークで確認してください。
 雇用保険は、通常の受給と仮受給があり、解雇等を争う場合は、理屈としては仮受給の手続をすることになります(通常の受給をして解雇を争っても特に問題はありません)。通常の受給と仮受給で給付の内容はまったく変わりません。手続として、仮受給の場合は、後日使用者から賃金等を受け取ったら雇用保険給付を返還するという誓約書を書き、本訴の訴状や労働審判申立書等のコピーを提出し、他方、受給に際して求職活動をしなくてよいという点が違うだけです。

他社での就労(再就職)
 労働者は働いて賃金で生活しているのですから、解雇・雇止めをされれば、生活のために働く(再就職する)のは当然です。
 裁判等で勝訴しても戻るのはイヤだ(絶対戻りたくない)というのであれば、そもそも何のために地位確認(解雇無効)の裁判等をやっているのだということになりますが、勝訴したら戻るつもりだ(戻ってもよい)と労働者が考えているのである限り、生活のために他社で働いていても(再就職しても)、解雇等を争うこと、そのために地位確認請求等の裁判を行い継続することは何ら矛盾しません。そして、さらには、勝訴判決は、労働者としての権利を有する地位にあることの確認を意味するものですから、勝訴判決を得た場合に現実に復職するかどうかはその時点で労働者が決めればいいことです(勝訴判決後に使用者が復職・就労を求めて来たときに、それを拒否したら、それ以後の賃金が発生しないというだけです)。
 解雇等を争う裁判中に労働者が再就職した場合に、勝訴したときの、解雇から判決確定までの賃金(バックペイ)の金額については、解雇された会社での賃金の6割を超える部分については、再就職で得た賃金分を差し引く(例えば解雇された会社で月30万円の賃金を得ていた労働者は、18万円を超える部分は差し引かれるので、再就職して月20万円の賃金を得ていたら、再就職以後の月のバックペイは18万円となる。再就職後の賃金が月7万円なら再就職以後の月のバックペイは23万円となる)というのが最高裁の考えです。正社員として再就職した場合、それを超えて、バックペイはまったくなくなるという主張をしている有力な学者がいて裁判官にその信奉者が多いためにそのような判決が出ることもありますが、今のところごく少数派です。
 このように再就職をしても、それで解雇を争う裁判に重大な影響が出ることはあまりないですし、現実問題として労働者は生活のために働く必要がありますので、私は、再就職できる方はどんどんしてもらってかまわないと考えています。アルバイトの類いでなくても雇用形態が正社員でも、私は全然問題ないと考えています。経験上、最終的に合意退職・金銭解決の和解をするときの和解条件に、再就職やその雇用形態、賃金額が影響することは、ほとんどありません。

賃金仮払い仮処分
 裁判の結論が出るまでに1年前後かかります(解雇理由がシンプルなもので使用者側が引き延ばしをしない件で和解する場合もっと早いこともありますが、近年は使用者側は大半の事件でしつような引き延ばしを図っています。人証調べをして判決までとなると2年かかることもあります)。その間、預金等の蓄え(会社が一方的に支払ってきた退職金を含む)、家族の収入、雇用保険等によって生活できる場合や、再就職ができる(その見込みがある)場合はいいですが、それができない場合は、賃金仮払い仮処分(ちんぎんかりばらいかりしょぶん)の申立てという方法もあります。
 賃金仮払い仮処分は、解雇・雇止めに理由がない(無効である)こと(仮処分ではこの申立側に権利があるという主張を「被保全権利(ひほぜんけんり)」と呼んでいます)及び仮払いを受けないと労働者が生活できないこと(仮処分ではこれを「保全の必要性(ほぜんのひつようせい)」と呼んでいます)を証拠書類によって一応の証明をし、使用者側からの反論、反証を見て、裁判官が被保全権利、保全の必要性ともに一応認められると判断すると、使用者に対して、労働者に必要な生活費の範囲で、概ね以後1年間の支払を命じます。審理は、法廷ではなく書記官室脇の小部屋で、労働者側、使用者側双方を呼ぶ「審尋(しんじん)」という手続で行われ、東京地裁では概ね3か月で決定されます。
 賃金仮払い仮処分では、保全の必要性に関して労働者の資産がないことや必要生活費を示すために預金通帳やクレジットカードの明細や借金に関する資料等も裁判官だけでなく使用者側にも出すこと、近年の東京地裁の運用では保全の必要性がかなり厳しく審査されることから、労働者側には使い勝手が悪くなっています。
 かつては、保全の必要性に関してそれほどうるさくなかったので、まずは仮処分を申し立てて先に解雇の無効の心証を得て和解するとか、本訴も有利に展開するというための手段としていたこともありましたが、現在ではそういう使い方は無理で、生活費が本当に切羽詰まった場合にしかたなく申し立てる手続になってきています。

依頼後の裁判等への対応

 弁護士が事件の依頼を受ける際には、まず委任契約書(報酬契約書)を作成します。この契約書で、依頼を受けた事件の範囲を特定し、弁護士費用を定めます。その際、近年は、弁護士会が本人確認についてとてもうるさいので、可能な限り写真付きの身分証明書(運転免許証、パスポート等)を持ってきてください。契約書作成のため、印鑑も必要です(同時に訴訟委任状もいただくことになりますので、印鑑は堅いもの、押しても歪まないものをお持ちください)。
 多くの場合、訴訟委任状もその時にいただきます。
 着手金は、予め用意していただいて、その場でお支払いいただくことが多いですが、後日振込でもかまいません(その場合、支払日は報酬契約書で定めます)。
 裁判所に納める費用等の実費については、概算で(多くの場合、請求予定額に対応する印紙代と、予納郵券額と、予想される交通費、記録の謄写費用を考えて決めます)お預かりし、裁判が終わったところで精算します。実費は、予め用意していただいて受任契約のときにお預かりするか、訴訟提起までに別途お持ちいただくことになります。

 受任手続後、打ち合わせを行い(受任後は「相談」ではなく「打ち合わせ」で、それは事件の費用に含まれていますので別途費用はいただきません)、事実経過の確認と裏付け資料を収集を進め、めどが立ったところで、資料を預かり、私の方で訴状(そじょう)案の作成に入ります。
 資料、特に裁判で証拠提出する予定の資料は、原本があるものは原本を預かります。それは原本から直接コピーしたものを裁判所と被告に渡し、裁判期日で原本を裁判官と被告(代理人の弁護士)に見せるためです。預かった原本は用が済めばお返しします。録音を証拠提出する場合は、依頼者の方にまず全文の書き起こしをしていただきます。また外国語の資料があるときは、依頼者の方に日本語訳を作成していただきます。
 訴状案作成の過程で、疑問が出てくることはよくあります。それは電子メール等で質問したり、準備のリクエストをして、電子メール等で返してもらったり、必要に応じて打ち合わせをします。
 そういった作業を経て、訴状案と提出予定の証拠リストができたら、依頼者の方にそれでよいか(基本的には、事実関係について、私の見落としや勘違い、間違いがないか)を確認して、最終的にGOサインが出たら、提訴します。
 事実関係の確認や証拠の準備、依頼者にお願いした作業の進捗状況によりますが、私の場合、依頼から概ね2週間~1か月程度で訴訟提起に至るのがふつうです。解雇予告(原則として30日前)をされてすぐに相談に来られて受任した場合は、解雇基準日の翌日提訴を目標に作業します。

 訴訟が始まると、定期的に口頭弁論期日(こうとうべんろんきじつ)が指定されます。労働事件の場合、1か月から1か月半くらいの間隔のことが多いです。東京地裁労働部の運用では、第1回口頭弁論期日は法廷で開きますが、第2回以降は、法廷ではなく書記官室脇の小部屋で「弁論準備期日(べんろんじゅんびきじつ)」として行うのが通例になっています。これらの期日は、弁護士に依頼している限り、当事者が出席する必要はありません。もちろん、出席したいのであれば、出席する権利はありますから、出席できます。ただ、ふつうの民事裁判では口頭弁論期日は、事前に提出されている書面を確認するだけで、見ていてもあまり面白いものではなく、たいていの方は出席しても拍子抜けするだけですし、弁論準備期日だと、当事者がいると、場合によってはいきなり質問されて不用意なことを口走ってしまうリスクもあり、私は出席はおすすめしていません。期日でのやりとりの概要は、本人が出席していない場合、私は、原則として電子メールで報告しています。
 本人が出席する必要があるのは、判決をする事件ではたいてい行われる本人尋問(ほんにんじんもん)の日と、あとは和解の話が続いているときに裁判官が本人と直接話したいから連れてきてほしいと言い出したときくらいです。そういうときは、もちろん事前に打ち合わせをして経緯を説明し、当日も私と一緒に裁判所に行ってもらうことになります。

 解雇事件では、まずは使用者側で解雇理由の主張、つまり解雇の理由となる事実とその解雇理由(就業規則に定めている解雇理由など)への当てはめをひととおり出し尽くしてもらい、それに対して労働者側が認否反論するという手順を踏みます。使用者側が、その解雇理由の具体的な主張を第1回口頭弁論期日で行うケースは少なく、多くの場合は第2回の期日にようやく解雇理由の主張がなされるというのが実情です。使用者側が悪くするとそれを第3回以降にまで引きずろうとすることもあります。意図的に引き延ばしを図っているケースもありますが、使用者側の弁護士が労働事件に不慣れでわからずにやっていることもあります(使用者側は、顧問弁護士が出てくることも多く、大きな企業でなければ顧問弁護士が複数いることはあまりなく、その場合労働事件の経験を基準に顧問弁護士が選任されていることは稀)。
 使用者側から解雇理由となる具体的事実の主張がなされたら、労働者側ではこれに対する認否反論をすることになります。使用者側が主張する事実について、一つ一つ、そのとおりの事実があったのか(あったときは「認める」と回答する)、なかったのか(なかったときは「否認する」と回答する)、あった場合は何故そうした/そうなったのかについての事情/言い分、なかった場合は実際には何があったのかなどを書く必要があり、その点について事実を説明してもらうことになります(認否には「不知(ふち)」「知らない」という認否もありますが、それは通常、自分が関係しなかった事実、いないところで起こった事実についての回答で、自分が関係している事実について「不知」などと認否すると裁判官に疑いなり悪い心証をもたれることになりかねません)。依頼者が何故そんなことを答える必要があるのかなどといって素直に答えてくれないこともあります(そういうときに、解雇理由は使用者側が立証すべきことだろうとか、どこかで聞きかじってきた理屈を言ってごねる人が時々いて困ります)が、そういう態度は裁判実務上は不利に働きますし、弁護士の目からは自分の依頼者の方に非がある事件なのかなと思えます。
 解雇理由とされた事実に対する認否とは別に、労働者側の積極的な主張についても、事実確認と裏付け資料を確認していきます。使用者側が主張する解雇理由があるとしても、別の点から勝てるということがあるわけで、そこはもちろん、十分に検討する必要があります。
 解雇・雇止め事件の裁判の過程では、この使用者側の主張に対する反論のための準備で、労働者本人にも事実の説明、証拠の発掘に相当な努力をしてもらう必要があります。弁護士としては、依頼者である労働者から受け取った情報・資料を材料に、裁判官を説得するためによりよい組立をして反論の書面を作成し、有効と思われる書証を提出します。そこでは、どうすれば裁判官を説得できるかが最大のポイントですから、本人が膨大な労力を注いで作業したものを結果としてほとんどあるいはまったく採用しないこともあります。
 労働者側では、早期のよい解決のためには、この使用者側の解雇理由の主張に対する反論が、とても重要です。この反論(及びそれと同時に提出する書証)で裁判官に解雇無効の心証を抱かせることが勝利への第1歩です。逆に、労働者側の反論を読んでも、裁判官が使用者の主張の方が説得力があり解雇は有効だろうという心証だったら、労働者側の勝訴はかなり難しくなります。ですから、使用者側が出してくる解雇理由の主張に対する反論、それに対して使用者側が反論してきた場合(反論してくることが多い)それに対する再反論、これに精力を注ぎ、丁寧に使用者側の主張を潰していく必要があります。この段階で、裁判官に労働者側の主張がもっともだ、解雇は無効と考えざるを得ないという心証を持たせてしまえば、和解交渉も有利に進められ、和解が決裂しても有利な判決が期待できるのです。

 解雇理由等に関する主張のやりとりが一段落したところで、多くの場合、裁判所から和解の話があります。主張のやりとりの途中で和解の話があることもあります。その場合、弁護士としては、依頼者の意向(本音)を聞いて、和解の席に臨みます。依頼者がまったく和解する気がない(判決を希望する)ときや復職以外は希望しない(和解でもよいが金銭解決は受け入れない)ときには、そういうふうに伝えますし、合意退職・金銭解決でもよいと考えているときや金銭解決を希望しているときは、希望している和解内容に近づけるように対応します。その場合、大事なことは、きちんと本音を弁護士に話してもらうこと、その希望内容を後から変えない、特に後になってハードルを上げたり追加要求をするようなことは絶対に避けて欲しいということです。弁護士は、一定のゴールを意識して行動しているので、途中でそのゴールを変えられる、特により高い要求にされると作戦が狂ってしまいますし、いったん口にした案を後退させることは相手や裁判官からの最低限の信頼をも失って和解がまとまりにくくなります。
 主張のやりとりが終わり和解にも至らないと、人証調べ(にんしょうしらべ)をすることになり、証人や当事者本人の尋問をすることになります。今どきは、人証調べの前に陳述書(ちんじゅつしょ)を作成するのがふつうです。当事者本人の陳述書は、本人に書いてもらうか弁護士がまとめるかですが、私は、本人がふつうに文章が書ける限りは、まずは本人に必ず書いてもらう項目だけ指示をして内容は好きに書いてもらい、読んでわかりにくいところやもっと詳しく書いた方がいいところ、逆に関係が薄く書かない方がいいところなどを指示して修正してもらうということが多いです。本人尋問は、その内容を打ち合わせしますが、これも、私の方で質問項目を書き出して、そう聞かれたらどう答えるかを書き込んでもらい、それを見て質問の仕方や順番を変える等を繰り返して行くというやり方をすることが多いです。
 人証調べ(尋問)が終わると改めて和解の話があることが多いです。和解が成立しなければ、最終準備書面を退出して判決という段取りになりますが、最終準備書面は、それまでにした主張が証拠によってどれだけ立証されたかをとりまとめる書面で、原則として新しい主張はできません(そのルールを守らない弁護士も時々いてイヤになりますが)ので、基本的には本人に準備してもらうことはありません。判決も基本的には、判決が出るまではすることはありませんので、人証調べ後は(和解が進まなければ)判決が出るまでは、待っていてもらうだけになります。

裁判等終了後の対応

合意退職・金銭解決の場合
 復職を希望して地位確認請求の裁判を起こした場合でも、その後事情変更があり、裁判を続けるうちに復職の意欲が薄れたとか、とりわけ使用者側の裁判対応(労働者に対する悪口雑言、虚偽主張その他悪質な対応)や使用者側の姿勢に嫌気がさしてこんな会社に復職したくないという思いが強まることは、現実にはよくあります。もともと復職をそれほど強く希望していたわけではない(だけど解雇は許せないのではっきりさせたい)労働者もいます。
 そういった事情から、現実には、合意退職・金銭解決の和解をすることが多くあります。
 その場合、和解条項(和解の内容)としては、使用者が解雇の意思表示を撤回し、使用者と労働者は労働者が(解雇の日に遡って)合意退職したことを確認するとした上で、解決金を支払う、労働者(裁判の原告)はその余の請求を放棄、使用者と労働者は和解条項に定めるほかには何らの債権債務がないことを相互に確認する(精算条項:せいさんじょうこう)、訴訟費用は各自の負担とするというのが一般的です。使用者側からの要請で口外禁止条項(こうがいきんしじょうこう)が入ることもあります(使用者側は口外禁止条項を求めてくることが多いです)。
 労働者側が、不当解雇について謝罪するという条項を求めることもありますが、現実的には、使用者側が謝罪条項を飲むことは稀です。
 合意退職和解をするときに、合意退職の日は、解雇日にするのが通例です。労働者側では実質勝訴を明確にするために和解日付けでの合意退職を希望することもあります。しかし、和解日付け(和解日でなくても解雇日より後の日であれば同じ)にすると、理屈としてはいったん復職したことになり、雇用保険との関係ではその間受給資格がなかった(失業していないから)ということになり、また受け取った解決金は「賃金」だということになり、いずれの点からも受給した雇用保険を返せということになります。税金の点でも受け取った解決金が賃金扱いになると、税額が高くなります。これに対し、解雇日付けの合意退職とすると、雇用保険上は解雇であれ合意退職であれ離職した日に違いがなく(うるさく言えば離職理由が自己都合退職となると雇用保険給付に影響する可能性がありますが、解雇され係争した上での合意退職ですから実質的には退職勧奨による退職にはなるはずで、そうであれば雇用保険の扱い上問題はありません)、雇用保険を返す必要はありません。課税上も、退職条項とともに定められた解決金は、退職所得扱いされるのが課税実務(損害賠償ならば非課税ですが、その主張が通るかどうかはチャレンジで、それは専門家の税理士等と相談して対応してください)ですので、勤続年数×40万円(勤続20年を超えると20年を超えた年数は1年あたり70万円)を差し引いた上に2で割った額を基準として所得税、復興特別所得税、住民税が課税されることになり、税務上優遇されます。そういった事情から、名よりも実を取って解雇日付け合意退職とするケースがほとんどです。

1審判決後
 1審判決で労働者側が勝訴した場合、大部分の使用者は控訴します(負けても控訴しない使用者であれば、1審で和解するのがふつうです)。
 勝訴判決の場合、通常は賃金(バックペイ)の支払を命じる部分には「仮執行宣言(かりしっこうせんげん)」がつきますので、大手の会社であれば、控訴期間(2週間)を待たずに控訴して執行停止決定(しっこうていしけってい)をとり、この執行停止決定が労働者本人の自宅に送られてきます。控訴時の執行停止決定は、判決で支払を命じられた額の8割程度の担保を積めば自動的に出される運用ですので、執行停止決定が出たから逆転の可能性があるというわけではありません。
 控訴された側では、控訴した側が控訴理由書を提出してきたらそれを検討して反論の答弁書を提出することになります。控訴後の手続については「民事裁判の話」の「控訴(民事裁判)」で詳しく説明しています。
 控訴審での弁護士費用については、依頼者と協議してということになりますが、私の場合、通常は1審の着手金の半額をめどとして控訴審の着手金をいただくことが多いです。
 控訴審は、控訴人側の控訴理由書の内容、合わせて提出される書証にもよりますが、口頭弁論1回で結審し、1審判決から6か月程度で終了することが多いです。控訴審で結審後に和解期日が設けられて和解の話をすることも多いです。和解では、当然、1審で負けた側が譲歩を迫られることが多くなります。

 1審敗訴した場合は、1審判決を分析検討して、控訴するかどうかを決め、控訴する場合には、控訴理由書の作成と裏付け証拠の探索・発掘に努力することになります。

勝訴判決確定の場合
 勝訴判決が確定した場合、復職の実現と判決で支払を命じられたバックペイの支払をどうするかの問題があります。
 労働者本人が現実に復職したい場合、本人の意向を確認し、いつからの復職を希望するかなどを打ち合わせて、使用者側に就労請求をすることになります。判決は解雇無効を意味していますから、こちらの請求は原則として解雇前の部署と地位で解雇前の賃金での復職ということになります。労働者が異なる条件を希望する場合には使用者側との協議になりますが、人事権は使用者側にありますので、労働者側が希望する条件(解雇前よりいい条件等)が通る可能性はほとんどない(労働者側でよりよい労働条件を要求する権利や、希望する部署への異動を要求する権利はない)と覚悟すべきです。
 バックペイの支払については、理屈の上では判決で命じられた金額(通常は総支給額ベースで遅延損害金も含め)の支払を求めることができます(使用者側は源泉徴収義務があるので税金分は控除することができます)。しかし、現実に復職するとなると(あるいは現実に就労は使用者が拒否する場合でも)社会保険、つまり健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険等について解雇等の日に遡って資格喪失がなかったことにする手続をすることになり、その場合、使用者が所得税の源泉徴収分の他に、健康保険、厚生年金、雇用保険の労働者負担分も立て替えることになり、これは最終的に労働者が使用者に支払うことになります。復職後の賃金から少しずつ差し引いてもらうという扱いも可能ですが、私は、判決の金額は置いておいて、解雇時に遡って解雇されなかった場合とまったく同じ扱いにしたときの金額、判決では命じていない賞与(賞与は勝つこともありますが支給基準が機械的な場合以外は裁判所が認めないことが多い)や昇給も含めて、そちらにあわせましょうと提案することが多く、使用者側がそれに乗ってくることもあります(提訴段階で何を請求するかでそういうことにすごく細かい依頼者がいますが、給与・賞与の規程がかなり機械的に賞与や昇給を定めていないと負けやすいですし、現実には本当に復職したらそこで解決される可能性がそれなりにありますし、金銭解決ならそんなものは影響しませんので、提訴段階でそこまであれこれ言うのはたいてい無意味です)。

 勝訴判決が確定して、労働者が復職を求めたが、使用者が拒否した場合は、労働者はその後も労働者としての権利を有する地位にあり、就労できないのは使用者が拒否しているためですから、賃金は毎月発生し、労働者は賃金を受け取ることができます。健康保険や厚生年金、雇用保険、労災保険等の社会保険の資格も回復させることができます。理論上は、定年に達するまで、その状態が続くことになります。もっとも、その賃金が十分で他で働かなくても十分生活できるのならいいですが、それだけでは生活できない場合、再就職時に新たな就業先にうまく説明できるか、理解を得られるかの問題が生じます。
 勝訴判決が確定したが、労働者が、やはり復職したくないという場合はどうなるでしょうか。その場合は、判決確定までの賃金(バックペイ)はもちろん、支払を受けることができますが、使用者側が就労を求めてきて労働者がそれを拒否すると、労働者が労務提供を拒否していることになって、それ以後の賃金が発生しなくなります。そして就労拒否が続けばそれが解雇理由になりますから、いずれは使用者側から欠勤を理由に解雇され、それは争っても難しいということになるでしょう。ただ逆に言えば、労働者が勝訴判決が確定したが、気が変わって復職はしたくなくなったという場合でも、判決確定後の賃金が発生しないというだけのことで、それ以上の不利益はありません。

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