若者をターゲットにした割賦販売(かっぷはんばい:分割払い)で売り出し、それにキャッシングを付けて貸金業者としても成長した「丸井 ○|○|」と丸井のグループ企業の貸金業者「ゼロファースト」の過払い金は、別会社の「エポスカード」に承継されていますので、過払い金請求は(取引履歴開示請求も)、エポスカードに対して行います。
取引履歴の開示
エポスカード(丸井)は、1997年4月からは全部開示、それ以前は一部開示です。丸井は、2000年にリボ払いを導入するまでは、1回の貸付ごとに借主が返済の分割払いの回数を指定し、毎月の支払は各貸付に対するその月の返済額を積み上げた金額となるという運用をしていました。そのため、1997年4月1日時点でその分割が残っていた貸付に対応するデータ(貸付・返済)はともに残っており、その時点で返済が終了していた貸付に対応するデータ(貸付・返済)はともに廃棄されているというのです。またそのために(データが常に個別の貸付ごとに貸付と返済のセットで残っているため)開示は必ず貸付に始まり、その貸付に対応する返済のみが開示される形です(ですから、冒頭残高ゼロで、未開示部分を補うことはできません)。
例えば1995年10月に20回分割で10万円、1995年11月に15回分割で8万円、1996年3月に10回分割で6万円、1996年6月に10回分割で5万円、1996年8月に6回分割で4万円、1996年10月に10回分割で7万円を借りたとします。エポスカード(丸井)の説明に従って考えると、1995年11月の8万円と1996年3月の6万円と1996年8月の4万円は1997年3月以前に完済となって貸付・返済の記録が残らず、1995年10月の10万円と1996年6月の5万円と1996年10月の7万円は1997年4月時点で返済が終わっていないので貸付・返済記録が残るということになります。
エポスカードに取引履歴の開示請求をすると、1997年4月以前から取引がある場合、1997年3月以前のある時期からの利息制限法引き直し計算書の形で回答されますが、1997年3月以前の部分はこの貸付記録の残る貸付とそれに対応する返済部分だけが記載されます。上の例で考えると、開示される利息制限法引き直し計算書が1995年10月の貸付から始まるので1995年10月以降の取引履歴が全部開示されているものと錯覚しかねませんが、1997年4月以前の取引は記載されている場合でも貸付・返済ともに実際の取引の一部だけの金額になっている(抜けがある不完全なものである)ことに注意する必要があります。
交渉・裁判対応
エポスカードに利息制限法引き直し計算書を送ると、6か月後に支払うと言ってきます。私の経験上、その支払の前倒しにはかなり抵抗しますが、他方、それなら支払日までの過払い利息を付けてくれというと、その満額で飲みます。
1997年3月以前から取引がある場合、借主がそれ以前の預金通帳を保管していれば、それに応じた推計をしてきます。ニコスなどのようにそれがショッピングかキャッシングかわからないなどという悪辣な主張はしません。そこは潔い感じがしますし、出してくる推計も悪くないと思います。そういう形で、借主が預金通帳を持っている場合は(借主が持っていない場合に銀行に調査嘱託をかけたことがありますが、ほとんどはそんな古い時期のデータは保管していないと回答されました。本当かどうかは疑問に思ていますが)、推計で和解できますし、私の経験では、銀行の通帳のコピーを送ると、裁判前でも同じ対応をしてくれます。
かつて、丸井の取引履歴未開示に対して、取引履歴が実はあるのに開示していないだろうということで、不法行為の慰謝料請求を付けて訴訟提起し、何度か争いました。しかし、取引履歴開示が一部不正確だったとかの修正を勝ち取ったことはありますが、取引履歴開示拒否に関しては取引履歴を廃棄していない(今も隠し持っている)という証拠はないということで、残念ながら全敗でした。そういうことと、裁判を起こさなくても過払い金自体は過払い利息を付けた全額を払ってくれるのとで、近年は、私はエポスカードに対しては裁判を起こしていません。
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